突然ですが、下の写真。AARトルコ事務所の、出張先でのとある打ち合わせの場です。どこかに仔猫がいるの、わかります?
スーパーやカフェ、博物館、本屋さん……。今回のスタッフ日記では、あちこちネコだらけのトルコの街角から、トルコ駐在員の宮地佳那子がお伝えします。

あなたも打ち合わせに参加している気分?
トルコから、メルハバ(こんにちは)! この国の街角には、あらゆる場所にネコがいます。石像の上に屹立するネコ、博物館の展示物を遮るネコ、本屋の商品の上でくつろぐネコ。人間なら注意されそうな場所でも、彼らはまるで街の風景の一部のように自然に存在しています。カフェの椅子や公園のベンチも、人間のほうが遠慮して端に座ることもしばしばです。

目を疑うような場所に佇むネコたち
「ネコ愛」にあふれる街角
ネコたちがこんなにも身近な存在でいられるのは、街の人々の深い愛情ゆえ。この愛情、どこからくるのでしょうか。諸説ありますが、古くはトルコで多くの人が信仰するイスラム教の預言者ムハンマドがネコを飼っていたこと、また、彼がネコの自由な行動や人との共生を大切にしていたことが伝えられています。
最近では2004年、動物愛護に関する法律が制定され、動物への虐待を厳罰化したことも影響がありそうです。道行く人が立ち止まって撫でたり、エサをあげたり。通りには手作りの猫ハウスや給餌スペースが並び、防寒・防水が施された凝った作りのものも多く、爪とぎ付きの“好物件”まであります。
行政もネコには親切で、ある通りには、路面に餌を置くための専用の窪みが設けられていました。残念ながらその窪みにゴミが溜まってしまうこともありますが、そのすぐ脇にはちゃんとエサが撒かれています。ネコたちは、必要なものは使うし不要なものは避ける。文句や苦情を言うことはないので、行政も失敗を恐れず、猫への親切を試せるのかもしれません。

街角で見かけるかわいい猫ハウス
ネコをめぐる暮らしの一コマ
街には、高い場所から降りられなくなるネコも少なくありません。トルコに来て約2年、私は鳴き声が聞こえると、思わず街路樹を見上げる癖がつきました。これまでに3回、木の上で助けを求める猫に出会いました。消防車が出動したこともありますし、ある時は私自身が、頭を踏み台にされながらネコを救助したことも。肩を伝って無事に地上に降りたそのネコが、足元を一周して「ありがとう」というように鳴いた時、私は「幸せってこういうことなのか」と思い浸りました。
一方、もちろんネコが苦手な人もいて、ある日、事務所が入るアパートで「ネコに餌をあげている人がいる。虫がわくのが困る」という苦情が管理人に寄せられました。そこで、管理人が頭をひねり、結局、給餌場所を数メートル移動させることで解決したようです。

隣にいてくれるだけでほっこり
一方でイヌたちは?
最後に、イヌ派の方へ。ネコに比べて数は少ないものの、野良犬も通りを闊歩し、軒先で昼寝をし、生肉のかたまりをもらったり、夏には毛を刈ってもらったりしています。不妊手術も行政がしています。ただ最近、野良犬に噛まれた幼児が亡くなった事件もあり、野良犬の管理を厳格にする法律が可決されました。施設に収容される野良犬が増える可能性もありますが、今のところ、事務所周辺では大きな変化は見られません。でも、イヌはネコよりも、危うい立場にあるのは間違いないようです。

野良犬の今後は…

宮地 佳那子MIYACHI Kanakoトルコ事務所駐在員
女性の健康と権利の推進に取り組むNGOでの勤務、夜間大学院生を経て、2019年にAAR入職。ロヒンギャ難民支援に3年半従事した後、現職