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スタッフ紹介

「私がAARを選んだ理由」藤田 綾 これから国際協力の分野を目指す人たちへ(21)

2019年7月5日

    AAR Japan[難民を助ける会]のスタッフがどんな想いで国際協力の世界に飛び込んだのかを紹介するこのコーナー。第21回はウガンダ・ユンベ事務所駐在員の藤田綾です。開発コンサルタント時代の経験や難民支援の現場で感じていることを聞きました。(聞き手:東京事務局 中坪央暁)


    不条理な世界を変えたい

    -AARに入職するまでの経歴を教えてください

    大学で開発経済学を専攻し、開発コンサルティング企業で国際協力機構(JICA)の業務に4年間携わった後、AARに入りました。現在はアフリカ東部のウガンダに駐在して、同国北部の南スーダン難民居住地で主に教育分野の支援に取り組んでいます。
    国際協力に興味を持ったきっかけは、中学校の夏休みに家族旅行でカンボジアのアンコールワット遺跡に行った時の経験です。道端で片足のない幼い男の子が小銭の入った箱を置いて物乞いしていたんですね。親にやらされていたのだと思いますが、とても不条理なものを感じて、いつかこういう世界を変えたいと思うようになりました。

    グローバル教育を掲げる高校を卒業後、国際開発学を学べる大学に進学し、在学中に交換留学で米国に約1年間留学しました。4年生の時に国連食糧農業機関(FAO)のインターンとして2カ月間、パキスタンの辺地で生計向上支援のベースライン調査(事前調査)に取り組んだのですが、とても貧しい農村で、なぜか朝食は飼っている牛の乳で作ったバターと唐辛子だけなんです。チャパティにする小麦は現金収入を得るために全部売ってしまい、自分たちは食べられないということを知りました。私は開発プロジェクトを実施するだけでなく、開発が特に女性の福祉にもたらす変化、つまり彼女たちが幸福をどう実感したかを客観的に計測する指標を自分なりに考え、それを大学の卒業論文にも生かしました。

    FAOインターン時代にパキスタン・バロチスタン州クエッタのワークショップに参加した女性たちと(2013年8月)

    パキスタンで住民を集めてワークショップを開くと、男性だけが用意された席に座って、女性は後ろのほうで見ているだけなので、最初は異様に感じました。ブルカを被った女性たちに話を聞こうとしても、困惑した様子で黙り込んでしまい、「ご主人が話しても良いと許可してくれましたよ」と説得して、やっと口を開くような状況でした。女性は身内以外と話をしないように習慣付けられているんですね。こうした経験を通じて、世界には実に多様な文化的・社会的背景があることを改めて知るとともに、女性や子ども、障がい者など弱い立場にある人々、マイノリティの人々のために仕事がしたいという思いを強くしました。

    女性や障がい者支援を経験

    ―開発コンサルタントとして、どんな仕事を経験しましたか

    JICAが開発途上国で実施するプロジェクトを請け負う開発コンサルティング企業に入社し、主に技術移転に関わる研修や人材育成事業に携わりました。最初の2年間は、新人コンサルタントとして調査団の業務調整、研修管理などを担当して仕事の基本を学びました。短期出張でインドネシア、イラン、フィリピン、ウズベキスタンなどの国々を訪れました。

    長期業務として本格的に取り組んだのは、パキスタン・パンジャブ州のアパレル産業振興プロジェクトです。もともと世界有数の綿花の産地として知られる地域ですが、政策レベルのマーケティング戦略策定や生産技術の向上が求められていたほか、女性の雇用促進が大きな課題でした。

    アジア諸国では一般的に縫製業は女性が多いのですが、ここでは独特の社会規範や企業経営者の旧来的な考え方もあって、縫製工のうち女性は約25%に留まっていました。話を聞くと、多くの女性は「家が貧しいので自分が働かなくては」と思っているのに、どうすれば良いのか分からず、職業訓練を無料で受けられることも知らないのです。
    プロジェクトでは、半官半民で運営される職業訓練校3校で中核となる指導員を養成し、彼らが研修生を教える仕組みを整備するとともに、企業セミナーで女性の丁寧な仕事ぶりがアパレル産業に適していること、デザインの分野でも能力を発揮できることなどをアピールして、女性の積極的な雇用を働き掛けました。

    パキスタン・パンジャブ州ファイサラバードで実施したJICAプロジェクトの社会・ジェンダー調査で(2016年8月)

