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スタッフ日記[国際協力の現場から]

神さま仏さまと出会う街:神戸

2023年5月25日

AAR Japan[難民を助ける会]は、関西・中四国エリアの皆さんとさらに連携を深めるための拠点として、神戸オフィス(出張所)を開設しました。観光スポットとして人気の北野異人館街にも程近く、近所を少し歩いただけで、狭いエリアに驚くほど多様な世界が広がっています。関西担当(神戸駐在)の中坪央暁がお伝えします。

六甲山の緑がまぶしい5月、引っ越し作業とオフィス設営を終えて、散策に出掛けてみました。まず、建物の間に見えた杜を目指して路地を抜けると、鎮座していたのは一宮神社。有名な生田神社を囲むように点在する一宮~八宮の8社のひとつとか。三宮の地名の由来もこの辺りにあるのでしょうか。

教会、神社など4軒の写真

神戸ハリストス正教会/一宮神社/神戸バプテスト教会/バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院(ジャイナ教)

小道を挟んで隣接するのは、青屋根の鐘塔がかわいい神戸ハリストス正教会。昨年来、国際社会の注目を集めるウクライナ、ロシアなどと同じ「東方正教会」がこんな身近にあるとは。坂道をちょっと上った神戸バプテスト教会では、併設する幼稚園から子どもたちの明るい声が聞こえます。

山本通を西に進んで、北野界隈の坂を南北に上ったり下りたりしているうちに、目に飛び込んできたのは、いかにもインドっぽい装飾を施した白い大理石のバグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院。日本で唯一のジャイナ教(!)寺院で、神戸在住のインド人コミュニティの拠りどころになっているそうです。

その先には六芒星を掲げたユダヤ教の神戸シナゴーグがあり、坂を下ると尖塔が美しい神戸ムスリムモスク、モダンな建物は神戸カトリック中央教会――まさに多文化(多宗教)都市という印象です。むしろ仏教の存在感が薄いなと思ったら、坂の途中に浄土宗の立派なお寺(浄福寺)がありました。もちろん他にも歴史ある寺院や神社、教会が存在します。

教会、寺院の写真

神戸ムスリムモスク/浄福寺(浄土宗)/神戸シナゴーグ(ユダヤ教)/カトリック神戸中央教会

これらの信仰の場は、いずれも神戸オフィスから徒歩数分の距離にあり、いろんな神さま仏さまがご近所にフツーにおられます。住んでいるだけで、きっと御加護や御利益がありそうです。さまざまな宗教(あるいは文化)が文字通り肩を寄せ合い、違和感なく共存している様を歩いて感じたのは新鮮な驚きでした。

とはいえ、この街の愛らしさは、よく使われるダイバーシティ(多様性)という語感とはちょっと違って、何と言うか、もっと身近で当たり前な風合いがあります。深掘りすれば複雑な背景もあるのでしょうが、1868年(慶応3年/明治元年)の神戸開港以来、この港湾都市が培ってきた国際色あふれる何でもありの風土に興味津々です。

神戸で暮らすのは2度目で、その時は海側の元町通でしたが、そこから転居した西宮で阪神大震災(1995年)を経験しました。私が当会に入職するずっと前の話ながら、AARは震災直後、神戸に臨時事務所を設けて支援活動に取り組んだ経緯があります。ですから、AARも私自身も縁あって神戸に戻って来たことになるでしょうか。

この街が体現する豊かな包摂性は、私たちAARが目指す世界ともマッチしているように感じます。当会は神戸を新たな拠点として、関西・中四国の皆さんと広くつながっていきたいと考えています。どうぞお気軽にお声掛けください。

中坪 央暁NAKATSUBO Hiroaki東京事務局兼関西担当(神戸駐在)

全国紙の海外特派員・編集デスクを経て、国際協力機構(JICA)の派遣でアジア・アフリカの紛争復興・平和構築の現場を継続取材。2017年AAR入職、バングラデシュ・コックスバザール駐在としてロヒンギャ難民支援に約2年間携わる。著書『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』、共著『緊急人道支援の世紀』、共訳『世界の先住民族~危機にたつ人びと』ほか。

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