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第11回対人地雷禁止条約締約国会議に参加しました

2012年02月06日  カンボジア地雷対策
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2011年11月28日から12月2日までの5日間、カンボジアの首都プノンペンで、「第11回対人地雷禁止条約締約国会議 Push for Progress―その一歩先へ―」が開催されました。難民を助ける会からは事務局次長の大西清人、ラオス駐在員の山下祐美子、東京事務局の山田かおりの3名がオブザーバーとして参加するとともに、ブースで当会の地雷対策活動を紹介しました。山田かおりの報告です。

新たな条約加盟国の誕生に拍手が

第11回対人地雷禁止条約締約国会議 会議場の様子

会議が開かれたプノンペンの国際会議場。本会議では各国の地雷対策の取り組み状況が報告されました。(2011年12月1日)

年に一度開催されるこの締約国会議では、対人地雷禁止条約に参加している国々が集まり、各国の条約の履行状況を報告し、課題について協議しています。今年は約100ヵ国の政府関係者に加え、オブザーバーとして国際NGOや市民団体、地雷被害者らが集いました。報告の中では、ツバルと南スーダン共和国が新たに条約に加入したことや、フィンランドの国会で条約加入が採択されたという報告に歓声が上がりました(フィンランドは2012年1月9日に正式に加入)。これで締約国は158ヵ国、世界の8割に達しました。また、世界の87ヵ国で対人地雷の廃棄が完了しました。2010年の1年間で約40万個の対人地雷や対戦車地雷が取り除かれ、少なくとも200平方キロメートルの土地が安全になるなど、着実な成果が上がっています。

一方で、地雷除去に比べると被害者支援はまだまだ遅れているなど残念な報告もありました。また、条約に加入すると、10年以内に自国内の対人地雷の廃棄を終了させるという義務がありますが、この期限を守れない国が出てきており、今年も5ヵ国が期限延長を申請しました。アメリカや中国、ロシアなどの大国が依然として未加入という現実もあります。喜ばしい成果がある反面、地雷のない世界、地雷被害者が希望を持てる社会の実現には、まだまだ非常に高いハードルがあることを感じました。

日々進化する地雷除去

会議開始前日には別会場で見学会が開催され、私はプノンペン近郊での地雷除去のデモンストレーションを見学しました。カンボジア政府の地雷対策機関であるCMAC(カンボジア地雷対策センター)や日本のNGOなど5つの団体が、それぞれの技術を披露しました。除去機器も日進月歩を続けていますが、今でも除去の要は「人」です。炎天下で長時間、何の日除けもない場所で重いプロテクターを身にまとい、規律正しく緻密で危険な除去作業を行う除去員の姿が、何よりも印象的でした。

カンボジアにはまだまだ多くの地雷が残されていますが、難民を助ける会がカンボジアで支援活動を始めた20年前に比べると大きく除去が進み、首都プノンペンは驚くほど発展しました。ビルが立ち並び、観光客も多く訪れています。会議に参加した被害国の方々も、発展するプノンペンの姿に勇気がわいたのではないでしょうか。

地雷除去のデモンストレーションを見学しました

世界各地で活動する地雷除去団体「ヘイロー・トラスト」によるデモンストレーション(2011年11月27日)

近代的な都市に発展しつつあるカンボジアの首都、プノンペン

首都プノンペンの街並み。除去が進み、現在はビルが立ち並ぶ近代的な都市に発展しつつあります。(2011年11月28日)

関心を持ち続けることの大切さ

ブースに立ち寄る会議参加者にと事務局次長の大西清人(右)

難民を助ける会のブース。絵本『地雷ではなく花をください』を手に取り、「素晴らしい絵本ね。ぜひ購入したい」という声も聞かれました。右は事務局次長の大西清人(2011年11月28日)

会議開催中は様々な団体がブース出展や活動発表をしていました。当会のブースにも多くの参加者が立ち寄り、啓発冊子や絵本などを熱心にご覧になり、活動についてご質問くださいました。多くの方たちと経験を共有できたこと、ネットワークが広がったことも、成果のひとつです。会議に参加して、いかに多くの人たちが、粘り強く地道な努力を続けて今日の成果があるのかを、あらためて実感しました。それを支えているのは、「地雷をなくそう」という強い意志と市民の継続した関心です。被害が減ってくればどうしても関心が薄くなってしまいますが、それではせっかくここまで進んだ地雷対策が後退し、地雷被害者も苦境の中に置き去りになってしまいます。会議のタイトルにあるように対策が進んできた今こそ、さらに「その一歩先へ」と、歩みを進めていかなくてはならないと感じました。

これからも、難民を助ける会は、被害国の支援とともに、日本国内での啓発活動にも力を入れてまいります。

現在の難民を助ける会の取り組み

難民を助ける会は、地雷や不発弾の危険から身を守る教育活動や被害者の自立支援を、世界各地で続けています。現在の活動内容や地雷対策活動の歴史については以下のページをご覧ください。

対人地雷禁止条約とは?
正式名称は「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」。
対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲等を全面的に禁止し、貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去等を義務付けるとともに、地雷除去、犠牲者支援についての国際協力・援助等を規定しています。条約締結の交渉が1996年10月にカナダのオタワで始まり、1997年12月に署名式がオタワで行われたことから、通称「オタワ条約」とも呼ばれています。1990年初頭、人道援助活動に携わるNGOの間で対人地雷の非人道性が議論されるようになり、国際的なNGOの連合体であるICBL(地雷禁止国際キャンペーン)がスタート。ICBLとカナダを中心とする賛同国が協働し、世論に働きかけ条約が成立しました。国家間交渉に任せられていた軍事に関わる条約の策定に、NGOが関与するようになったことにも大きな意義があり、この条約成立までのユニークな経緯は「オタワプロセス」と呼ばれています。難民を助ける会もICBLのメンバーとして地雷廃絶を世論に訴えるさまざまなキャンペーンを実施し、1997年、ICBLの一員としてノーベル平和賞を共同受賞しました。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 山田かおり

2007年11月より東京事務局で広報・支援者担当。国内のNGOに約8年勤務後、難民を助ける会へ。(静岡県出身)

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