アフガニスタンでは、食糧危機、国内経済の破綻、地雷や不発弾による被害など、深刻な状況が続いています。さらに、2021年8月にタリバンによる暫定政権が樹立された後は、女性の社会参加が厳しく制限されています。このような状況下で、AAR Japan［難民を助ける会］の活動の中で活躍している女性たちについて、東京事務局の紺野誠二がご紹介します。

「地雷から子どもたちを守りたい」

AARは、人々が地雷や爆発物の被害に遭わないための教育「爆発物回避教育」が行える「地域指導員」を育成しています。地域指導員は講習会を開催して、子どもたちや住人に、地雷や爆発物から身を守る方法を伝えています。

先日、AARが開催した地域指導員育成講座の受講者に調査をしました。すると、地域指導員となった人の半数以上は自主的に自分の住む地域で講習会を開催していることが分かりました（2023年、第一次事業終了後の調査より）。

また、ある地域の医療クリニックはスタッフの大多数を女性が占めています。ここに勤務している地域指導員たちは、平均10回以上も講習会を開催していました。クリニックは地域医療の拠点として地域住民と関わることも多く、住民のWell-being（精神的、身体的、社会的に満ち足りた状態）を願っている結果だと思います。

2021年の政変以降、治安の悪化や情勢不安の影響で、多くの人が国内外に避難・移動しました。女性が指導員として活動することは安全上の懸念が大きくなっています。しかし、地域指導員の女性たちは「爆発物から地域の子どもたちを守りたい」、「失われる命をなくしたい」という志と、地域指導員として任命された責任感に基づいて活動しています。
厳しい環境下でも、自発的かつ持続的に活動している地域指導員が多数存在することを心強く思います。

「障がいがあっても学べる環境を」

AARは、障がいのある子どもも一緒に学べる環境づくり「インクルーシブ教育」にも取り組んでいます。
AARが開催するインクルーシブ教育に関する研修や点字・手話講習会を受講した教員は「インクルーシブ教育推進委員」として任命されます。調査によると、任命された教員の半数以上が、生徒（主に障がい児）に対して、啓発活動や点字・手話の講習会を複数回、自主的に実施しています。中でも、女子校の女性教員による講習会の継続実施頻度は平均10回以上と特に多かったです（2023年、第一次事業終了後の調査より）。

政変により女子教育も大きな制約を受けています。それでも女性委員から「障がい児も他の生徒と同様に学べることができる環境を作りたい」という言葉を聞いたときには、当会の障がい者支援の理念が伝わったのかなと感じました。

人を支援するということ

自分たちの生活だけでも非常に大変な中で、当会の事業に関わったアフガニスタンの人たち、特に女性たちは、なぜほかの人を支援するのか。その理由に「ほかの人を助けることによって自分の心の平安が保たれ、喜びを感じる」と語る女性が多くいました。この言葉を聞いたときに、私は長田弘の「世界はうつくしいと」という詩を思い出しました。一部を引用します。

一体、ニュースとよばれる日々の破片が、
わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。
あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。
シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。
何ひとつ永遠なんてなく、いつか
すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。

出典：長田弘著　2009年,みすず書房

今のアフガニスタンは残念ながら長田氏の言う「あざやかな毎日」からは程遠いかもしれません。多くの課題に直面しています。おそらくこの世界は「何ひとつ永遠なんてなく、いつかすべて塵にかえる」のでしょう。でも、アフガニスタンにはこんな素晴らしい人たち、特に女性たちがいます。ほかの人のために、そして自分のために、誠意を尽くされています。だから、私は「アフガニスタンはうつくしいと」と思っています。