スーダン:日本国大使が地雷回避教育の活動地を訪問されました
第二次スーダン内戦(1983~2005年)の間におびただしい数の地雷が埋められたスーダン。国内に1,900人以上の地雷・不発弾被害者がおり、紛争が終結した2005 年からこれまでにも、報告されただけで651人が新たに地雷・不発弾の被害に遭っています(2014年3月時点、IMSMA(地雷対策情報管理システム)より)。さらに2011年には南部の青ナイル州・南コルドファン州で紛争が再燃し、不発弾による被害増大の可能性も高まっています。AAR はポスター、紙芝居、歌など独自の教材を作り、村々を回って地域住民に地雷に関する講習会を実施しています。2006年の開始からこれまでに約10万人が講習会に参加しました。
3月24日、在スーダン日本国大使館の堀江良一大使が、当会が地雷回避教育を行っているスーダン東部カッサラ州の事業地を訪問してくださいました。そこでAARは大使の訪問に合わせ、地域住民の皆さんとともに、これまでの地雷回避教育活動について紹介するイベントを開催しました。スーダン駐在員の宇治川貴史の報告です。
住民と一緒に、地雷回避教育活動についてご紹介
イベントには郡長、村長、政府関係者、そして地元住民も招待しました。また、地雷対策を行う国連機関の担当者や、休暇中だった国立地雷対策センターのカッサラ所長が、首都ハルツームから車ではるばる8時間以上かけて来られ、総勢250名以上の方が参加してくださいました。会場は、AARが実際に地雷回避教育の講習会を行ってきた、タルクーク郡ダラスタ小学校です。
地雷回避教育の講習会をデモンストレーション
イベントでは、当会の現地スタッフが、AARが村々で行っている地雷回避教育の講習会の一部をデモンストレーションしたり、地雷に関する知識を伝えるために作った歌を紹介したりしました。また、会場となったダラスタ小学校の生徒が、地元の伝統的な歌や、当会スタッフと一緒に作った地雷回避教育の寸劇を披露してくれました。寸劇は、生徒たちが地雷が潜む危険な場所に入って金属を集めようとする場面から始まります。ダラスタ小学校の先生や当会スタッフも役に入り、白熱した演技を見せてくれました。寸劇中の問答が見ているだけでも面白く、大いに盛り上がりました。
ご来場くださった多くの方からもスピーチをいただきました。カッサラ州のラジオ局長は、「カイゼン(改善)」の大切さを語ってくださいました。このラジオ局は以前、JICA(国際協力機構)のプログラムでラジオ収録機材供与と研修を受けており、AARは2013年10月からこのラジオ局の協力を得て、地雷の危険性を伝える番組を放送しています。日本語の単語を取り上げた局長のスピーチに、日本が行ってきた支援がスーダンの人々の心に根付き、AARの活動に繋がっていることを感じました。
プログラムの最後には、堀江良一大使からご挨拶をいただきました。「国内や周辺国での紛争が絶えないスーダンは、紛争解決に焦点が当てられることが多いです。しかし、紛争後にどう平和で安定した生活を取り戻せるか、ということもとても重要です。地雷対策は紛争後の平和と安定を取り戻すための重要な取り組みであり、スーダンの未来にとって大事なことです」と、激励の言葉をいただきました。
今回のイベントを通して、私も改めて地雷対策の重要性と、多くの方々のお力添えにより私たちの活動が成り立っていることを実感しました。このイベントは地元のメディアにも取材され、後日スーダン全土でニュースとして放送されました。お忙しい中当会の活動地に来てくださった大使を始め、このイベントにご協力いただいた方々に感謝をしつつ、地雷問題の解決に向けて、今後も邁進していきます。
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【報告者】 記事掲載時のプロフィールです
スーダン事務所駐在 宇治川 貴史
大学では国際政治学を専攻し、在学中にザンビアで半年間ボランティアを経験。電気機器メーカーに勤務後、「プロとして国際協力に関わりたい」と2013年9月よりAARへ。タジキスタン駐在を経て、2013年12月よりスーダン駐在。