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スタッフ日記[国際協力の現場から]

ソウルフード「ノン」を召し上がれ:タジキスタン

2021年10月29日

サラームアレークン(タジキスタンの公用語・タジク語でこんにちは)!
駐在員の堀尾麗華です。赴任地での楽しみの1つといえば食文化を知ること。中央アジアの主食、丸く平たいパン「ノン」は、スープやサラダにはもちろんのこと、パスタやオッシュと呼ばれるピラフなどの主食とともに食卓に並ぶほどの、まさにタジキスタンの人々にとっての「ソウルフード」。 その昔、現地職員が研修で訪日した際「ノンが見つからない!」とひと騒動が起きたとか。海外で日本米を恋しくなる私たちと同じ感覚でしょうか。そんな彼らが愛してやまない「ノン」の魅力とレシピを紹介します。

ノンが数十枚も積みあげられ、所狭しと販売されている

とある個人商店。山積みの「ノン」はありふれた光景

本棚に敷き詰められる本のように陳列棚にノンがならんでいる

スーパーでも、パン売り場の大部分を「ノン」が占めます


中央アジアで広く親しまれる「ノン」は、地域によって特徴があります。事業の関係でたびたび訪れた、首都ドゥシャンベから東へ約190kmに位置するラシュトの「ご当地ノン」は、何といってもそのサイズ。とにかく大きいです。

直径80cmはありそうなノンを囲む3人

大きなノンの上に、小さなノンを置いたり、肉の串焼きを置いたりと、食べるまではお皿としても重宝。駐在員の堀尾(左)と現地職員

ノンを食べるときは、手でちぎってみんなでシェアをします。食べきれなくても決して廃棄せず、家畜の餌にしたり、生活困窮者に渡したりします。生活困窮者は、そのノンを農家の人などに売って現金収入にするそう。約30年前、5年間ほど内戦下にあったタジキスタンでは、食糧難を経験した人も多く、ノンをはじめ食への敬意が随所で見られます。

石窯の内壁にノンが貼られ、焼かれている。パッと見は井戸のような釜

ノンを焼く「ダフドン」と呼ばれる釜

タジク料理に欠かせないパンにはノン以外にも、牛乳、小麦粉、水を混ぜた「クルチャ」、小麦粉とサラダ油を混ぜた「ファティール」があります。

2+2のスタンプが大きく写っている

ノンをデコレーションする「ムフバル」というスタンプもあります。「2+2」のような珍しい柄も。1つ約350円~450円

そんなタジキスタンの人々が愛してやまない「ノン」、「クルチャ」、「ファティール」を、現地職員と一緒に作ってみました。窯がなくても、オーブンで作れます。
レシピはこちらから。自宅で過ごす時間が多くなった今、ぜひ皆さんもご家庭で作られてみてはいかがでしょうか。

焼き上がったノンを笑顔で手にする堀尾 両隣に現地職員が笑顔で立っている

手作りしたノンやクルチャは、事務所の皆のランチとして、美味しくいただきました

ちなみに「ファティール」にはいくつか種類があり、今回作ったレシピはお茶と一緒にいただくお菓子用。タジキスタンの食事はお茶で始まり、お茶で終わります。紅茶や緑茶に砂糖をたっぷり加え、レモンを入れて飲むのがタジキスタン流。ミルクティーもよく飲まれ、現地職員が作ってくれました。なんと、砂糖ではなく少量の塩を加え、カップに注いだ後にバターを投入。そこにファティールをつけていただきました。(このミルクティー、バターを飲んでいるようで私の口には合いませんでした…。)

バターの浮くミルクティー

まるでバターを飲んでいるかのような、タジキスタン式ミルクティー


Let’s bake!

