新潟県上越市(旧・高田市)の高田世界館は、現役で営業する「日本最古級の映画館」として知られ、この町のシンボルになっています。1911年 (明治44年) に芝居小屋として開業し、1916年 (大正5年) 以降は常設映画館として営業され、現在はNPO法人「街なか映画館再生委員会」が運営を続けています。歴史を刻んだ洋風建築は、国の登録有形文化財、近代化産業遺産に指定されています。
今年2月24日にウクライナ人道危機が始まった後、高田世界館では3月~4月の約1カ月間、ウクライナを舞台にした名作『ひまわり』(1970年)を上映し、その際に設置した募金箱に来場者から寄せられたご寄付全額をAAR Japan[難民を助ける会]に託してくださいました。
地元を盛り上げたいと首都圏からUターンした支配人、上野迪音(みちなり)さんは「世界館は映画ファン向けの作品だけではなく、現実世界のアクチュアルなものを広く発信する場でありたいと思っています。ウクライナ軍事侵攻が始まった時、小さな映画館なりに何かしなければと使命感を感じました」と話します。
上映時には、若い頃に『ひまわり』を観た年配の方から若い世代まで「たくさんの来場者があって、ちょっとすごかったですよ。皆さんが募金の呼びかけに応えてくれて、この事態に多くの方が心を痛め、ウクライナの人々に共感していることが伝わってきました」。AARを寄付先に選んでくださった理由は、「いちはやく隣国ポーランドやモルドバに入り、難民の一番身近なところで支援活動をしているのを知って、信頼できると思った」からだそうです。
故郷の街づくりの中核として奮闘しながら、国際情勢にも目を向け続ける上野さんの姿勢に感銘を受けました。高田世界館と地元の皆さまの温かいお気持ちは、確かな支援の形になってウクライナの人々に届いています。AARのウクライナ人道支援活動へのご協力に改めて御礼申し上げます。