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アフガニスタン×宇和島:メッセージは海を越えて

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きっかけは1本の電話

「こんど、道徳の時間に地雷のことを勉強することになったので、資料を送ってもらえませんか」。一昨年9月、愛媛県宇和島市の沖合に浮かぶ、人口900人の九島(くしま)の九島小学校からAARに電話がかかってきました。島にたったひとつの、全校児童21名の学校です。さっそくAARの地雷パンフレットとアフガニスタンの写真を何枚かお送りしました。アフガニスタンは世界で最も地雷被害の多い国のひとつ。AARは現地で、地雷や不発弾の危険性を一般市民にきちんと理解してもらう活動と、地雷被害者を含む障がい者の教育支援を行っています。

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地雷について学習した内容を発表する九島小学校の女子児童(2015年11月26日)

数ヵ月後、九島小から、学習発表会で地雷について学んだことを発表する子どもたちの写真が先生から送られてきました(右写真)。それだけでなく、地域の方々に募金を呼びかけ、集まった募金をAARに寄付してくださるとのことでした。

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学習発表会で募金を呼び掛けてくれました(2015年11月26日)

地雷などの問題について授業で勉強したり、AARスタッフが赴いて話をしたりする学校は多いのですが、募金のような具体的な取り組みまで進むことは多くありません。しかし、九島小の場合はこれで終わりではありませんでした。先生から「もっとできることはないでしょうか」とさらにご相談がきたのです。いろいろ考えた末、宇和島の子どもたちからアフガニスタンの子どもたちにメッセージを送ってはどうか、と提案したところ、数ヵ月後に5・6年生8名が、カラフルなイラストや写真とともに「地雷に負けないで」「誰もけがをしませんように」といったメッセージを書いてくれました。

メッセージは6,000km離れたアフガニスタンへ

8枚のメッセージはアフガニスタンの首都カブールのAAR事務所に送られ、現地スタッフが5つの学校に持参し、展示・説明を行いました(下左写真)。合わせて17,000人もの生徒が日本からのメッセージを目にしました。極めて不安定な治安情勢が今も続くアフガニスタン。しかし、最近はニュースでアフガニスタンが取り上げられることも少なくなり、人々のあいだには「世界はアフガニスタンのことを忘れてしまったのではないのか」という焦りが広がっています。そんななか、日本の8人の小学生から届いたメッセージは現地の子どもたちの心を強く揺さぶりました。誰に言われるでもなく「お礼を書きたい」という声が上がりはじめ、最終的に50人もの子どもたちが、同じように色とりどりのイラストをあしらったすてきなメッセージを書いてくれたのです。

「僕はサッカーが大好き。でも、地雷があるので、安心してサッカーができる場所があまりありません」「毎日地雷で人が死んでいます。私は手を失くしました」「私のお父さんは地雷でけがをしました。将来は医者になって人を助けたいです」「多くの人が地雷で障がい者になっています。でも皆さんはそんな事故が減るよう助けてくれました。ありがとう」「アフガニスタンが早く平和になって、日本の皆さんに会えるといいな」...。自分の国の平和を願う切実な気持ちと、心配してくれた日本の子どもたちへの感謝がそこには溢れていました。

友だちが住む大切な国

去年11月、AARカブール事務所のスタッフが研修のために来日し、九島小学校への訪問が実現しました。そして、子どもたちにアフガニスタンの様子を伝え、お礼のメッセージを直接手渡しました。

初めて出会うアフガニスタン人、初めて目にするダリー語の不思議で美しい文字、写真の中で笑っているアフガニスタンの友だち。子どもたちは「返事がこんなに返ってくるとは思っていなかったので、とても嬉しい」、「これからも続けたい」と話してくれました。バシールも「ずっと九島の子どもたちを自分の子どものように感じていた。やっと会うことができて本当によかった。九島の人々に支援してもらえて光栄です」と感慨深げでした。

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メッセージを書いた児童のうち数名はすでに卒業していましたが、この日は駆けつけてくれました(2016年11月18日)

九島小学校の子どもたちは、AARの日本人職員が現在出張すらままならない、アフガニスタンという国の抱える困難な問題に対して、自分たちは何ができるのかを真剣に考えました。そして自分たちならではのやり方で、現地の子どもたちに直接想いを伝えることができたのです。アフガニスタンといえば、テロ事件といった悪いイメージがつきまといます。しかし、九島小学校の子どもたちにとっては、自分たちの呼びかけに応えてくれた50人もの友だちが住む、大切な国になりました。

実は九島小学校は、九島と宇和島市の間に新しく橋がかかったことに伴い、今年3月に100年以上の歴史に幕を閉じることになっています。子どもたちは宇和島市内のより大きな学校に通い始めます。しかし、九島の子どもたちが培った、ほかの国とそこに住む人たちの苦しみを思いやる心はこれからも続いていくことでしょう。
AARは、これからも九島小学校の子どもたちのような日本各地の小さな善意を丁寧に汲み上げ、現地にきちんと伝えていくことを心がけたいと考えています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局プログラム・マネージャー(啓発担当) 穂積 武寛

東京事務局で海外事業をはじめ、総務、人事、国際理解教育などを担当。大学卒業後、政府系国際協力団体での10年間の勤務、大学院を経て2009年1月にAARへ。東京都出身

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