アフガニスタン:地域ボランティアが広げる障がい者への理解
数十年に亘る紛争により、アフガニスタンでは今もなお地雷や不発弾の被害が発生しています。AAR Japan[難民を助ける会]は2002年1月からアフガニスタンで地雷対策活動を始め、現在は、カブール県とパルワーン県で地雷回避と、地雷被害者を含む障がい者への理解を深めるための講習会を行っています。また、パルワーン県では公立学校2校を対象として、対象校地域に住む障がい児の就学をサポートしています。
地域ボランティアの大きな役割
AARはカブール県とパルワーン県にある82村落で、地雷から身を守ることと、障がいに対する理解を深めるための講習会を行う地域ボランティアを育成しています。現在、164名の地域ボランティアがおり、地域住民に対する講習会を行っています 。講習会ではAAR が作成した冊子やポスターを使い、地雷についての知識や被害に遭わないための対策を教えるとともに、地雷の被害者を含む障がい者に対して、コミュニティでどのようにサポートできるかを指導しています。地域ボランティアの多くはその村落にある学校の先生、またはムラーと呼ばれるイスラム教の宗教指導者です。先生やムラーを選ぶのは、コミュニティの人々の信頼が厚く、参加者が熱心に話を聞いてくれるためです。この活動は地域の方々の協力があるからこその活動であり、ボランティアの方々も研修を意欲的に受けてくれています。
ボランティアの一人で、パルワーン県の教員は、「研修を受ける前は障がいについての知識はほとんどありませんでした。しかし、研修を通じ、障がいにはさまざまな種類があり、原因も多様であることを学びました。また、学校や公共の場所などでどのように障がいのある人と接したらよいか、緊急時などにどう障がい者をサポートできるかなど、今まで知らなかったことを学ぶことができ、感謝しています。研修で学んだことを、これから地域の人に広められるように努めていきたいです」と話してくれました。アフガニスタンのように紛争が長く続く地域では、障がいというと、戦闘などで負傷して障がいを抱えてしまったというイメージがあり、障がいの種類やその原因に関する知識は非常に乏しいというのが現状です。また、地雷に対しても、地雷が埋まっているという認識はあっても、それらの見分け方や対処の仕方というのは、まだまだ一般市民に根付いておらず、地域ボランティアの役割は非常に重要です。
障がい児の就学をサポート
パルワーン県の2つの公立高校では、2014年から障がい児の就学支援を行っています。AARは、学校周辺地域に住む障がい児を調査し、学校に通うためのサポートを行う委員会を両校に設置しました。委員会は毎月定期的にミーティングを開き、生徒の登校状況や学習内容の理解度などの確認や改善点を話し合っています。委員会はそれぞれの高校の教員で構成され、AARは障がい児の調査やミーティングに参加して助言するなど、活動のフォローアップを行っています。現在、2校には64人の障がい児が、委員会のサポートで学校に通っています。
また、9月には両校の代表者が首都カブール市にある、インクルーシブ教育(障がいの有無や、人種や言語の違いなどにかかわらず、すべての子どもたちがそれぞれの能力やニーズに合わせて受けられる教育)を行っている学校を視察し、アフガニスタンのインクルーシブ教育に対する意見交換会の時間をもちました。参加した校長は「視察を行った学校では、障がい児の保護者が積極的に参加できるよう、学校側が励んでいることがわかりました。当校は障がいのある生徒の数も多く、保護者を交えてのミーティングを行うのはまだ困難ではありますが、この視察を活かして障がい児を取り巻く環境を改善していきたいです」 と語ってくれました。
地雷回避教育と障がい啓発の講習会、そして障がい児の就学支援活動、これらの活動には、地域ボランティアや校内委員会のメンバーの存在が非常に大切です。彼ら自身が、この活動を通じて新たな気づきを得て、アフガニスタンの社会を明るい方向へ導いてくれること、そして皆が笑顔で暮らせる社会になることを願いながら、AARはこれからもアフガニスタンで活動を続けていきます。
【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
パキスタン事務所 平山 泰弘
2016 年7 月よりパキスタン事務所に駐在し、アフガニスタン事業を担当。アメリカの大学で平和構築学を学んだ後、青年海外協力隊に参加。東ティモールで障がい者支援に携わり、帰国後AAR へ。千葉県出身