南アジアのパキスタンは、ロシアに次いで世界で2番目に多くの対人地雷を貯蔵しているとみられていますが、その実情は一般に知られておらず、対策もほとんど行われていません。地雷をめぐる同国の実情について、AAR Japan[難民を助ける会]地雷対策担当の紺野誠二が報告します。

国内の深刻な地雷被害を訴えるSPADOの登壇者=2025年12月、イスラマバードで
ウクライナよりも多い地雷被害者数
パキスタンは、日本の約2倍の面積と人口を有し、南にインド洋、北にヒマラヤ山脈が広がる広大な国です。インド、アフガニスタン、イラン、中国と国境を接しており、インドとの紛争については日本でも報じられています。
地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が毎年発行する調査報告書「ランドマイン・モニター・レポート2025」によれば、パキスタンはロシアに次いで世界で2番目に多い600万個(推定)の対人地雷を貯蔵しています[1]。また、対人地雷の使用・製造・貯蔵などを禁ずる対人地雷禁止条約(オタワ条約)の締約国でもありません。
パキスタンの年間地雷被害者数については、上記報告書に記載がなく、その実態はわかりません。しかし同国で活動するNGO「SPADO」(Sustainable Peace and Development Organization)が、国内のメディアなどで報道された被害者数を集計しており、それによると、2024年の被害者数は341人(負傷者233人、死者108人)でした。これは、「ランドマイン・モニター・レポート」で年間被害者数が記載されている国々と比較すると、ミャンマー、シリア、アフガニスタンに次いで4番目に多く、戦時下のウクライナよりも被害者が多いといえます。SPADOのラザ・ハーン代表は、「報道されないケースなど集計できていない被害も多く、実際の数はもっと多いだろう」と話しています。
アフガニスタン・イランと国境を接し、地雷被害が多いバロチスタン州
地雷被害は国境付近に集中
パキスタンでの地雷被害の大多数は、同国西側の国境地帯で生じています。イラン・アフガニスタンと国境を接するバロチスタン州での2024年の被害者数は128人、アフガニスタンと国境を接しているハイバルパフトゥンハー州(以下、KP州)での被害は189人に上り、両州で90%以上の被害が発生しています。この地域では、反政府武装組織が活動しており、民生向け材料で作る「即席爆発装置」を含む、多くの地雷が使用されているとみられます。こうした爆弾は主に、警察などパキスタンの治安当局者を狙っていますが、民間人も巻き添えで被害に遭っており、前述したSPADOの報告では地雷被害者のうち、治安関係者は約4割、民間人は約6割でした。
この他、インドとの領有権をめぐって争っている東側のカシミール地方も、両国の対立が極めて長期に及んでいることから多くの地雷があるとみられます。過去に埋設された対人地雷は、降雨などによって移動している可能性もあり、特定することが非常に困難です。

報告会で、自身の地雷被害について語ったズライハさん(左)とファルハンさん
注目されず、進まない対策
昨年12月にSPADOが開催した地雷対策報告会では、KP州で地雷被害者の支援活動をしているNGOが、活動資金や医療設備が足りないことを強く訴えていました。現地では特に、水汲みに外出する女性や外で遊ぶ子どもの被害が多いそうです。また、牛の放牧中に被害に遭ったズライハさんと、薪を集めている最中に被害に遭ったファルハンさんも登壇し、二人とも、脚を失った自身の辛い経験を共有してくれていました。
一方、同報告会に参加した外国人は私一人だけで、パキスタンの地雷問題に対する、国際的な関心の低さを実感しました。同国の地雷対策に関する国際的な支援額は、2024年で約190万ドル、ウクライナのわずか0.8%。地雷対策を専門とする国際NGOも活動していません。さらに地雷被害が集中するバロチスタン州やKP州では、警察や軍などの政府機関と反政府武装組織が対立しており、このことも支援機関の活動を難しくしています。
パキスタンの地雷を巡る問題は国際的に見ても極めて深刻な状況で、国際社会が協力して対応すべきだと強く感じています。
ご支援のお願い
AARの地雷・不発弾対策支援への
ご協力をよろしくお願い申し上げます。
マンスリーサポーターのお申し込みはこちらから
AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
ご寄付は寄付金控除の対象となります。

紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局
AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。



