行動規範・方針 Code of Conduct / Policy

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AARが大切にすること:行動規範

  • 一人ひとりの人間を大切にする「人間の安全保障」の考え方に則り、支援を必要とする人々の視点に立ってニーズを把握し、AARが行いうる最善の取り組みを実行します。
  • 「人道」、「公平」、「独立」、「中立」の人道4原則に則り、「人道支援の行動規範※1」のほか、人道支援関連の諸基準※2を遵守しつつ活動します。
  • 特定の党派・宗派に偏らない活動を行います。
  • 自らの行う活動について、透明性を確保し、適切な情報開示に努めます。
  • 地域の人々と真摯に向き合い、現地社会の伝統、慣習、文化、歴史を学び、緊急時においてもこれらを最大限尊重します。
  • 地域の住民自身による地域社会発展の取り組みを後押しするような活動を行います。
  • 人道支援のニーズがきわめて高い危険地域でも活動を行えるようにするために、自らの安全管理・危機対応能力の向上に努めます。
  • 講演や政策提言など様々な手段を通じてAARが取り組む世界的な問題について広く内外に理解を求めることを強く意識し、不断の努力を行います。
  • 誰もが世界の平和と安定に貢献しているという実感を持てるような参加・支援の方法を提案します。

※1 国際赤十字赤新月社連盟『災害救援における国際赤十字・赤新月運動および非政府組織(NGOs)のための行動規範
※2 グループURD、CHSアライアンス、スフィア・プロジェクト『人道支援の質と説明責任に関する必須基準』、スフィア・プロジェクト『スフィア・ハンドブック』など

人権方針

前文

AAR Japan[難民を助ける会]は、一人ひとり、個性をもった多様な人間が、自然と共存しつつ、人間の尊厳をもって、共生できる社会を目指しています。このビジョンのもと、「人間の安全保障」の視点を取り入れて世界中で人道的な見地から国際協力活動を展開していますが、私たちの判断と行動が、活動に関わるすべての人や社会に直接的・間接的に影響を与えることは少なくありません。こうした認識のもと、AARは、支援対象者および周辺地域の人々、AARの活動を支える支援者、ボランティア、役職員をはじめとする、あらゆる人々の人権を尊重することを、あらためて宣言します。

※「人間の安全保障」の視点とは、人間一人ひとりに焦点を当て、生存や生活、尊厳に関わるあらゆる脅威・恐怖から人々を守り、保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方です。AARはこの考えに基づき、さまざまな理由で困難な状況に置かれている方々の視点に立って国際協力活動を行っています。また、活動にあたっては、現地職員や支援対象者、周辺地域の人々の参加を得ながら、将来的な脅威に対応する力を強化することを目指しています。

AAR Japanの人権方針

AARは前文で掲げたビジョンのもと、以下の10の人権方針のもとに活動していきます。人権尊重の責任は、AARの役員、ボランティア、および国内海外の全事務所の職員に適用され、また、AARが影響を及ぼすことができる活動地の行政や関係団体、助成元、取引先、およびそのほかの関係者に対しても、人権の尊重を働きかけていきます。

1. 私たちは人権尊重の重要性を認識し、以下の人権・人道に関する国際規範を支持し、尊重します。

国際条約、議定書および宣言
  • 世界人権宣言(1948)
  • 社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)(1966)
  • 自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)(1966)
  • 国際人道法(1949年のジュネーブ四条約および1977年の二つの追加議定書をはじめとする国際人道法規)
  • ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約)(1948、日本未加入)
  • 国際労働機関(ILO)「労働の基本原則および権利に関する宣言」(1998)
  • あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)(1965)
  • 児童の権利に関する条約(こどもの権利条約)(1989)
  • 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約・同選択議定書(女性差別撤廃条約)(1979)
  • 難民の地位に関する条約(1951)・同議定書(1966)
  • 障害者の権利に関する条約(2006)
  • 宗教および信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言(1981)
  • 発展の権利に関する宣言(1986)
  • 民族的または種族的、宗教的および言語的少数者に属する人々の権利に関する宣言(1992)
  • 先住民族の権利に関する宣言(2007)
民間の取り組み
  • 人道支援の質と説明責任に関する基準(CHS)(2014)
  • 災害救援における国際赤十字・赤新月運動および非政府組織(NGOs)のための行動規範(1994)
  • ISO26000(社会的責任に関する手引き)(2010)

