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スタッフ日記[国際協力の現場から]

実は魅力いっぱい!? 東欧の小さな国モルドバ

2023年7月29日

この記事を読んでくださっている皆さんの中には、モルドバという国名を初めて聞いたという方もいらっしゃると思います。モルドバ共和国はルーマニアとウクライナに挟まれた小さな国です。日本人にあまり馴染みのないモルドバについて、AARモルドバ駐在員の東マリ子がお伝えします。

キシナウ市街の写真、トロリーバスと車が行き交う

トロリーバスが活躍する首都キシナウの美しい市街地

世界中で大ヒットした「恋のマイアヒ」

皆さんは耳に残るあの独特なフレーズを覚えていらっしゃいますか? 日本でも2004~05年頃に大流行した「恋のマイアヒ(原題:Dragostea Din Tei;菩提樹の下の恋)」は、モルドバ出身の音楽グループO-Zoneの曲です。サビの「のまのまイェイ(Nu mă, nu mă iei.)」は「僕を置いて(君は行ってしまうんだね)」(ルーマニア語)という意味で、なんと失恋ソングなのだとか。あの軽快なメロディーからはとても想像がつきませんね。

モルドバ人は民族的・言語的にルーマニアと同根であり、モルドバ国土の主要部分はかつてルーマニアの領土でした。ルーマニア語はラテン語を起源とし、イタリア語やスペイン語に似ています。モルドバは旧ソ連構成国でもあるためロシア語の通用度も高く、街を歩いていると両方の言葉が聞こえます。私の印象では半々くらいの割合でしょうか。スラブ語系のロシア語とルーマニア語の類似性は低いにも関わらず、モルドバ人はきれいなロシア語を話します。

共和国の中にあるもうひとつ共和国

モルドバは1991年に旧ソ連から独立しましたが、実はそのモルドバの中に独立国を自称する地域があります。モルドバ東部を流れるニストリア川とウクライナ国境に挟まれたトランスニストリア地域(沿ドニエストル共和国)は、ソ連時代に多くのロシア人やウクライナ人が移住した地域です。モルドバの独立に先立ち政府が打ち出したモルドバ語の国語化などに反発したロシア系住民が「沿ドニエストル共和国」の分離独立を宣言し、武力衝突が勃発。1992年に停戦協定が締結されましたが、30年以上が経った今もなお、親ロシア派による事実的な実行支配が続いています。

約47万人(モルドバ人・ロシア人・ウクライナ人)が暮らすトランスニストリア地域には、従来からロシア軍が駐留し、演習などを行っています。2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻を受けて、ロシアを支持するデモが発生するなど緊張が高まっています。モルドバのそれ以外の地域は、基本的に治安が良く穏やかです。

モルドバの国民食「プラチンタ」とは

首都キシナウの街を歩いていると、あちらこちらで見かけるのが「プラチンタ」というパイのような食べ物。人気店の前には行列ができます。具材はキャベツやジャガイモ、カッテージチーズ、チェリーが最もポピュラーで、店によっては他にリンゴ、カボチャ、肉などもあります。値段は1個70~140円。2個食べればお腹いっぱいです。

パン販売店のショーケースの写真。4種類のパンが写っている

プラチンタ(上段)と並び、プレッツェル(下段左)や「フォイタジュ」と呼ばれるパイ(下段右)も人気

AARモルドバ事務所近くには、家庭的な総菜が食べられる食堂があります。サラダ、スープ、メイン、付け合わせが数種類ずつあり、すべて量り売り。3種類注文して1食あたり300~500円とお手頃です。

サラタ・シューバの写真

ある日のランチ。「Salată Șuba(サラタ・シューバ)」(写真右上)は「毛皮を着たニシン」という名前のロシア料理で、赤いビーツを毛皮に見立てています。併せてキャベツの煮込み(写真手前)とリゾット(写真左上)を注文

黄色い料理の正体は?

ジャガイモのピューレに似た、黄色くてジャガイモよりも粘り気のある食べ物があります。「ママリガ」というルーマニア・モルドバ料理で、これもモルドバの国民食です。トウモロコシ粉に水、塩、バターを加えて煮るだけのシンプルな料理で、主食としても付け合わせとしても食べられます。ママリガ自体にはそれほど味がなく、サワークリームやソースをかけて食べるのですが、すごく美味しいかと言うと……。

ママリガの写真

トウモロコシの黄色が鮮やかなママリガ

旧ソ連圏にあって「ラテン系」とも呼ばれる国ですが、底抜けに明るく陽気というイメージとは異なり、静かで穏やかな雰囲気を持つモルドバ。日本人にとってマイナーな国ですが、モルドバの魅力を今後も発見し、お伝えしていきたいと思います。

東 マリ子HIGASHI Marikoモルドバ事務所

大学でロシア語を専攻。商社や在ロシア日本大使館勤務の後、2021年にAAR入職。旧ソ連タジキスタン駐在を経て、2023年1月からモルドバ駐在員としてウクライナ事業を担当。

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