地雷禁止国際キャンペーン(International Campaign to Ban Landmines; ICBL)は11月下旬、「ランドマイン・モニターレポート2024」を発表しました。このレポートは世界各地の地雷対策や被害状況を網羅したもので、今年で26回目となります。今回報告された2023年の状況の中からポイントを3点紹介します。
1点目は対人地雷の使用で、アフリカ大陸での被害が増えていることです。対人地雷を使用した「国」はロシア、ウクライナ、イラン、朝鮮民主主義人民共和国の5カ国ですが、「非政府武装集団」は、コロンビア、インド、ミャンマー、パキスタン、パレスチナ(ガザ)、また、アフリカのサヘル地域の、ベニン、ブルキナファソ、カメルーン、コンゴ民主共和国、マリ、ナイジェリアで対人地雷を使用しています。
地雷などによる死傷者数の多い国の6位から9位までが、ナイジェリア(343人)、ブルキナファソ(308人)、マリ(174人)、エチオピア(106人)とアフリカ諸国で、これらはすべて「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(通称オタワ条約)の締約国です。
2点目は、地雷や爆発性残存物による死傷者数です。少なくとも55カ国・地域で、5,757人が死傷しており、死者数は1,983人、負傷者数3,663人、状態不明が111人です。被害者数に占める民間人は4,335人と全体の84%となっており、依然として多くの民間人が被害に遭っている状況が明らかになっています。
3点目は、地雷除去実績についてです。オタワ条約の締約国で2023年に除去活動がなされた面積は281.50平方キロメートル。その約59.5%がカンボジア(167.53平方キロメートル)で、2万3,946個もの対人地雷が除去されました。東京ドーム1個分の面積に平均6.7個の対人地雷が埋設されている計算です。カンボジアではここ数年、急速に地雷除去が進んでおり、除去面積も増加しています。これは非常に喜ばしいことです。2番目に除去面積が大きいのはクロアチア、3番目がアフガニスタンです。
増加しないオタワ条約締約国
最も憂慮すべきことは、オタワ条約の締約国が増えていないことでしょう。現在の締約国は164カ国ですが、2017年にパレスチナとスリランカが締約国になって以降、この数字は増えていません。特にアジア・太平洋地域では13カ国が未だに締約国になっておらず、マーシャル諸島は条約に署名したものの、批准には至っていません。
そもそも米国やロシア、中国といった超大国も締約国ではありません。とりわけロシアは多くの対人地雷を使用していますし、米国は先頃ウクライナに対人地雷を供与すると発表しました。地雷の除去活動や被害者支援の重要性は言うまでもありませんが、同時に締約国を増やしていくことも同様に重要であり、最優先の課題だと言えるでしょう。
紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局
AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。