2. 私たちは活動する国や地域の法令や国際規範を尊重し、文化、慣習、宗教、価値観などを正しく理解・認識することに努め、人種、皮膚の色、性別、年齢、言語、財産、国籍もしくは出身国、宗教、民族的もしくは社会的出身、カースト、経済的背景、障がい、妊娠、先住民族の出自、労働組合への加入、政治的所属、政治的見解もしくはその他の見解、配偶者の有無、家族状況、個人的関係、健康状態等、いかなる事由による差別もその他の人権侵害も行いません。また、児童労働、強制労働、紛争下における女性への暴力などの人権を侵害するいかなる行為にも加担しません。

3. 私たちは紛争や災害による難民・国内避難民支援においては、難民条約による「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団の一員であるなどの理由で、迫害を受ける、あるいは迫害を受ける恐れがあるため、自国に戻ることができないか戻ることを希望しない人々」という定義に合致する人々に加えて、より困難な状況下や弱い立場にある人々を広く「難民」と捉え、難民ならびに受け入れ地域の人々の人権に充分配慮します。

4. 私たちは地雷被害者を含むすべての障がい者が社会に平等に参加できる社会を目指し、障がい者自身による意思決定を尊重しながら活動していきます。

AARの障がい者支援活動の基本方針

5. 私たちは感染症対策において、患者や回復者、近親者に対し、病気に対する誤った知識による偏見をもたず、差別をしません。また、該当者に対する行政や地域住民、そのほかの関係者による人権侵害についても、改善を求めていきます。

6. 私たちは啓発(国際理解教育)活動において、人権侵害を助長するような発言や行為は行いません。また、AARのイベントや講演会等の参加者の人権尊重に対する理解を深めていきます。

7. 私たちは支援者のプライバシーや権限を尊重し、個人情報は細心の注意をもって取り扱います。

AARのプライバシーポリシー

8. 私たちはセクシャルハラスメントやパワーハラスメントを人間の尊厳を傷つける行為として認識し、これを行いません。職員に対するハラスメントや人権トラブルがあった場合は、内部相談窓口や外部カウンセリング等の制度を活用し、対策にあたります。

9. 私たちは職員等の採用にあたって基本的人権を尊重し、本人の能力と適性を基準とした厳正かつ公平な選考を行います。

10. 私たちが活動時間内外でこの方針に反した行動をとった、あるいは関与したことが明らかになった場合、再発の防止に努め、しかるべき手続きを通じて改善に取り組みます。

2015年6月13日
AAR Japan [難民を助ける会]

社会的責任

AAR Japan[難民を助ける会]の社会的責任についての考え方

社会的責任といえば企業のCSR活動だけが注目されがちですが、持続可能な社会を実現するためには、企業だけではなくあらゆる組織に責任があり、NGOも例外ではありません。AARは、支援活動を通じて社会課題の解決を目指すだけでなく、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)との関わりの中で、組織としての社会的責任を果たしていきます。

2019年度の取り組み

ISO26000(社会的責任に関する手引き)

企業やNGOを含むあらゆる組織の社会的責任について定めた国際規格です。AAR理事長の堀江良彰は「ISO/SR国内委員会」(ISO26000の国内審議を行うための委員会)の国内委員を務め、その策定に深く携わりました。詳しくは以下のページをご覧ください。

ISO26000(社会的責任に関する手引き)という国際規格が発行しました

アカウンタビリティ・セルフチェック2021

国際協力NGOセンター(JANIC)が促進する、会の説明責任の取り組み状況を自己診断する「アカウンタビリティ・セルフチェック2021」を受けています。

PSEAH グローバル方針

1. 前文

性的搾取・虐待・ハラスメントからの保護(Protection from Sexual Exploitation and Abuse and Sexual Harassment、以下 PSEAH)は、人道支援および開発支援の分野において、組織の職員や関係者による性的搾取・虐待・ハラスメントから、人々を保護するために講じる対策を指す用語である1

