ウクライナ人道支援の拠点として、AAR Japan[難民を助ける会]が昨年から活動しているモルドバは、東欧にある小さな国です。日本ではなかなか触れる機会がない同国の文化について、特産のモルドバワインに焦点を当てて、AARモルドバ駐在員(キシナウ事務所)の今野聖巳がご紹介します。
大盛況!年に1度のお祭り
秋晴れの気持ちいい陽気の10月の週末に、首都キシナウの目抜き通りには大勢の人が集まっていました。この日は年に1度のお祭り「ワイン・フェスティバル」の開催日。このフェスティバルは、モルドバで500年以上続くワインづくりをたたえ、秋の収穫を祝うお祭りとして毎年この時期に開かれています。
同国では近年、官民連携による世界市場に向けたプロモーションや品質向上を通じた「モルドバワイン」のブランディングに取り組んでおり、欧州内外で数々の賞を受賞しています。
この日のために、全国から100軒近くのワイナリーがキシナウに集まり、訪れた人々はテイスティングをして好みのワインを購入することができます。出展するワイナリーは大規模な有名ワイナリーから、家族経営の田舎の小さなワイナリーまで実にさまざまです。
ワイン通も唸るフレッシュな「にごりワイン」
中でも多くの人がこぞって購入していたのが、にごりのあるワイン。一見とてもワインには見えず、ジュースのような感じです。これは「トゥルブレル」と呼ばれ、濾過の工程を経ず、ほとんど熟成もさせない若いワインです。ルーマニア語で「にごった」という意味のtulbureが語源とか。製造工程と期間が短いため、通常のワインと比べて安価で、ぶどうの収穫期であるこの時期は各ワイナリーがフェスティバル用にたくさん用意しているようです。飲み口はとてもあっさりしていて、ついごくごく飲んでしまいます。食事にも合います。
ブースを回ってたくさんワインを買ったら、会場に設営されたテーブルでさっそく頂くことができます。大きなテーブルに座ると、必ず誰かと相席です。「どこから来たの?」「私たちのお気に入りのワイン、飲んでみる? 少しずつ交換しましょう」「このパイも食べてみて」
普段は物静かで控えめな印象のモルドバ人ですが、ワインを囲めばすぐに打ち解けられるから不思議です。私たちも地元のご家族とさまざまなワインを楽しみました。
ワインのお供に欠かせない料理もいろいろあって、中でも人気なのは串に刺した大きなバーベキューです。おしゃれなおつまみでしっぽりとワインを嗜むのもいいですが、豪快な食事とともに、みんなでワイワイ仲良くワインを楽しむのがモルドバ流なのかもしれません。
広い会場ではワインと料理の他にも地元の工芸品がたくさん売られており、ステージではフォーク音楽の生演奏やダンスも披露されます。まさに、モルドバの文化を一度に楽しむことができるお祭りです。
モルドバワインは近年、日本でもその知名度を上げています。比較的お手頃な値段で手に入るものも多いので、見かけた際にはぜひ手に取ってみてください!
今野 聖巳KONNO Satomiモルドバ事務所
大学院で国際法を専攻し、法律機関や大使館での勤務を経てAAR入職。2023年6月よりモルドバ事務所駐在。