ロシアの軍事侵攻が続くウクライナ。でも、人々は力強く生き抜いています。国内避難民が滞在する同国西部テルノピリ州の修道院を訪問した時、ウクライナの家庭料理「ヴァレニキ」作りを手伝わせてもらいました。東京事務局の紺野誠二が報告します。
※AAR Japanは特定の宗教を背景とした団体ではありません。この事業は避難民支援を目的としたもので、宗教活動には一切関わっていません。
当会が支援している避難民が身を寄せるヤズロヴェッツ修道院を訪問したのは3月末。女性や子どもを中心に約50人が生活しています。
ジャガイモとチーズの水ギョーザ
ウクライナ料理と言えば何と言っても赤いスープのボルシチ。ですが、ボルシチだけでは子どもたちのお腹を満たせないので、もう一品作ります。この日はそれがヴァレニキでした。ウクライナの人気料理の一つで、日本風に言えば水ギョーザです。ただし、具材はギョーザとは違います。今日の具材はジャガイモとカッテージ・チーズの2種類。訪問した金曜日や、イースター(復活祭)前には肉を食べない習慣のようです。
修道院では一からヴァレニキを作ります。まず、小麦粉を練って皮を作ります。日本で市販されているギョーザの皮よりも黄色っぽい色で、厚みもあります。それを空き缶で丸く抜いて、ジャガイモをゆでてつぶしたものを包んでいきます。私の担当はヴァレニキの皮で具を包む作業。子どもの頃に実家でギョーザ作りを手伝っていましたので、手慣れたもの。と思っていたのですが、微妙に違います。調理場を預かるおばさまたちに、ご指導いただきました。
具はたっぷり、ぎゅっと包んで
「ゆでたときに中身がこぼれないように皮をしっかりくっつけないと」(おっしゃる通り)
「もっと具材をいっぱい詰めて。チーズもたっぷり入れないと」(難しいですね、思っているより)
「ほら、コーヒー飲みなさい」(あの、作業中なんですけど……)
「一週間ぐらい料理の手伝いをしていきなさい」(したいのはやまやまですが……)
調理場では、近所の女性や、修道院に避難してきた女性たちもヴァレニキ作りを手伝っています。さすがにみなさん手慣れたもの。どんどん出来上がります。その手元を見ていると、彼女たちにはそれぞれに料理をしたり、そのほかの家事をしたりといった日常生活があったのだと思い至りました。その生活が突然の軍事侵攻で奪われ、国内避難民になってしまった……。他の避難者と暮らしている中で、こうして他人の役に立つということは、心を支えるうえで重要な意味があるのかな、と思ったりします。本当は自分の故郷に帰って、慣れ親しんだキッチンで作業をしたいのでしょう。とても切ない気がします。
元気におかわりする子どもたち
かれこれ1時間半でヴァレニキづくりは終了。あとは大きな釜で茹で、食堂で提供しました。お味はなかなか。皮は日本の水ギョーザよりも歯ごたえがあり、もっちり、しっかりしています。具もしつこくなくて、食べやすいというのが率直な感想です。食事の後はお皿洗いもお手伝いしました。
学校が休みだったこともあって、たくさんの子どもたちがいました。元気に昼食を取って、おかわりをしていたのがとても印象的でした。
紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局
AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。