ミャンマー・パアン事務所
角田 由美子(かくだ ゆみこ)
多民族国家ミャンマー(ビルマ)でカレン州のお祭りに行ってきました
国内のベンチャー企業やカンボジアでの銀行勤務を経て、2013年8月よりAARミャンマー・パアン事務所駐在。視覚障がい者のガイドやグループホームでの作業補助など多数のボランティアを経験。趣味は旅行。兵庫県出身
記事掲載時のプロフィールです
ミャンマー(ビルマ)には、大きく分けて8つ民族が存在し、それぞれが独自の文化を持っています。AARパアン事務所があるミャンマー南東部のカレン州には、カレンと呼ばれる民族が住んでいます。そのカレンも、スゴー、ボー、ブエなどいくつもの人々に分かれています。
毎年11月7日から10日はカレン州のお祭りが行われます。今年で58回目を迎える同州最大のイベントで、パアンの街が一年で一番賑やかになります。その様子を、駐在員の角田由美子がお伝えします。
一年で一番盛り上がるお祭りです
私が駐在するカレン州の州都パアンは、昭和の日本の雰囲気が漂う素敵な街です。大通り以外は車はほとんど通りませんし、大型スーパーはなく、みんな市場で買い物をします。人々は親切かつ勤勉で、地域のつながりが強く、ご近所同士が助け合って暮らしています。飼い主のわからない犬や猫が多いのですが、人間と同様、穏やかでのんびり暮らしています。
そんなカレン州が一年で一番盛り上がる4日間が、「カレン州の日」と呼ばれるお祭りです。ダンスや音楽が披露されるほか、カレンに属するさまざまな人々の文化が紹介されます。開会式では、各学校の成績優秀者や、大きな大会でメダルをとったスポーツ選手たちが次々に表彰されます。国歌が流れるとき、軍の関係者は敬礼し、一般市民はお辞儀をするのがミャンマー式のようです。
開会式終了後、イベント会場前の通りにウ・ゾウ・ミン カレン州首相をはじめ州大臣が登場し、風船が真っ青な空に放たれると、「カレン州の日」の幕開けです。
各部族の伝統文化を満喫できます
イベント会場の門を入ると左右にカレン州の伝統文化を紹介するブースが並んでいます。カレン州で使われるはた織り機や、カレンの中でも人種によって少しずつ違う書き方をするカレン文字(ビルマ文字とは異なります)、これまた人種によって違う婚礼衣装などが紹介されていました。海外からの観光客も、興味深そうに見入っていました。
日が暮れると街のメインストリートでトゥンベイン(オートバイの後部に客席がついた三輪タクシー)の運転手が「パエ・ゴー、パエ・ゴー!」と叫びます。これは、「お祭り行き」という意味で、「イベント会場への直通タクシーが出るよー」といったところ。AARパアン事務所から乗り合いトゥンベインで20分ほどの会場まで、ひとり250チャット(約25円)でした。
沿道の両側にはびっしりと屋台が出現。軽食に果物、布地に食器や家電、カバンや雑貨など、ありとあらゆるお店が並び、大変な人出です。
人気バンドの登場や、外国人観光客の姿も
この夜最大のイベントは、ミャンマーでトップの人気を誇るバンド「アイロン・クロス」のチャリティ・コンサートです。カレン州のシンボルであるズウェガ ビン山の麓から頂上にある僧院まで、ミャンマー初のケーブルカーを通す計画があり、その寄付金分がチケットに含まれています。チケットが高額なため、若者たちはほとんどが一番安い(10,000チャット=約1,000円)立ち見席で音楽を堪能していました。もちろん私も立ち見です。
この4日間のイベント中は、毎晩カレンの各人種による舞踊の競技会が行われます。入場料は500チャット(約50円)です が、2日目に私たちが行ったときにはもう席がなく、ここでも立ち見。一般市民にはこちらの方が関心が高いようです。ほかに、ミャンマーでの人気スポーツであるボクシングの試合も行われる日もあります。
普段は若者でも男女ともにほとんどの人が「ロンジー」とい う巻きスカートをはいていますが、このイベント会場ではジーンズやパンツ姿でした。アイロン・クロスのような人気バンドのコンサートが今年は初めて開催されたり、外国人の観光客が目につくなど、昨年とはだいぶ違う雰囲気だったようです。独自の文化を保つパアン州も、経済の成長とともに、これから猛スピードで変わっていくのではと実感した「カレン州の日」でした。