性的搾取・虐待・ハラスメント(Sexual Exploitation, Abuse, and Harassment、以下 SEAH)は、基本的人権の侵害であり、またいかなる場合でも容認できない行為である。難民を助ける会[AAR Japan](以下AAR)は、紛争・自然災害・貧困などにより困難な状況に置かれている人々に必要な支援を届けることを使命とする人道・開発支援団体として、個々の能力、民族、信仰、性別、セクシュアリティ2、文化などの違いに関わらず、すべての人々が、性暴力やあらゆる権力の濫用から免れて生きる権利を有すると信じている。また、支援内容や支援対象を決めることができる私たちは、リスクにさらされている子どもや大人などコミュニティの人々に対し、権力の行使が可能な立場にあり、この力の不均衡がSEAH の発生リスクを高めることを認識しなければならない。

そのため、AARは、SEAHに対しゼロ・トレランス(不寛容)の姿勢で、すべての人々を尊厳と敬意を持って扱う義務を有する。また、AAR やパートナー団体で働くすべての職員は、私たちが関わるすべての人に対し、常に適切な行動を取り、そしてその行動に対して責任を負わなければならない。

この方針は、AAR職員およびパートナー団体、またAARの活動に関わるすべての人々に求められ、期待される行動を示すものである。

2. 適用範囲

この方針は、AARとの契約関係の有無にかかわらず、AARの活動に関わるすべての個人および組織に適用される。これには、職員、理事、ボランティア、インターン、コンサルタント、受託業者、調達業者、販売業者、訪問者(例:ジャーナリスト、研究者)、その他AARに関連する個人と組織が含まれる。この方針は、勤務時間中および勤務時間外に適用される。

3. 定義

3.1 性的搾取3
性的な目的のために、地位の脆弱性、権力格差または信頼を実際に濫用すること、またはその試みをいい、そこには他者の性的搾取による金銭的、社会的又は政治的な利得行為も含まれる。

3.2 性的虐待4
力の行使による、または不平等もしくは強制的な状況下における、身体の性的侵害行為またはその脅威をいう。

3.3 セクシャルハラスメント5
個人の尊厳を侵害する目的または効果を伴った、あらゆる形態の、性的性質を帯びた言語的、非言語的または身体的な望まれない行為をいう6

4. 基本方針7

SEAHから人々を保護し、AARの活動の誠実性を確保するために、以下の基本方針が遵守されなければならない。

4.1 SEAHは重大な不正行為に該当し、懲戒処分の対象となる8

4.2 子ども(18歳未満のすべての者)との性的行為は、各国の国内法で定められる成人年齢や性的同意年齢に関係なく禁止する。子どもの年齢の誤認は行為を正当化する理由にならない。

4.3 金銭、雇用、物品、サービスと引き換えに、性的関係を要求すること、屈辱や侮辱を与えること、搾取することを禁止する。これには、受益者が受け取るべき援助をそれらの引き換えとすることも含まれる。

4.4 受益者との性的行為やセックスワーカーとの性的行為(合法な場合を含む)は、本質的な力の不均衡に基づく搾取であり、AARの信頼性を損なう恐れがあるため、禁止する。

4.5 AAR職員および関係者は、他のAAR職員・関係者9によるSEAHについて懸念や疑念を持った場合は、確立された制度を通じて通報する責任を負う。

4.6 AAR職員および関係者は、SEAHを予防する環境を醸成、維持することが期待される。特に管理職は、安全な環境を維持するために、関係者間の開かれた議論や対話の文化の促進を通じて、SEAH の予防および対応の仕組みづくりを行う責任を負う。

5. PSEAHへのアプローチ

AARは、以下の条項に記載されている予防、通報、対処を通じてSEAHの予防および対策に取り組む。具体的な手順の例については、別添(手順ガイドライン)を参照のこと。手順書は、各事務所の必要性や人員体制などに応じて適宜変更、適応される。

6. 予防

AARは、健全な環境を醸成、強化、維持し、SEAHのリスクを最小限に抑えるために、すべてのAAR職員および関係者が厳格な行動基準を認識し、模範的な言動を身に着けるための取組を徹底する。

これには、AAR職員および関係者やコミュニティの人々のSEAHに関する意識の向上、安全な職員採用の実施、安全なプロジェクトとプログラムの構築、適切なメディア活用などが含まれるが、これらに限定されない。

