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対人地雷禁止条約発効20年記念特集「地雷対策とは」その2「地雷除去」

2019年04月20日  地雷対策
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1999年3月1日に「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」が発効してから20年。この機会に、長年地雷問題に関わってきた東京事務局の紺野誠二が、地雷対策全般について解説します。今回は地雷の除去活動についてです。

「その1」についてはこちらをご覧ください。

除去要員

バイザーとプロテクターをつけた除去要員の女性

モザンビーク出身の地雷除去要員・アメリアさんが最後の地雷を除去した瞬間 http://photos.prnewswire.com/prnh/20150915/266795

地雷対策について語る際、除去活動を外すわけにはいきません。

地雷は取り除かない限りなくなりません。言い換えれば、地道に除去をすれば、確実に被害をなくせます。実際に、モザンビークでは、20年以上も除去活動を続けたおかげで、除去した土地で農業や酪農業などが可能になるなど、経済発展が期待されるようになりました。

一部の外国人専門家を除けば、地雷除去作業の多くは、除去団体が雇用し訓練した地元の人々によって行われています。除去要員は男性に限らず女性もおり、給料を得て家族を養っています。給料の高い外国人専門家の投入数を最小限にすることで、地元の雇用創出に貢献できます。

除去方法

地面にしゃがみ地雷や不発弾がないか確認する

コソボ自治州(現在はコソボ共和国)で重い防具と息苦しいバイザーをつけて地雷除去活動に携わるAARの紺野誠二

一昔前に「3K(きつい、汚い、危険)職場」という言葉が使われましたが、地雷除去作業はまさに3Kの仕事です。朝から何時間も炎天下で、重い防護服とバイザー(顔面保護マスク)を装着して雑草を刈ったり、金属探知機で金属片がないか探したりします。危険も当然伴いますので、緊張感を持続して作業しなければなりません。ですから疲労感もたまります。私は、AARの邦人職員で唯一、実際の除去活動を実施しましたが、装具は着ているだけで息苦しくなるだけでなく、暑さと緊張の中での作業は疲労困憊します。

私が経験した作業内容を簡単に説明すると、まず、幅1メートル、前方最大40センチメートルのエリアと、その前方および左右各10センチの幅を、3回以上金属探知機で探知しながら地雷の有無を調べます。探知機の反応がなければ、同じ手順を繰り返しながら、調査するエリアをさらに広げます。探知機が反応したら、反応のあったポイントの手前に目印を置き、そのポイントを隔離し、掘削作業を始めます。

事故が起きないよう、作業の工程は国連が策定する国際基準や、それに準拠する形でそれぞれの国の地雷除去団体の定める基準によって、細部に至るまで規定が設けられています。それだけ細かい作業を行うため、集中力が途切れて事故が起きないよう、30分の作業後は10分間の休憩を取ります。

とはいえ、作業中の事故は起こりうるため、除去現場には医療従事者と移動手段(車両など)を待機させます。事故が起きても迅速に対応できるよう、移送のための訓練も行います。

即席爆発装置(IED)の脅威

黄色いポリタンクに爆発装置がしかけられている

即席爆発装置(IED)。黄色いポリタンクに爆弾が仕組まれることも(写真提供:The HALO TRUST)

上記のような手順を厳守することが大前提ですが、対人地雷を発見して爆破処理すること自体は、実はそれほど難しいことではありません。対人地雷や不発弾は、形も大きさも、中に入っている爆薬の量や種類も、また作動方法や除去の方法も、ほぼ決まっているからです。しかし、現在国際社会で大きな問題となっている即席爆発装置(Improvised Explosive Device、通称「IED」)の除去は、それほど簡単な話ではありません。

IEDにはさまざまなタイプがあり、砲弾や対戦車地雷を使うようなケースもあれば、灯油を入れるポリタンクを使うものもあり、起爆装置も、携帯電話など日常的に使われる電子機器も用いられるなど、多種多様です。また、IEDが隠される場所も、地面に埋められることもあれば、道路沿いに置かれるなど、あらゆる場所に設置されるため、除去が非常に困難です。AARが主要メンバーを務める地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が毎年発行する「Landmine Monitor」報告書(年間の地雷の使用状況や被害者数、除去の状況などをまとめたもの)の2017年版によると、アフガニスタンでは2017年に報告された死傷者数2,300人のうち、対人地雷による被害者は62人。これに対してIEDによる被害者は1,093人です。IEDの被害は甚大で、難民の帰還を妨げるなど、人道支援における最大の課題と言えます。

確実に安全な土地を

地雷除去で重要なのは、地雷を何個取り除いたかではなく、どれだけの土地を安全にしたかです。広い場所に1個か2個しか地雷が埋まっていなかったとしても、安全を確認できるまでその土地を利用するのはためらわれます。人に対するインパクトがどれほどあったのかが重要視されます。

「機械を使って効率的に地雷の除去はできないのですか?」という質問を受けることがあります。もちろん、使用できる場所では機械を使用します。しかし、地雷が埋められている場所は、山間部など、機械が入れない場所も多くあります。もし一つでも取り残してしまうと、後日事故が起きてしまいます。人々が安全な土地で暮らせるよう、確実に地雷を除去することが必要です。

地図はあっても

対人地雷の埋められ方は、紛争地によって異なります。私が2000年に不発弾の除去活動を行ったコソボ自治州(現在はコソボ共和国)では、地雷の埋設場所を印された地図が残されていたため、その地図に従い、比較的スムーズに作業が進みました。しかし、地図に印のない場所で地雷が爆発し、周辺を除去し直さざるを得なかったこともあります。地図をうのみにすることはできませんし、地図のまったくない地域も多くあります。国連会議で採択された特定通常兵器使用禁止制限条約付属議定書IIにおいて、「地雷は規則性をもって敷設され、地図、目印、記録が作られねばならない」とされていますが、それが実行されることは稀です。

このように、地雷除去は膨大な労力と資金と時間のかかる地道で苛酷な作業ですが、皆さまのご支援を得ながら、AARは地雷除去団体と連携しつつ活動を続けています。

【報告者】 記事掲載時のプロフィールです

東京事務所 紺野 誠二

2000年4月から約10ヵ月イギリスの地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向、不発弾・地雷除去作業に従事。その後2008年3月までAARにて地雷対策、啓発、緊急支援を担当。AAR離職後に社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得。海外の障がい者支援、国内の社会福祉、子ども支援の国際協力NGOでの勤務を経て2018年2月に復帰。茨城県出身

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