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スタッフ日記[国際協力の現場から]

トルコで撒かれた助け合いの種

2023年1月11日

トルコには「ミヤザキ」と名前がついた公園や学校があることをご存知ですか?
2011年10月に発生したトルコ東部地震の際、緊急支援活動中に亡くなったAAR Japan[難民を助ける会]職員、宮崎淳さんの名前です。地震発生から11年が経った今でもトルコで語り継がれる宮崎さん。名前を冠した公園の1つに、トルコ駐在員の樋口正康と小島秀亮が訪れました。

宮崎さんの胸像が講演の中心にあり花で囲まれている

公園が全面完成した際には地元関係者が集まり記念式典が開かれた(2021年10月)


初めまして。トルコ事務所の樋口正康です。駐在員の小島秀亮さんと一緒に、地震の被災地であるワン県にあるミヤザキ森林公園を訪問しました。都合がつかずここに会いに来られなかったトルコチームの仲間の分も含め、改めてこのトルコの地でご活躍された宮崎さんに追悼の意を表したいと思って、ようやく行くことができました。

宮崎職員がトルコで被災した方々に物資を渡している

被災された方々に支援物資を手渡す宮崎さん(2011年)

私がAARに入職したのが2019年7月、宮崎さんのことを最初にお聞きしたのが、東京事務局での新人研修中でした。入職当時は、ウガンダ赴任が既に決まっていたので、公園のことまでは知らず、実際にトルコに来る日がやってくるとは全く思ってもいませんでした。

トルコの方々の心に残る宮崎さん

ミヤザキ森林公園は、当時AARの支援を受けた地元の皆さんが「日本から私たちを助けに来てくれた宮崎さんの功績を語り継ぎたい」と、宮崎さんの胸像や鳥居型のゲートなどを配置して整備してくださいました。

2021年に開かれた式典に出席したトルコ災害緊急事態対策庁のセゼル長官は「宮崎さんは慈悲の心の持ち主だった。私たちのために犠牲を払った人を決して忘れない」、ビルメズ県知事は「今年は東日本大震災と当地の地震から10年の節目の年。亡くなった方々を追悼し、将来の地震に備える機会にしたい」とそれぞれあいさつされました。

宮崎さんの名を冠した公園や学校は、被災地であるワン県だけでなく、最大都市イスタンブールや西部イズミルなどにもつくられています。

終わりなき人道支援活動。それでも…

ミヤザキ森林公園を訪れたのは、フライトの関係もあって薄暗い夕方になってしまいましたが、公園は大変整備が行き届いているのがわかりましたし、宮崎さんの銅像の周辺はライトアップされており、とても驚きました。トルコの方々の宮崎さんへの思いが体現されているようで嬉しくなりました。タクシー運転手の方も迷わず公園まで連れていってくれました。

宮崎の漢字がライトアップさえており横には宮崎さんの胸像がある

夜のミヤザキ森林公園(2022年12月10日)

その検診によって私たちの心に大きな跡を残した などが記されている

宮崎さんの功績をたたえる記念碑

宮崎さんの思い出で満たされたワンの町を小島さんと見て回り、出会った方に日本人だと話すと、宮崎さんのことを覚えてくれているのか、本当に親切にしてくれました。

くしくもトルコ東部地震、東日本大震災が起きた年、そして宮崎さんが亡くなれた年に、シリアで始まった紛争は残念ながら収束していません。今のトルコには、その紛争から逃れているシリア人難民が350万人います。また、シリア北西部も280万人の国内避難民で溢れています。私たちAARはトルコ国内のシリア人難民とシリアの国内避難民の支援を継続していることを宮崎さんに報告しました。

宮崎さんの銅像の前で樋口が手紙を読んでいる

宮崎さんの銅像の前で報告する樋口

最後に、私から宮崎さんに宛てた手紙の一部をご紹介します。

昨年、ロシアのウクライナ侵攻が発生し、ウクライナ難民がでており、日本にも避難民が来てます。一つの支援が終われば、また新たな人道支援の必要性が生まれ、終わりなき人道支援活動と終わりなき人道支援ニーズが巡る負の連鎖から抜け出せそうにないです。
でも一筋の光明が差そうとしてます。

というのも、宮崎さんは、災害によって困難な状況に陥ったトルコの人々を助け、寄り添う姿勢を最後まで貫かれた。その献身的な姿勢は、トルコの人々の心を励まし、相互扶助の道へと導かれたように思います。

今トルコ人スタッフがAARモルドバ事務所でウクライナ支援に携わり活躍しています。きっと、宮崎さんがトルコで撒いた種が育ち、日本から受けた支援を今度はトルコがウクライナに還元する、といった流れが生まれつつあると信じてます。

今後も我々は宮崎さんがこのトルコの地で、最後まで貫き通した献身的な姿勢や志を胸に、原点に帰って考えます。なぜわたしたちがAARという団体にたどり着き、なぜこの人道支援のミッションに携わり、そして、どうやって難民を救う輪を広げていくのかを。

宮崎さん本日はどうもありがとうございました。
今後のトルコでの活動を温かく見守ってください。

宮崎さんがテントの前で女性に袋に入っている物資を手渡している

テント生活を送るワン市郊外の住民に支援物資を届ける宮崎さん(2011年)

トルコ東部地震緊急支援に関する活動レポートはこちら

樋口 正康HIGUTI Masayasuトルコ事務所

米国の大学院では国際開発学を専攻。NGOや財団の駐在員としてカンボジアとウガンダで滞在した後、2019年にAAR入職。趣味はサッカーとバイク。

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