7. 通報

7.1 AAR職員および関係者は、AAR職員または関係者によるSEAHの事実や疑惑を迅速に通報し、調査に協力する義務がある。SEAH の事実や疑惑を見聞きした者は、別添にある手順ガイドラインに沿って報告、相談、または苦情の申し立てをしなくてはならない。通報にあたっては、事案に該当すると思われる出来事の詳細な記録を作成することが望ましい。

7.2 AARは、虚偽または悪意のある通報が意図的になされることを許容しない。そのような通報は重大な不正行為に該当し、懲戒処分の対象となる。

8. 対処

8.1 SEAHの事実や疑惑が報告された場合には、手順ガイドラインに沿って、関係者全員の個人情報の保護を徹底しながら、報告された事案に迅速に対処する。

8.2 報告された事案が立証された場合は、就業規則やその他関連する方針に基づき、懲戒処分を含む厳重な処分を行い、再発防止に取り組む。

8.3 AARは、SEAH事案を相談・通報したことや調査に協力したことなどを理由に、相談者や通報者を不利益に取り扱うことをしない。

9. 関連する方針・文書

-AARのビジョン、ミッション、行動規範
-AARの人権方針

2021年10月29日
AAR Japan [難民を助ける会]

1 CHS Alliance, 2020, PSEAH Implementation Quick Reference Handbook, October, 2020, pp. 6
2 性自認や性的指向などからなる個々の性のあり方
3 性的搾取・虐待からの保護手段に関する国連事務総長告示(ST/SGB/2003/13)(2003年10月9日)
4 同上
5 国際援助分野における性的搾取・虐待及びセクシャルハラスメント対策のための ドナー・コミットメント(2018年10月)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000488695.pdf)
6 セクシャルハラスメントを受けた AAR 職員は、ハラスメントの防止に関する方針に記載されている手続きに従うものとする。セクシャルハラスメントを受けた職員は、方針に記載されている通報制度を利用して申し立てを行うことができる。
7 性的搾取・虐待からの保護手段に関する国連事務総長告示(ST/SGB/2003/13)を基に策定している。
8 懲戒処分は、その性質上、AARに雇用関係にある職員に適用される。理事、訪問者、調達業者、パートナー団体など雇用関係のないAAR関係者よってSEAHが行われた場合には、理事の解任、事業地への訪問の即時中止および将来的な訪問の禁止、調達業者との契約およびパートナーシップの解約等、AARとの関係性に基づいた措置の対象となる。
9 AAR関係者以外の人員によるSEAHの疑念や疑惑については、外部の通報制度を利用して、関連する苦情処理機関に対し通報することが奨励される。

子どものセーフガーディング グローバル方針

1. 前文

子どものセーフガーディング(Child Safeguarding、以下CS)とは、組織の役職員・関係者によって、また事業活動において、子どもにいかなる危害も及ぼさないよう、つまり虐待・搾取や危険のリスクにさらすことのないよう努めることであり、万一、活動を通じて子どもの安全にかかわる懸念が生じたときには、しかるべき関係機関に報告し、それを組織の責任として取り組むことである1

難民を助ける会[AAR Japan](以下AAR)は、紛争・自然災害・貧困などにより困難な状況に置かれている人々に必要な支援を届けることを使命とする人道・開発支援団体として、個々の能力、民族、信仰、性別、セクシュアリティ2、文化などの違いに関わらず、すべての子どもがあらゆる形態の暴力や虐待から保護される平等な権利を有することを認識している。貧困や不平等、子どもの権利を尊重しない文化的慣行、人道危機などは、子どもを虐待や暴力、搾取に対しより脆弱にする。また、子どもたちを保護する責務を負う者であっても、子どもたちに危害を加えることがあり得る。

従ってAARは、支援活動を通じて関わる、または影響を与えるすべての子どもが守られ、危険にさらされることのないよう、CSの導入と徹底に尽力する。この方針は、AAR職員およびパートナー団体、またAARの活動に関わるすべての人々に求められ、期待される行動を示すものである。

2. 適用範囲

この方針は、AARとの契約関係の有無にかかわらず、AARの活動に関わるすべての個人および組織に適用される。これには、職員、理事、ボランティア、インターン、コンサルタント、受託業者、調達業者、販売業者、訪問者(例:ジャーナリスト、研究者)、その他AARに関連する個人と組織が含まれる。この方針は、勤務時間中および勤務時間外に適用される。

