パキスタン:アフガニスタン難民・国内避難民を対象に教育支援を進めています
パキスタンでは現在、戦闘地域から逃れてきた国内避難民約60万人と、アフガニスタン難民約170万人が生活しています。多くは北西部の難民キャンプやその周辺地域で、インフラも整わない中、困難な生活を余儀なくされています。AAR Japan[難民を助ける会]は、2011年から、パキスタン北西部のハイバル・パフトゥンハー州ノウシェラ郡で、戦闘地域から逃れてきた国内避難民とアフガニスタン難民、その受け入れ地域の住民を対象に、生活環境の改善支援を行っています。
子どもたちがのびのびと学べる環境を
ノウシェラ郡では、多くの学校で児童数に対する教室不足が深刻な状況にあります。当会が行った調査では、定員40名から50名の教室で、80名の子どもたちが授業を受けていたり、児童数241名に対して教室が2つしかないという学校もありました。そのため、冬でも机やいすもない屋外で、地面に座って授業を受けなければならない子どももいます。また、トイレや手洗い場も壊れたままになっている学校が多く、衛生的にも良い状態にありませんでした。この状況を改善するため、当会は2012年3月までに、同郡内の公立小学校6校で増改築を行い、この6校を含む15校に机やいすなどを提供しました。
支援先の1つであるシカンダルアバッド小学校の先生(男性・37歳)は、「新しい教室のおかげで、屋外で授業をしなくてもよくなりました。きれいなトイレもあります。学校には施設を増築する予算もなく困っていたところ、AAR Japanが支援してくれました。本当にありがとう」と話してくれました。郡内にはまだまだ支援を必要としている学校が多いことから、当会では引き続き学校の増改築を行っていく予定です。
衛生教育と情操教育の支援を進めます
学校の増改築で手洗い場やトイレを設置することにより、物理的な面での衛生環境は改善されますが、それを利用する子どもたちに衛生についての知識を身につけてもらうことも重要です。そこで4月から、教師と子どもたち、そして保護者に対して、手の洗い方などを指導する衛生教育事業を開始しました。当会が行った子どもたちへの衛生意識調査では、下痢をしたことはあるが原因はわからいないという子どもがほとんどでした。そのため、不衛生な状態は病気の原因にもなることなど、基礎的なことからわかりやすく説明し、衛生知識の普及にも努めていきます。
また、現地の教師たちから、治安の安定しない同郡では、子どもたちの情操教育の充実が必要だという声が上がりました。その声を受け、今後は郡内の公立小学校13校とアフガニスタン難民キャンプ内の学校4校に、図書室の設置やスポーツ用品の提供を予定しています。アフガニスタンとパキスタンの未来を担う子どもたちに、本やスポーツを通して様々な世界を知ってもらい、豊かな感受性を培ってもらいたいと願う教師たちの思いも支えていきます。
子どもたちの未来のために
5月3日、駐在員の原口珠代がナシールアバッド小学校を訪れました。学校に到着すると、1年生と2年生、そして幼稚園の子どもたちが、軒先に身を寄せながら授業を受けている最中でした。子どもたちに将来の夢をたずねると、一番多かったのは、「小学校の先生」、次に「お医者さん」でした。理由は、「人々に知識を与える大切な仕事だから」、「人々を助ける仕事だから」。それぞれの夢に向かって、子どもたちが心身ともに健やかに成長していけるよう活動を続けてまいります。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。
※この活動は、皆さまからのあたたかいご寄付に加え、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受けて実施しています。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
パキスタン事務所 澤井 信明
2011年よりパキスタン事務所駐在。海外営業などを中心に20年間民間企業で勤務したあと、子どものころから関心のあった国際協力に携わりたいと難民を助ける会へ。