トルコ南東部で2月に起きた大地震の被災地では、今なお多くの人々が厳しい環境での避難生活を余儀なくされています。AAR Japan[難民を助ける会]はこのほど、シリア難民の被災者を対象に住環境を改善する支援を開始しました。AAR支援チームが現場から報告します。
過酷な状況に置かれるシリア難民
大きな被害があったトルコ南東部アドゥヤマン県では、被災者の多くが政府が管理する公式の避難所ではなく、空き地などにできた「非公式キャンプ」で暮らしています。非公式キャンプでは食料や日用品などの支援物資が行き届かないだけでなく、水・衛生や住まいの環境も劣悪なところが多く、人々は不衛生かつ不自由な生活を強いられています。
100世帯以上のシリア難民が集まって暮らすアドゥヤマン県内の集落では、仮設コンテナさえ設置されず、人々は簡素なテントで避難生活を続けています。テント内の床は雑草が生えた土の上に薄いカーペットやビニール袋を敷いただけなので、夜になると地面からの冷気でテント内が冷やされ、雨が降ると泥が流れ込んでしまう状態でした。
被災者の中でもシリア難民は特に過酷な状況に置かれています。シリア難民がテントから仮設コンテナに移ったり、非公式キャンプから公式の避難所に移ったりできる見込みは低く、これから迎える夏が過ぎて、秋・冬になっても引き続きテントに取り残される可能性が高いとみられます。
157世帯のテントの床を整備
AARは現地協力団体と連携して、この集落で暮らすシリア難民157世帯を対象に、住環境を少しでも改善するための支援を実施。応急措置の床面を作るために、パレットと呼ばれる頑丈な「すのこ」1,600枚、それを固定するための砂35トン、パレットの上に敷くマット266枚を配付しました。また、家族だけでの作業が難しい世帯では、現地スタッフが搬入・設置をサポートしました。
夫と3人の子どもと暮らすヘイルさんは、AARからパレット12枚、マット3枚を受け取りました。地震で家が倒壊し、家族5人でテント暮らしを続けています。「雨が降るとテントの中に雨水や泥が入って来るので、とても困っていました。暖かくなってからは虫がたくさん入って来て、汚くて不快でした。AARの支援に本当に感謝しています」。
6人の子どもを抱える母親ナイメさんは、「以前にAARが支援に来てくれた時、これからも支援を続けてほしいとお願いしました。今回、本当にパレットを届けてくれて、AARを信頼してよかったと思いました」。傍らの子どもたちを見守りながら、ナイメさんは「子どもたちは学校に行けないし、トイレの数も不足しています。家族みんなで普通の家に住んで、当たり前だった元の生活に戻りたいといつも願っています」と付け加えました。
今回の配付では、感謝の声が寄せられる一方で、さらなる支援を求める声も多く聞かれました。トイレなど衛生環境の整備に加え、子どもや障がい者用おむつなどの衛生用品を提供する必要もあります。引き続き、AARのトルコ地震被災者支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。