国際協力に関心を持ったきっかけを教えてください。
初めて国際社会に関心を持ったのは、大学生の時に読んだ小説がきっかけでした。アフリカやカンボジアが舞台の深淵を覗く小説を読み、差別や劣悪な環境、民族抗争の中でも、必死に生きる人々のことを知りました。いつか私も自分の目で世界を見つめて、できるなら自分の知識や技術を携えて実際に役に立つことができればなと漠然と感じていたのを覚えています。
入職するまでのキャリア・経験などについて教えてください。
大学を卒業後、専門学校にて障がい者・児の支援を目的に理学療法士の資格を取得しました。その後、国立病院機構や療育センターに勤務し、重症心身障がい者・児や神経筋疾患の方々へのケアに携わりました。「死」が身近な現場で患者さんやそのご家族と密に関わることで、障がいへの関わり方や認識、人生観、そして専門家として実践できることなど、心身ともに多くのことを学びました。また、今私が駐在員として障がい者・児支援に自信を持って携わることができているのは、多くの方々の助けがあったからこそと強く感じています。
なぜAARを選んだのでしょうか。
2019年度青年海外協力隊として中南米に派遣される予定だったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により渡航を断念した経緯があります。日本で理学療法士の仕事を続けていくことも考えましたが、途上国での障がい者・児支援をあきらめきれず、AARに入職しました。AARは従来の難民支援だけでなく、障がい者・児の社会参加や教育環境の整備にも注力しています。専門分野として、実際に現場で経験や技術を共有することができることに大変魅力を感じています。
入職前後のギャップやAARならではと感じることはありますか?
日本の医療現場で働いてきた私にとって、国際協力とは未知の世界でした。きっと職員は英語がペラペラで教養も高い人ばかり、本当に仕事についていけるのかなと不安な思いでした。実際に入職すると、もちろん皆さん優秀な方々ばかりですが、素人の私にも一から丁寧に教えていただき、今は自信を持って仕事に取り組めています。思い切って新しい世界に飛び込むことは勇気がいりますが、自分を成長させるよい機会だとも感じました。
また、現場で活動していると、他のNGOの職員の方や支援活動に取り組む方々から、「AARさんね!」とお話しをいただくことが多くあります。先人の方々が築いてきたAAR Japanとしての活動が、現地で根付いていることを強く感じます。そんな恵まれた環境の中で働けていることに誇りに思い、楽しく日々過ごしています。
現在の担当業務を教えてください。
ラオスのビエンチャン事務所にて、プロジェクトコーディネーターとして勤務しています。普段の業務内容は、事務所の管理・運営や事業地での活動準備を現地スタッフと共に行っています。月に1度は事務所から離れた事業地に出張し、実際に研修やワークショップを行ったり、地域の方々のお話を聞いたりします。私は理学療法士の資格を持っているので、学校に行けない障がいのある子どもや、外出が難しい障がい者の方に対して、身体の状態を確認し、必要に応じて病院やリハビリテーション施設に照会するなど、自分の特色を活かした業務も行っています。
仕事のやりがいなどを教えてください。
医療現場で働いていた時は、自分で課題や目的をもって障がいと向き合うことに専念していました。しかしAARでは、障がい者・児への支援活動だけではなく、事務所の運営や現地スタッフとのコミュニケーション、会計報告など、活動を支える地道な事務作業も駐在員としての大切な役割です。よい活動を継続するためには、何より職場が明るく楽しい場であることが不可欠だと思っています。現地スタッフと互いに意見を交え、尊重し合える職場になるよう心がけています。そして活動に関わる方々と皆で笑顔になれた時、とても達成感があります。
仕事をするうえで大切にしていることはありますか。
地域社会の文化や習慣など、その国の生活を尊重するように心がけています。食事や礼儀作法、働き方、時には民間療法など、日本人が驚く慣習がたくさんあります。地域の人々にとって「当たり前」なことを私たちの活動にもうまく取り入れ、新しいことに対しても参加しやすいような環境作りを意識しています。
これからNGO、AARで働きたいと考えている方へ
私は国際経験が豊富なわけでもなく、国際協力にずっと関わってきたわけではありません。自分の強みや専門性を信じて、自分にしかできない支援ができるように日々精進しています。もし、少しでも国際協力に興味があるなら、目標と自分の強みをしっかりと持ち、ぜひ思い切って挑戦してみてください。意外な経験や自分の得意なことが、国際協力の仕事の中で役立つことはたくさんあります。私たちの活動に参加してくれている方々の笑顔も、現地スタッフと笑って飲めるお酒も、メコン川に映える夕日も、何事にも代えられない人生の財産になると思います。AARでお会いできる日を楽しみにしております!
(2022年10月のインタビューより)