3. 定義

3.1 子ども3:
各国が定める成人年齢の定義にかかわらず、18歳未満のすべての者。

3.2 子どものセーフガーディング4:
組織の役職員・関係者によって、また事業活動において、子どもにいかなる危害も及ぼさないよう、つまり虐待・搾取や危険のリスクにさらすことのないよう努めることであり、万一、活動を通じて子どもの安全にかかわる懸念が生じたときには、しかるべき関係機関に報告を行い、それを組織の責任として取り組むこと。

3.3 子どもの虐待5:
子どもに対する責任、あるいは子どもとの信頼や力関係を背景にした、子どもの健康、生存、発達、尊厳に、実際のまたは潜在的な危害をもたらす、故意のまたは過失によるあらゆる形態の行為のこと。これには、身体的、性的、心理的な虐待、ネグレクト・養育怠慢、子どもの性的または商業的搾取が含まれる。虐待は、家庭や施設、コミュニティ、信仰の場において、あるいはソーシャルメディアやインターネットを介して行われる可能性がある。また、虐待は、大人だけが加害者になるとは限らず、他の子どもによって行われる場合もある。

a. 身体的虐待:
加害者が大人か子どもかに関わらず、誰かの身体を実際に傷つけること、もしくは身体を傷つける可能性のある行為を行うこと。叩く、揺さぶる、有毒物を与える、溺れさせる、火傷させるなどが含まれるが、これらに限定されない。

b. 性的虐待:
子どもが理解していない、同意せざるを得ない状況下で、無理やり、もしくは、そそのかして子どもに性的行為をする、またはさせること。レイプ、オーラルセックス、マスターベーションやキス、押し付ける、触るといった性器の挿入を伴わない行為なども含まれるが、これらに限定されない。さらに、性的なものを見せる、子どもを使って性的な写真や画像を作成する、性的に不適切な振る舞いを子どもにさせることも含まれる。

c. 子どもの性的搾取:
金銭、ギフト、食料、住居、みせかけの愛情、社会的地位など、子どもやその家族が必要なものと引き換えに、子どもに性的な行為をさせること。多くは、子どもと親しくなる、信頼を得る、ドラッグやアルコールを与えるなどして、巧みに子どもを操り強要することで行われる。両者の間には、同意があったと主張されることがあるが、力関係が不均衡である場合には、被害者側には限られた選択肢しか与えられていないため、同意があったとは見なされない。

d. ネグレクト・養育怠慢:
子どもの身体的・精神的・道徳的発達に悪影響を及ぼしかねないほど、継続して子どもの基本的な要求を満たさないこと。子どもを適切に養育・監督せず危険から守らないこと、栄養のある十分な食事を与えないこと、安全に暮らしたり働く環境を提供しないこと、妊娠中の母親が薬品やアルコールを不適切に服用することやそれを容認すること、障がいのある子どもの世話を行わなかったり不適切に扱ったりすることなども含まれる。

e. 心理的虐待:
子どもの心理発達に影響を及ぼすほど、継続して心理的に不当に扱うこと。行動を制限する、貶める、辱める、いじめる (オンライン上のいじめも含む)、脅す、怖がらせる、差別する、ばかにする、またその他の非身体的な形態での攻撃的または拒絶的な扱いが含まれる。

f. 商業的搾取:
子どもの心身の健康、教育、モラル、社会的・情緒的発達を阻害するほど、他者の利益のために子どもを仕事やその他活動に従事させること。児童労働(義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている 18歳未満の危険で有害な労働をさす)などが含まれる。

以下、本ポリシーでは、ここで定義されたすべての形態の子どもの虐待を、「子どもの虐待」と、すべての形態の子どもの搾取を「子どもの搾取」という。

4. 基本方針

あらゆる形態の暴力や虐待、搾取から子どもを守り、AARの活動の信頼性を確保するために、以下の基本方針が遵守されなければならない。

4.1 子どもの虐待および搾取は重大な不正行為に該当し、懲戒処分の対象となる6

4.2 子ども(18歳未満)との性行為は、各国の国内法で定められる成人年齢や性的同意年齢に関係なく禁止する。子どもの年齢の誤認は行為を正当化する理由にならない。

4.3 AAR職員および関係者は、職務においても私生活においても、厳格な行動基準に基づいて子どもと接しなければならない。AAR職員および関係者には、この方針を理解し、遵守し、推進する責任がある。方針に違反する行為の予防や通報、適切な対処のためにできるすべての行動をとらなければならない。

