ミャンマー・パアン事務所
久保田 和美
ミャンマー:カレン州の結婚式に行ってきました
大学で国際関係学を学んだ後、イギリスの大学院で開発学・教育学を専攻。在カンボジア日本大使館勤務を経て、2009年から2011年までAARでミャンマーでのサイクロン被災者の支援などに携わる。政府系開発援助機関勤務の後、2014年9月より再びAARへ。趣味は旅行。千葉県出身
記事掲載時のプロフィールです
ミャンマーのカレン州の人々は主に仏教徒ですが、英国植民地時代の影響によりキリスト教徒も多くいます。宗教・慣習や厳しい風土から、ミャンマーの結婚式シーズンは雨季の終わる10月末から再び雨季に入る前の5月末まで。カレン州も例外ではありません。今回は、AARパアン事務所の現地スタッフでキリスト教徒の結婚式に参列したパアン駐在員・久保田和美からの報告です。
「6月の花嫁」ならぬ「10月末の花嫁」
「ジューン・ブライド」という言葉があるように、6月は「この月に結婚すると幸せになれる」という言い伝えから花嫁が憧れる季節。しかし、ミャンマーでは6月ころから10月にかけて、バケツをひっくり返したような雨が降り続くため、結婚式はほとんど開かれません。さらに、仏教徒にとっては、安居(あんご)といって僧侶が修業のためお寺に籠る7月から10月の間は結婚式を挙げられません。
雨季が明け「ダディンチュ」という10月の満月の日が近づくころ、お寺には寄付が集まり街中はお祭り騒ぎ。僧侶たちが外を歩く姿も目にするようになり、街は新緑が芽生えるように生き生きし始めます。そんな雨季が明けてすぐの10月末、待ちに待ったとばかりにAARパアン事務所の男性スタッフが、めでたく結婚式を挙げました。
「重要なのは服装ではなく、気持ち」
ミャンマーで結婚式に招かれるのは初めてなので、ばっちりミャンマー式の正装を準備して当日を迎えました。会場は新郎が普段から通っている地元の教会、まだ涼しい朝8時、礼拝から始まりました。新郎のために幼少時代から彼を知る牧師さんも遠く離れた故郷の村から駆けつけ、信仰をともにする地域の人々により、心のこもったセレモニーが執り行われます。
挙式会場にはハート型の風船が隅々まで飾られ、信仰の場である教会がどことなくワクワクした雰囲気に包まれています。カレンの民族衣装を着た参列者で会場が溢れ礼拝用のいすが埋め尽くされたころ、会場に音楽が鳴り響き、いよいよ新郎新婦の入場です。
拍手とカメラに迎えられたカップルの衣装は、私の期待に反して西洋風。ふと隣りのミャンマー人スタッフを見ると、いつもお洒落にミャンマーの伝統的なロングスカートのロンジーを着こなす女性スタッフも、その日は現代風にジーンズのミニスカート。男性スタッフにいたってはAARのポロシャツを着ているではありませんか!一緒に参列した事務所スタッフの中でミャンマーの正装をしているのは日本人の私だけです。
現地スタッフによると、重要なのは祝福する気持ち。そう言うだけあって、その後は牧師さんのお話で会場が笑いに包まれ、式に招かれたカップルがBGMに合わせてマイクをとって歌う場面も。ケーキをプレゼントした先輩夫婦と新郎新婦4人の共同作業でケーキがカットされたり、式が終わるのを惜しむように牧師さんがマイクをとって歌を熱唱するなど、終始カップルを祝福する和やかな雰囲気が漂っていました。
家族や友人だけでなく、ご近所の皆さんも参加
日本では親戚や職場関係者、友人に囲まれ結婚式を挙げるのが一般的だと思います。この日は、家族や友人、教会関係者だけでなく、AAR事務所の大家さんや、隣のお店のおじさんおばさん、小さな子どもたちも集まりました。たくさんの笑顔に包まれた祝福ムードが、今後の新郎新婦が歩んでいく道を支えているかのような、温かい結婚式でした。