東日本大震災から15年。AARは国内外で培った経験をもとに、災害支援を続けています。発災直後に現場に立った職員とその後の活動を支えたメンバーが、東日本大震災の経験をどのように後の支援へつなげてきたのかを振り返り、現在の課題、そしてこれからAARが災害支援の現場で果たすべき役割について語り合いました。
―それぞれが見た被災地の様子、注力した活動を教えてください
野際 2011年3月13日の深夜、宮城県多賀城市に到着した私たちの前に広がっていたのは、いくつもの大災害が重なったかのような壊滅的な光景でした。その大きな衝撃を、支援活動に転換しようと努めました。
海外での支援経験から、障がい者や高齢者へ支援が届きにくい点に危機感を抱き、宮城県の依頼を取り付け、県内の福祉施設の安否確認および被災状況の調査、避難所などへの物資提供を開始。その数は1カ月で200カ所を超えました。岩手・福島県にも拡大し、食料や衣類などの物資配付のほか、炊き出しや巡回診療、コンテナハウスの提供、仮設入居者への家電支援、福祉施設の修繕など、できることは何でもやろうと東北事務所長として必死に走り続けました。
2年間で支援物資だけでも18万の人々に届けることができました。国内外からの多大なご寄付と助成金、そして自ら被災しながら地域のために尽力された地元の方々の協力があってこそ成し得たことです。

安否確認で訪れた施設。手前が野際=宮城県気仙沼市で2011年3月21日
坂瀬 私は13年4月に東北事務所長になりました。いわゆる復興期で、被災者の状況は本当に人それぞれでした。
自宅を建て直して生活再建を始める方もいれば、大切な人を失い時が止まったままの方、原発事故の影響で故郷に戻れない方々。「誰一人取り残さない」ことを目標に、仮設住宅での健康維持や孤立を防ぐための交流支援「地域みんなで元気になろうプロジェクト」、仮設住宅への屋外遊具の設置、保育園への飲料水支援、原発事故の影響で外遊びができない子どもたちの野外活動支援「西会津ワクワク子ども塾」など多様な活動に取り組みました。
特に障がい福祉施設の再建に注力し、支援要請のあった100カ所以上を訪問。複雑な福祉制度に未曽有の被害を当てはめる難しさ、公的支援との役割分担の悩み、津波被災地域の土地活用問題……。課題に直面しながら必死に再建を目指す施設の方々、行政担当者と議論を重ね、施設の移転や修繕、設備の支援、授産品の開発や販路拡大など、それぞれの被害状況や復興度合いに合わせて支援を行いました。

AARが支援した施設の職員、利用者の皆さんと坂瀬(右)=岩手県大船渡市で2015年1月
生田目 2019年から国内災害支援を担当しています。東北では福島県を中心に震災の教訓を活かした地域防災の推進、原発事故の影響が続く地域での交流促進、関東での広域避難者ネットワークづくりに関わるとともに、20年の九州北部大雨や24年の能登半島地震のほか、台湾地震などの緊急支援の現場で活動しています。
―東北での経験は、現在の国内災害支援にどう活きていますか
野際 東日本大震災では障がい者の死亡率が住民全体の2倍に上りました。また、外国人には情報が届きづらく、必要な支援にたどり着きにくい状況も見られました。そうした方々をどう支えるかを常に意識し、試行錯誤を繰り返してきました。
こうしたAARの経験は支援のネットワークの中でも活かされています。2016年に発足した全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が、2025年3月に公開した「分野別被災者支援コーディネーションガイドライン<多様性配慮>」や、政府・NGO・企業・個人のネットワーク、ジャパン・プラットフォーム(JPF)による「原子力災害下における人道支援開始ガイド」の策定にも貢献することができました。
生田目 東北で築いた施設や当事者団体とのネットワークが、能登でも大きく活きました。
日本障害フォーラム(JDF)や、障がい者支援団体「ゆめ風基金」などと協働し、専門性を補完し合うことで、より迅速で包括的な支援が可能になっています。また、石川県七尾市の施設の方から「どうしていいか分からない時に、補助金の仕組みなどを教えてもらった。こちらの歩幅に合わせてくれる支援がありがたかった」と言っていただき、これまでの実績を活かせていると実感しました。

西会津ワクワク子ども塾でのそば打ち体験。右が生田目=福島県西会津町で2019年2月
坂瀬 昨年の大船渡市の山林火災では、東日本大震災時に支援した団体からすぐに支援要請が来ましたね。AARへの信頼が続いていたことがわかりました。
―現在の課題と今後AARが果たしていく役割は
野際 国内だけでなく、AARの活動国の多くでは、紛争が長期化し、災害が頻発化・激甚化しています。こうした恒常的かつ複合的な危機においても、障がい者など脆弱性の高い人々がより深刻な被害を受け、さらに復旧・復興からも取り残されていく「累積的被害」は大きな課題です。
生田目 AARは障がい者や外国人が繰り返し直面する課題の解消に向け、地域の担い手と協力しながらインクルーシブ防災を進めていきたいと考えています。国内災害分野で要配慮者支援の専門性と連携をリードする役割を担っていきます。
坂瀬 長期的な支援は「いつまで続けるのか」と言われることがあります。しかし、復興の歩みは一人ひとり異なり、誰もが同じ速度で進めるわけではありません。だからこそ、寄り添い続けることがAARの役割だと考えています。これからも、AARだからできる、きめ細やかな、そして現場に根差した支援を続けてまいります。
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東日本大震災から15年の節目にあたり、AAR は「あの日から15年 東日本大震災の教訓を未来へつなげる」と題したシンポジウムを開催します。野際と生田目が登壇します。ぜひ、会場・オンライン開催です。ぜひ、ご参加ください。
3/5(木)開催シンポジウム「あの日から15年 東日本大震災の教訓を未来へつなげる」 | イベント情報 | AAR Japan[難民を助ける会]:日本生まれの国際NGO