4.4 AARは、CSの取り組みに子ども自身が参加することを徹底する。子どもが自分たちの権利について理解し、自分たちに対する行動に関し、何が適切で、何が容認できないものなのか、また問題や懸念が生じた場合にはどのように対処できるか知っておくようにする。

4.5 AAR職員や関係者が、他のAAR職員・関係者7による子どもの虐待や搾取に関する懸念や疑念を持った場合は、確立された制度を通じて AARに通報しなくてはならない。

4.6 AAR職員および関係者は、子どもの虐待や搾取を予防する環境を醸成、維持することが期待される。特に管理職は、安全な環境を維持するために、関係者間の開かれた議論や対話の文化の促進を通じて、子どもの虐待や搾取の予防および対応の仕組みづくりを行う責任を負う。

5. CSへのアプローチ

AARは、以下の条項に記載されている予防、通報、対処を通じて、子どもの虐待や搾取の予防および対策に取り組む。具体的な手順の例については、別添(手順ガイドライン)を参照のこと。手順書は、各事務所の必要性や人員体制などに応じて適宜変更、適応される。

6. 予防

AARは、健全な環境を醸成、強化、維持し、子どもの虐待や搾取のリスクを最小限に抑えるために、すべての AAR職員および関係者が厳格な行動基準を認識し、模範的な言動を身に着けるための取組を徹底する。これには、AAR職員および関係者やコミュニティの人々のCSに関する意識の向上、安全な職員採用の実施、安全なプログラムとプロジェクトの構築、適切なメディア活用などが含まれるが、これらに限定されない。

7. 通報

7.1 AAR職員および関係者は、AAR職員または関係者による子どもの虐待や搾取の事実や疑惑を迅速に通報し、調査に協力する義務がある。子どもの虐待や搾取の事実や疑惑を見聞きした者は、別添にある手順ガイドラインに沿って報告、相談、または苦情の申し立てをしなくてはならない。通報にあたっては、事案に該当すると思われる出来事の詳細な記録を作成することが望ましい。

7.2 AARは、虚偽または悪意のある通報が意図的になされることを許容しない。虚偽または悪意のある通報がなされたことが判明した際は、厳重に罰せられる。

8. 対処

8.1 子どもの虐待や搾取の事実や疑惑が報告された場合には、手順ガイドラインに沿って関係者全員の個人情報の保護を徹底しながら、報告された事案に迅速に対処する。

8.2 報告された事案が立証された場合は、就業規則やその他関連する方針に基づき、懲戒処分を含む厳重な処分を行い、再発防止に取り組む。

8.3 AARは、CS事案を相談・通報したことや調査に協力したことなどを理由に、相談者や通報者を不利益に取り扱うことをしない。

9. 関連する方針・文書

- AAR のビジョン、ミッション、行動規範
- AAR の人権方針

2021年10月29日
AAR Japan [難民を助ける会]

1 Keeping Children Safe, Understanding Child Safeguarding, 2014, pp.28./外務省(2020年)「子どもと若者のセーフガーディング・最低基準のためのガイド」
2 性自認や性的指向などからなる個々の性のあり方
3 U.N. Convention on the Rights of the Child 1989
4 Keeping Children Safe, 2014. Understanding Child Safeguarding, pp.28.
5 Keeping Children Safe, 2014. Understanding Child Safeguarding, pp.24-25./ 外務省(2020 年)「子どもと若者のセーフガーディング・最低基準のためのガイド」
6 懲戒処分は、その性質上、AARに雇用関係にある職員に適用される。理事、訪問者、調達業者、パートナー団体など雇用関係のないAAR関係者よって子どもの虐待が発生した場合には、理事の解任、事業地への訪問の即時中止および将来的な訪問の禁止、調達業者との契約およびパートナーシップの解約等、AARとの関係性に基づいた措置の対象となる。
7 AAR関係者以外の人員による子どもの虐待の疑念や疑惑がある場合には、外部の通報制度を利用して、関連する苦情処理機関に対し通報することが奨励される。


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