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スタッフ日記[国際協力の現場から]

「痛み」を知るLGBTQ団体とともに:ミャンマー地震の現場で

2026年5月7日

2025年3月、巨大地震に襲われたミャンマー北西部のザガイン地域は、14世紀に王朝が栄えた歴史ある地です。しかし残念ながら、今は国内でも最も激しい紛争地域になっています。紛争と震災という「二重苦」に苦しむ被災者へのAARの支援活動に力を貸してくれたのは、社会から疎外されてきたLGBTQ(性的少数者)らでつくる現地の団体でした。自分たちの苦しみを差し置いて「地域のために役に立ちたい」と行動する姿に、この地の「希望」を見る思いがしました。

防災研修の様子

防災研修で講師を務める現地団体のLGBTQ当事者(奥右、緑色の服の人物)と、当会スタッフ(同左)=ザカイン市で2025年12月

東南アジア全体を見渡せば、タイのように同性婚を認めた国がある一方で、依然として保守的な価値観が支配する地域も多くあります。ミャンマーでも、性的マイノリティを取り巻く環境は極めて厳しく、例えば、障がい者について現地の人に聞くと「仏教の伝統的な解釈が強く残る地域では、障がいを『前世で積んだ悪いカルマの現れ(果報)』と考える。だから障がい者が家族にいるとあまり表に出したがらない」と言います。LGBTQも同様に「前世の罪の報い」や「道徳的な欠陥」と見なされがちです。

このためLGBTQの子どもは学校でいじめられ、家族からも疎まれ、教育や就職の機会も奪われるといいます。農村部では、そうした偏見や差別がさらに強い傾向が見られます。LGBTQの方々が抱く孤立感や疎外感は日本もミャンマーも同じかもしれません。ですが、日本より数段厳しい状況におかれている彼らが、今回被災者のために立ち上がり、この地域の中で最もAARの理念に共感し、最も熱心に「一緒に支援活動をしたい」と言ってくれました。

「痛み」を知るからこそ

この協力団体は、普段は差別により医療アクセスを阻まれているHIV/エイズ陽性者のケアを中心に活動しており、スタッフには仕草や言葉遣いが「女性らしい」男性もいます。今回の支援活動での業務内容は、配付物資の梱包や持ち運び、配付会場での案内、受益者のチェック作業などで、当会スタッフと全く同じ作業を何一つ変わらず精力的にこなしてくれました。

防災について説明する様子

パンフレットを見ながら受益者に防災について説明するLGBTQの団体のスタッフ(中央)=ザカイン市で2025年12月

当会スタッフも人道支援に従事するだけにLGBTQについて学び、理解していますが、中には戸惑うスタッフもいました。昨年秋から当会で働くザガイン出身の30歳代の女性スタッフは、LGBTQの当事者と仕事をするのは初めてで「最初は少し不安だったけど、みんな明るく、面白く、楽しい人たちだった」と明かしました。特に印象的だったのは、(女性的な言動を)人にからかわれても「全然大丈夫。それが何か問題なの、って聞き返すだけだから」と笑い飛ばす様子や、「あなたたちと一緒に、地域の役に立てて本当にうれしい」と共に汗を流す姿だったといいます。

被災地における「希望」に

LGBT協力団体のスタッフと協働作業

受益者に配布する防災パンフレットの仕分け作業をするLGBTQの協力団体のスタッフ(赤いシャツの人物)=ザカイン市で、2025年12月

当会震災支援チームの他のスタッフも「ミャンマーや地域を想う気持ちは同じ。本当にいい仲間だった」と口をそろえます。物資配付の現場でも「LGBTQの方々に抵抗感を示す人は全然いなかった」と話すのは、LGBTQの友人がいる当会のチームの30歳代男性スタッフ。「支援を必要とする人にとっては、支援する側の属性なんて関係ないでしょう」と言い切ります。

確かに、誰かを助けるという行為に資格や属性は関係なく、必要なのは、目の前の人々の苦しみに共感する想像力だけです。拒絶される痛み、社会の隅で苦しむ人々の痛みを知るLGBTQの方々だからこそ、被災者の苦難を思い、行動に移したのです。これこそが、泥濘と硝煙にまみれた被災地における希望であり、真に強靭なコミュニティを作る力になるのではないでしょうか。

復興への道のりはまだ長いですが、被災者や脆弱者、地域で暮らす人々、一人ひとりの人権を尊重、配慮しながら、支援を続けていきたいと思っています。今後もご協力をよろしくお願い申し上げます。

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山本 慶史YAMAMOTO Yoshinobuミャンマー・パアン事務所

全国紙、地方紙記者を経て2023年2月にAARに入職、同年3月からラオス・ビエンチャン事務所駐在。2025年6月からミャンマー駐在代表。

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