シリア難民支援:爆発物から命を守るために
シリアでは2011年3月15日から長く続く危機が始まりました。2016年末には国内全土を対象にした停戦合意が発効されましたが、合意は遵守されず、いまだ多くの地域で戦闘が続いています。AAR Japan[難民を助ける会]では、2012年にシリアで食糧の配付を、2015年に地雷や不発弾の危険性を地域の住民や子どもたちに教える活動を始めました。活動の中で分かったシリアの状況や、現場で活動するスタッフの苦悩や思いを数回に分けて掲載します。今回は、爆発物などの危険性を伝える啓発活動についてご紹介します。
不発弾を花瓶に...平和だったシリアの人々の間違った行動
「不発弾に色を塗って、花瓶のかわりにしている」―。AARの活動の中で、人々から驚くような情報が寄せられることがあります。中東の国々というと、「危ない」というイメージがある方も多いと思います。確かに近隣のレバノン、イラク、パレスチナでは紛争が相次ぎ、長年人々が危険にさらされてきました。シリアはそういった国々から数多くの難民を受け入れてきた国で、国内では2011年にシリア危機が始まるまで大きな戦乱はありませんでした。平和な日本の人々と同じように、「地雷」「不発弾」について見たことも聞いたこともない人がほとんどでした。
AARは地域住民に、空爆に遭ったときの対処の仕方や、地雷や不発弾の事故に遭わないための正しい知識を伝えるとともに、住民の間違った認識や行動に関する情報も集めています。冒頭の不発弾を花瓶にしてしまったケースが代表的な例です。このような爆発物は不安定で、ちょっとした衝撃をきっかけに爆発することがあります。物不足のなか、少しでも生活に彩りを与えるため、色を塗って花瓶に使ったのかもしれませんが、不発弾を拾って加工するのはとても危険です。こういった間違った行動の情報を集めて、より効果的な啓発活動につなげています。
「死亡」「片足切断」「片目失明」「両手指先切断」―。AARの調査で、多くのシリアの人々が、不発弾などに不用意に触ってしまうなどして、命を落としたり深刻な被害を受けたりしていることが分かりました。これらの被害の影響を受けるのは本人だけに留まりません。一家の大黒柱を失って経済的に困窮したり、重い障がいを負った家族のために常に日常生活で全面的な介助をしなければならなくなったり、家族全員が大きな影響を受けてしまいます。
危険物に関する正しい知識を伝えることで、悲しい思いをする家族や被害者を減らすことを目指して活動しています。
次回は、この危険物に関する啓発活動に携わるスタッフの思いをご紹介します。