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「キラーロボットのない世界に向けて」国際会議とシンポジウムを開催しました

2019年03月29日  啓発日本
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「東京声明」を採択

記者会見でテーブルに着くメンバー

日本記者クラブで東京声明を発表するキャンペーンのメンバー(右からピーター・アサロ氏、ノーラ・ロラン氏、イザベラ・ジョーンズ氏、公明党の遠山清彦議員、AAR事務局長の堀江良彰)

2019年2月19日(火)~20日(水)にかけて立教大学(東京都豊島区)にて、AAR Japan[難民を助ける会]と「キラーロボット反対キャンペーン(Campaign to stop killer robots)」の共催による「自律型致死兵器システム(LAWS)に関するアジア太平洋地域会合」が行われました。LAWSはキラーロボット(殺傷ロボット)とも呼ばれる、人間の介入・操作なしに攻撃目標を定め人を殺傷する人工知能(AI)兵器です。

同会議には、アジア太平洋地域から10ヵ国、11名の市民団体の代表、ロボット兵器規制国際委員会(ICRAC)の専門家2名、「キラーロボット反対キャンペーン」の米国メンバー2名の合計15名を招聘し、日本からは「キラーロボット反対キャンペーン」の運営委員を務めるAARのほか関係団体が参加しました。LAWSの倫理、道徳、技術や安全保障などの課題について議論を深め、軍事利用に対して本キャンペーンが目標として掲げる「予防的な禁止条約の成立」に向けて戦略を策定しました。最終日には「東京声明」を採択し、2月20日に日本記者クラブ(東京都千代田区)にて記者会見を行いました。同声明では、平和利用を目的とした技術開発のための科学技術、人工知能、ロボット産業の重要性を再確認すると同時に、LAWSが実用化される前に、アジア太平洋地域の国々がその開発、製造、使用の禁止を求める新しい条約の策定に早急に取り組む必要性を認識し、また各国、地域、国際レベルでさらに取り組む必要性を確認しました。

「東京声明」の全文はこちらをご覧ください。

会合でコの字型のテーブルに座ったメンバーが話し合っている

自律型致死兵器システム(LAWS)に関するアジア太平洋地域会合で発言するAAR事務局長の堀江良彰(右から4人目 2019年2月19日)

早急な規制を

シンポジウムの会場でスクリーンに大きく映し出される中満泉氏

シンポジウムには国連軍縮担当事務次長・上級代表の中満泉氏からのビデオメッセージも

2月19日の夕方には、より多くの方々とキラーロボットとの問題を考えるため、立教大学21世紀社会デザイン研究科・社会デザイン研究所主催、AARと同キャンペーン共催で「キラーロボットのない世界にむけて」と題したシンポジウムを開催しました。

シンポジウムでは、冒頭、中満泉国連軍縮担当事務次長・上級代表からいただいたビデオメッセージを放映。中満氏は、人工知能(AI)とロボット工学の発展は、システムの自律性を高めることを可能にし、その関連技術は兵器やその他の軍事システムへも応用されているとし、「その影響は深遠で多方面に及び、新たな軍拡競争に火をつけるおそれさえあります。戦争で自律型技術の利用が広がれば、戦死等の兵力消耗のリスクも一般市民の巻き添え被害もなく武力紛争を始められるという見方が生まれ、これが武力行使に踏み切る際の決断に影響を及ぼしかねません」と懸念を述べられました。

会場に語り掛けるピーターアサロ氏

LAWSの規制には国際会議の果たす役割が大きいと話すピーター・アサロ氏

ロボット兵器規制国際委員会(ICRAC)のピーター・アサロ博士からは、「キラーロボット反対キャンペーン」の発足経緯、現在の同キャンペーンへの加盟数(53ヵ国93団体)と、国際会議の果たす役割などについて説明がありました。LAWSとは「人の関与なしに目標を定め攻撃できるもの」で、兵器が自動化されることにより生じるさまざまな課題を議論するため、国連の会議では主にLAWSの「定義」、兵器の「自動化」、LAWS規制のための「新法の必要性」、「倫理的課題」などについて話し合われていることを報告しました。

自身の企業での経験を話すローラ・ノラン氏

グーグル社での経験を語るローラ・ノラン氏

次に、同じくICRACのローラ・ノラン氏より発表がありました。ノラン氏はグーグル欧州本社で勤務していましたが、グーグル社が米国防総省のプロジェクトに参加することを知り、戦場でグーグル社の技術が使われる恐れがあることが判明したため、それに抗議し多くの社員とともにグーグル社を退職しました。しかしノラン氏は、多くの技術者が、自分たちの技術を戦場で、または人を殺傷する道具に使われることに対して懸念を持っているものの、仕事を失うことへの恐れや待遇の変化、または就労査証の取り消しの危険にさらされるなどの理由で、倫理的な行動をとることが難しい場合もあることを話されました。同時に、こうした状況を打開するためには、同キャンペーンのような動きは技術者たちを勇気づけ、倫理的な行動を促すのに大いに役立つので是非支援してほしいと訴えました。

アサロ氏とノラン氏はともに、「キラーロボットは精度を求めなければ今すぐにでも実現可能であり、早急な規制が必要である」と訴えました。

壇上に座りマイクを持って話す長有紀枝、イヤホンで通訳を聞くノラン氏とアサロ氏

シンポジウムで参加者の質問に答えるAAR理事長の長有紀枝。中央はICRACのローラ・ノラン氏、右は同・ピーター・アサロ氏

「キラーロボット反対キャンペーン」をはじめ、この問題を訴えているNGOは、AIの開発そのものに反対しているわけではありません。しかし、AI技術は私たちの生活を向上させる一方で、兵器にも転用される危険性をはらんでおり、その点についての規制が必要であると考えています。火薬、核兵器に続いて第三の兵器革命になるといわれているキラーロボット。私たちは、今後世界のどこかでキラーロボットによる甚大な被害が生まれないよう、規制づくりに向けた議論をしていかなければなりません。AARは今後も活動を続けてまいります。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務局 櫻井 佑樹

大学卒業後、民間財団に勤務したのちイギリスの大学院で平和学を学ぶ。パキスタンでのNGO勤務を経て2012年8月よりAARへ。東京事務局でタジキスタン事業などを担当し、ザンビア駐在後、2016年8月までタジキスタン駐在。現在は東京事務局で福島事業やキラーロボット反対キャンペーンなどを担当。三児の父(千葉県出身)

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