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スタッフ日記[国際協力の現場から]

「ぼくは戦争というものが大のきらいです」:ご支援くださるご家族との手紙のやり取り

2024年12月24日

    先日、地雷・不発弾対策へのご寄付をいただいた際、次のようなメッセージが添えられていました。

    息子と相談して地雷対策への支援を決めました。数ある社会問題の中で、過去から現在に至るまで多くの犠牲と悲しみを生み続けてしまっている、地雷や不発弾を1日も早くこの世から無くしたいという息子の思いを託させてください。

    地雷対策を担当する私は、小学生のY君とそのご家族(仮にそう呼ぶことにします)に、次のような御礼のお手紙を送りました。

    とても悲しいし、残念なことですが、世界各地で戦争が続いていますね。その場所では、地雷や爆弾がたくさん使われていて、多くの方が亡くなられたり、傷ついたりしています。なんとかならないのかな、と思いますが、なかなか何ともならないですね。

    ただ、知っておいてほしいのは、戦争が起きている国で暮らしている人たちが別に悪い人でも何でもない、ということです。(中略)私はいろいろな人に会ってきましたが、いい人なんですよね。なのに、なんでこんな大変なことになってしまうのかな、と思います。なんなんでしょうね。よくわからないことだらけです。

    そうは言っても、嘆いたところで人々の生活がよくなるわけでもないです。地雷や不発弾のあるところで生きている人々の状況がよくなるわけでもありません。それであれば、できることをちょっとでもやるのがよいのかな、と思っています。何にもしないよりは何かした方がよいのかな、ということです。

    ご寄付をいただいて、御礼をお伝えする。いつもならここでやり取りが終わるのですが、Y君のご家族からは、私が書いたものよりも長く、そして心温まるお返事を頂戴しました。私以外のスタッフも読ませていただき、元気と勇気をもらうことができました。掲載の許可を得て、お手紙の内容を抜粋してご紹介させていただきます。

    手紙の上にサニーちゃんのぬいぐるみが置いてある

    Y君からのお手紙の抜粋

    紺野さんへ

    おいそがしい中お手紙をかいてくださりまことにありがとうございます。ぼくは戦争というものが大のきらいで、その中でも広島、長崎のげんばくや地雷などで人を苦しませる、悲しませることを少しでもなくしたいと思っています。

    いつか戦争がおわって世界中から戦争がなくなるような未来を築きあげたいと思っています。ありがとうございました。

    Y君のお母さんからのお手紙の抜粋

    紺野様

    このたびはお忙しいなか、お手紙をお送りくださりありがとうございました。紺野様の手紙、心より感銘を受けました。夫も、このお手紙は「息子にとって宝物になるね」と申しておりました。

    我が家はここ数年、夫婦で話し合い、その年ごとに必要と思われる団体に寄付をすることにしているのですが、今年は息子も小学5年生になり、初めてその会議の場につかせました。いくつかの団体を紹介して話し合ったところ、息子は迷わず貴団体の活動に寄付したいと申し出ました。

    私も幼い頃は息子と同じように、世界中の人々の心が入れ替われば、紛争、差別や暴力が無くなると信じていましたが、年を重ねるごとにそのような世界はかなわないと諦め、そんな気持ちの変化を「大人になった」と片付けていました。

    しかし、紺野様のお手紙を拝読し、根絶はできなくとも、一個人でやれることはあるはずだと、数十年ぶりにあの頃のような気持ちを取り戻させていただきました。「早急に」「一気に」とはいかずとも、今できる範囲でやれることをやるということに大きな意味があるということを学ばせていただきました。ありがとうございました。

    国際協力の仕事をしていると、人間とは不思議な存在だな、と思うことがよくあります。多くの人を傷つける紛争を始める人たちがいる一方で、紛争で困っている人を支援する人たちもいます。なぜ人は人を支援するのでしょう? 理由はいろいろあるのでしょうが、恐らく、人間はそのように生まれついたからだと思っています。そう考えるのが、一番すんなり行く気がします。

    地雷原で男性が撤去作業をしている

    地雷除去作業をする紺野=コソボ自治州(現 コソボ共和国)で2000年

    Y君は、お手紙にこう書いてくれました。「世界中から戦争がなくなるような未来を築きあげたいと思っています」。私はY君に、この仕事をしている上で大切にしていることを2つ伝えたいと思いました。

    まず、深く考えすぎないことです。起きている様々な事象にとらわれてしまうと、身動きが取れなくなってしまいます。でも、大切なのは、ほんのちょっとでもいいから、できることを淡々とやることだと思っています。厳しい現実は現実として受け止めながらも、些細なことでもいいので、できることに取り組んでいく。その「ほんのちょっと」の積み重ねが、世界を変えていくのではないか。

    そして、もうひとつが誠実であること、です。大きなことはできないかもしれませんが、誠実でありたいと思っています。人を支援する上で、それ以上に重要なことはない、と信じています。

    最後に、温かいご支援と、私たち職員に元気をくれたYくんご一家に、重ねて御礼申し上げます。

    AARは、地雷・不発弾対策をテーマにした冬募金キャンペーンを実施しています。ご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

    ご支援のお願い

    地雷・不発弾から人々を守るために
    冬募金へのご協力をお願いします。

    冬募金キャンペーンページを見る

    ※AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
    ご寄付は寄付金控除の対象となります。

    紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局

    AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は地雷問題やパキスタン事業を担当

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