ミャンマー・ヤンゴン事務所
本川 南海子(もとかわ なみこ)
ミャンマー:少女が初めて見せた笑顔-国際障がい者デーイベント
2013年5月よりミャンマー駐在。イギリスの大学院で農村開発を学び、卒業後NGO職員としてインドで有機農業支援に携わる。その後青年海外協力隊に参加し、ネパールでの活動を経てAARへ。趣味は歌と踊り。神奈川県出身
記事掲載時のプロフィールです
AAR Japan[難民を助ける会]ヤンゴン事務所では、「地域に根差したリハビリテーション事業」(CBR事業)を通し、障がい者の就労・就学をすすめ、学校・地域行政や地域住民に障がいに対する理解を深めてもらうための活動を行っています。ヤンゴン事務所駐在員の本川南海子が、2013年12月1日にミャンマーで行われた「国際障がい者デー」イベントでの様子をお伝えします。
ミャンマー事業担当者も参加するワークショップはこちら 4/18(金)「NGO職員のやりがいも苦労も全部見せます!ただいま東南アジアで奮闘中」 |
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障がいのある方たちが主役です
毎年12月3日は「国際障がい者デー」。障がい者への理解を促進し、障がい者の権利と周囲のサポートを得ることを目的とした日です。それに先立つ12月1日、私たちAARも障がい当事者団体とともに、CBR事業を実施しているヤンゴン郊外のシュエピター地区で、「国際障がい者デー」イベントを開催しました。同じく障がい者支援を行う現地のNGO・ザ・レプロシー・ミッション・インターナショナル(TLMM)も協力してくれました。AARが設立を支援した障がい当事者団体のメンバー、障がい児とその家族、行政や学校関係者、地域の人々など合わせて約300名が参加しました。
芸達者が多いシュエピター地区。イベントでは、障がいのある方々が中心となって自分の特技を披露しました。コントあり、舞踊あり、カラオケあり。この地区に住む障がい児のひとり、アウン・カウン・ミャッくん(9歳)は民謡を歌いました。彼の元気いっぱいの歌声が響き渡ると、会場からは盛大な拍手が沸き起こりました。
家に閉じこもっていた少女が
イベントに参加したひとり、ミョー・ミョー・カインさんは16歳。6歳で小学校に入ったものの、聴覚に障がいがある彼女が学校の勉強について行けないことを心配した両親が、入学後たったの2ヵ月で彼女を退学させました。以来、16歳の今まで、彼女は友達を作ったり外で遊んだりすることもなく、自宅でお絵かきばかりをする毎日でした。
そんな彼女のよき理解者である祖母の勧めで、2013年11月からAARの教育専門職員が行う障がい児のためのグループ補習に通い始めました。
ミョー・ミョー・カインさんにとって今回の「国際障がい者デー」のイベントは、人生で初めて参加した大きな催しです。
イベントでは、子どもたちが参加しやすいさまざまなゲームを用意しました。スタッフがする動作を覚えて繰り返す「まねっこゲーム」、足に結びつけた風船を踏み合うゲーム、水を張ったバケツに入れたリンゴを手を使わずに取り出すゲーム。ほかに車いすリレーやクイズ大会なども行われました。
皆が楽しそうにゲームに参加している様子を、初めは遠くから見つめているだけだったミョー・ミョー・カインさん。しかし、自分と同年齢の子どもたちが参加しだすと、次第に「私も一緒にやりたい!」と、グループ補習に一緒に通う友達を誘って自分からゲームの輪の中に入っていきました。結果は3位に入賞。自分の席に戻ってきた彼女は、控え目にうつむきながらも、満足した表情を浮かべていました。彼女の様子を見ていた祖母も、「良かったね。楽しかったね」と嬉しそうに何度も繰り返し彼女に語りかけていました。
すべての人々が参加できる社会のために
国連が発表した2013年の国際障がい者デーの標語は、「"Break Barriers, Open Doors: for an inclusive society and development for all"(壁を取り払い、扉を開こう:すべての人々が参加できる社会のために)」。AARは、今後も地域の人々と手を取り合い、障がいがあってもなくても、すべての人が参加し、ともに支え合いながら暮らしていくことのできる社会の実現を目指し、活動を続けていきます。