活動レポート Report

「地雷対策、待ったなし」:国際地雷対策プログラム会合

2023年7月10日

「地雷対策、待ったなし」(MINE ACTION CANNOT WAIT)をスローガンに、第26回国際地雷対策プログラム責任者会合が6月22~23日、スイスのジュネーブで開催され、AAR Japan[難民を助ける会]も参加しました。ロシア軍のウクライナ軍事侵攻で多用されているドローン攻撃など、最新情勢が共有された会議の様子を東京事務局の紺野誠二が報告します。

第26回国際地雷対策プログラム責任者会合会議場の写真。

第26回国際地雷対策プログラム責任者会合=スイス・ジュネーブで2023年6月23日

ドローンの時代

この国際会議は、世界中で地雷の危険と隣り合わせに暮らす人々、地雷の被害に遭った人々により良い支援を行うために、地雷対策に携わる実務者が年1回集まって情報交換や議論を行う大切な機会です。

今回の会合やサイドイベントで最も注目を浴びたテーマのひとつが、ドローン(無人航空機)です。ロシア軍によるウクライナ侵攻でも、ドローンによる攻撃が各地で行われ、被害が相次いでいます。

この活動は2018年頃から話題にのぼるようになり、現在では本格的に活用されるようになりました。特にウクライナでは積極的に用いられています。あるセッションでドローンによる調査活動の動画を見ましたが、ロシア軍が埋設した地雷のパターンがはっきりと分かりました。

「5年前はピカピカのおもちゃにすぎなかったドローンが、今や立派に役割を果たしている」という司会者の表現がぴったりです。参加者からは「山間の地雷原でも使えるのか」「地雷原はジャングルが多いのでどうだろうか」といった質問がありました。まだまだ開発や実証実験が必要ですが、既にドローンは地雷対策で欠かせない役割を担っています。

会合で紹介されたスライド。左がドローン、右が除去犬の写真

会合で紹介された新しい技術による地雷除去や犬を使った地雷探知

複雑化する地雷・不発弾対策

私(紺野)が地雷対策に関わり始めた20数年前、地雷対策で考えることは極めて単純でした。「埋まっている地雷を取り除く」「被害に遭わないように教育する」「条約で使用や生産・貯蔵を禁止し、既に持っている地雷は廃棄する」「地雷被害者を支援する」というものでした。この原則は今も変わっていませんが、その原則に付随して考えなければいけない要素が増えています。

例えば、地雷の難民・国内避難民への影響、地雷を取り除いた土地の所有権、除去作業が終わった場所で事故が起きた場合の責任の所在、などです。これは地雷問題が地雷対策の枠だけに収まらず、他の人道や開発課題と密接にリンクしていることを意味します。

地雷対策で一番大切なもの

会議の休憩時間中に他の参加者から情報を集めたり、アドバイスをもらったりすることも国際会議に参加するメリットです。世界各地の地域専門家に会うと、「おお、久しぶりだね」という挨拶から始まって、AARが活動する国・地域の現状や支援の課題を教えてもらいます。

当会が現地事務所を置くアフガニスタンからの参加者は、女性の社会参加が全面的に阻害されている訳ではなく、女性職員が勤務を続けたり、女子大学生が学んだりしている内情を話してくれました。また、AAR の活動国での反政府勢力による地雷使用状況、政府の地雷対策の話も聞くことができました。

地雷対策には資金、人材、技術が必要です。それを集めるのに必死になり、私たちは時々大切なことを忘れてしまいます。それは「人の心」の問題です。「地雷の被害に遭った人は、社会の差別・偏見にさらされますが、それ以上に難解なのは実は自分自身。自信を失ったり前向きになれなかったり、自分自身を偏見の目で見てしまう状況に陥ります」とのコメントがありました。そのような人たちに何が必要なのか。もちろん経済面の支援は必要ですが、被害にあった当事者一人ひとりの声を聴くことが何より大切だと私は思います。

今回の会議で地雷の被害者でもあるイギリス人のジャーナリストの言葉が耳に残ります。「外科手術やリハビリ、車いす、職業訓練も必要です。今はその次の、将来を見据えた支援が欠かせません。でも、重要なのは愛。愛です」。支援の基本として「愛」が重要であることを思い出させてくれる会合になりました。

紺野 誠二東京事務局

AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。

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