    このプロジェクトの一環として、障がい者の雇用促進に関する調査で出会った車いすの女性のことが強く印象に残っています。この30歳過ぎの女性は先天的な身体障がいがあり、家族が世間の目に触れないよう家の中に閉じ込めていたため、障がい者団体の訪問活動で見つけ出されるまで30年間、一度も外に出たことがなかったというのです。とてもショックでしたが、「今は同じように障がいのある仲間と楽しく活動している。仲間が生きる意味を教えてくれた。私も訪問活動を通じて、社会参加できずにいる他の障がい者を助けたい」と明るい表情で話してくれました。
    この出会いもあって、障がい者支援について真剣に考えるようになり、今も社会福祉士の資格取得を目指して大学の通信教育で勉強を続けています。

    パキスタン・ラホールの障がい当事者団体「マイルストーン」のメンバーと。 後列右から2人目が藤田(2018年6月)

    南スーダン難民支援の現場で

    ―AARを選んだ理由は? ウガンダではどんな活動をしていますか

    開発コンサルタントの業務は学ぶことが多かったのですが、女性や障がい者にもっと直接関わりたい、サポートを必要とする人々が社会福祉にアクセスできるようにする実践的なソーシャルワークの仕事がしたいという思いが募り、NGOの世界に飛び込みました。シリアなどの難民問題にも関心があり、特に「人間の安全保障」の視点に立って難民や障がい者支援に取り組むAARに魅力を感じて応募しました。

    2018年8月からウガンダ北部のユンベ事務所に駐在し、隣国の南スーダンから流入した難民居住地で、主に女性や障がい者の教育支援に取り組んでいるほか、かつて内戦があったウガンダ北部の地雷被害者を支援しています。ウガンダ政府が国境地域の開拓の原動力として難民を受け入れているため、彼らが暮らすエリアは「難民キャンプ」ではなく「難民居住地」と呼ばれ、AARが支援する41の小中学校では、地元ウガンダ人と南スーダン難民の子どもたちが一緒に学んでいます。

    AARが活動するウガンダ・ユンベ県のビディビディ難民居住地で南スーダン難民の女性から話を聞く(2019年1月)

    難民の女の子たちは、勉強がしたくても親から家事を命じられたり、十代半ばで結婚を強要されたりして、ドロップアウトしてしまうケースが男の子より多いのが実情です。生理が始まって学校を休んでしまうこともしばしばあります。

    私たちは教職員、難民・地域のリーダーの意識を変える啓発活動として、子どもに対する適切なガイダンスやカウンセリング手法の指導と併せて、セクハラや性暴力を禁止し、生理などの衛生管理を正しく理解してもらうことで、男女を問わず子どもたちの健やかな成長をコミュニティ全体で支える環境の醸成を図っています。心身あるいは知的障がいのある子どもも同様で、偏見によるいじめをなくし、障がいが恥ずかしいという親たちの意識を変え、教員の目が行き届きやすいように教室の前方の席に座らせるなど配慮して、障がい児の就学を皆で支えることを呼びかけています。

    しかし、世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受けて、ウガンダ政府が3月末に都市部のロックダウンと移動制限を発令し、私たち日本人駐在員は一時帰国を余儀なくされるなど、難民支援事業も多大な影響を受けています。国連機関とNGOが協力して政府に働きかけ、現在もAAR現地スタッフを通じた支援を継続していますが、「国連世界食糧計画(WFP)の食料配付が減ったことも相まって、難民たちのストレスが高まっている」「難民受け入れ地域に住むウガンダ人たちも感染や飢餓を恐れ、難民との関係が悪化している」など心理的な悪影響が生じているようなので、とても心配しています。

    人々と同じ目線に立つこと

    ―AARの現場で働いて思うことは

    人々が最も必要とする支援を迅速かつ直接届けるのが、AARのような国際協力NGOの仕事の醍醐味だと思います。人道支援の最前線にいるのが私たちNGOです。難民への緊急支援から移行期を経て、中長期的な開発フェーズに至る過程は段階的に区切れず、絶えず難民流入が続く一方で、難民の自律性も促していかなければならないなど、現場ではいろいろな事象が同時進行しています。そうした状況にウガンダ政府や国連機関、他のNGOと一緒に対応していくのはダイナミックな経験ですし、それと同時に難民一人ひとりに支援を届ける意識も大事にしなければなりません。

    この仕事に必要なのは、よく言われることですが、やはり”Cool Head but Warm Heart”ではないでしょうか。冷静な分析力、様々な支援分野の知見を持つとともに、支援する相手を熱く思いやる心が欠かせないと思います。国際協力は詰まるところ異文化交流なので、頭でっかちにならず、現場で人々と触れ合い、同じ目線で物事を理解することを大切にしたいと考えています。

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