◆1. ノン◆2. クルチャ◆3. ファティール

色鮮やかなキュウリやトマトが並ぶおかずとノン

実際に作ったノンやファティール。買ってきたおかず(中央、シャシリクと呼ばれる肉の串焼き)とともに


◆1. ノン

ノンの材料4枚分 生地・・・ 人肌に温めたお湯 どんぶり1杯 食塩水 3ティースプーン サラダ油 3ティースプーン ドライイースト 3ティースプーン 小麦 1300グラム(予めふるっておく) 黄身 卵1個 ごま 適量(お好みで) 焼き上がり・・・ 水 数滴 サラダ油 少々 注意 食塩水の塩は、米粒1粒程度から調整
ボールに材料を入れている1. ボールにすべての材料を入れて混ぜる
まぁるく丸められた生地2. 丸くこねたら、約2時間生地を発酵させる。タジキスタンの人々は発酵を加速させるため、ボールを暖かい場所に置いたり、ブランケットでくるんだりする
4当分された生地3. 生地を4等分し丸くこねて、更に約20分発酵させる
平たくされた生地4. 生地の中央を平らにし、側面をピザ生地のように厚めにする。空気が逃げ切るように、フォークで平らな部分の生地に穴を数ヶ所あけて、あればスタンプでデコレーションする。艶出し用に、卵黄を表面に塗り、お好みでごまを適量振りかける
ノンをオーブンに入れている5. 200度に予熱したオーブンで、焼き色が付くまで焼く
焼き上がったノン6. 焼きあがったら、生地を柔らかくするため水をパッパとかけて、艶が出るようにサラダ油を薄く塗るのがタジキスタン流

◆2. クルチャ

クルチャの材料 12個分 人肌に温めたお湯 360ml ホットミルク 360ml 塩 5ティースプーン サラダ油 240ml ドライイースト 4ティースプーン 小麦粉 870g ベーキングパウダー 9g 卵黄 卵1個分 ごま 適量
ボールの中の材料を手で混ぜている1. ボールにお湯、ホットミルク、塩、サラダ油、ドライイーストの順番に加え混ぜる
丸くまるめられた生地2. 1に小麦粉、ベーキングパウダーの順に加え混ぜる
12等分された生地3. 生地を丸くこねたら、ノン同様、暖かい場所に置くかブランケットにくるめて、約2時間発酵させる
生地を平たくしている4. 生地を12等分し丸くこねて、更に約20分発酵させる
デコレーションをしている5. 生地の中央に空気が逃げ切るようにナイフで穴をあけ、あればくぼみの部分にスタンプでデコレーションする
ごまが振られている6. 艶をだすために、卵黄を表面に塗り、お好みでごまを適量振りかける
こんがりと焼き色のついたクルチャ7. 200度に予熱したオーブンで、焼き色が付くまで焼く

◆3. ファティール

ファティールの材料大皿2枚分  小麦粉 960g 人肌に温めたサラダ油 240ml ベーキングパウダー 18g 食塩水 大さじ7 注意 食塩水の塩加減は、少々(0.3~0.6g程度)から調整
堀尾と現地職員がボールに入れた材料を混ぜている1. ボールに小麦粉、ベーキングパウダー、サラダ油、食塩水の順番に加え混ぜる
丸く2等分された生地を手にする現地職員2. 生地を2等分する。2等分した生地を丸く平らにし、側面は厚みをつける
平たくされた生地3. 平らにした生地に、あればスタンプでデコレーションする
生地をオーブンに入れるところ4. 200度に予熱したオーブンで、焼き色が付くまで焼く
ほんのりと焼き色がついたファティール5. 焼きあがったら、表面に艶が出るよう少量のサラダ油を塗って完成

8名の男女が笑顔で昼食を囲み席についている

タジキスタン事務所のみんなと


堀尾 麗華HORIO Reikaタジキスタン事務所

在ボツワナ日本国大使館、ユニセフネパール事務所で勤務後、2020年11月にAARに入職。英国の大学院で障がいと開発の修士号取得。趣味はヨガ。兵庫県出身

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