AAR Japan[難民を助ける会]の創設者・相馬雪香(1912~2008年)の両親である政治家、尾崎行雄・テオドラ英子夫妻ゆかりの洋館「旧尾崎テオドラ邸」(東京都世田谷区豪徳寺)が、著名な漫画家有志らの尽力で取り壊しの危機を乗り越え、ギャラリーや喫茶室を備えた新たな施設として3月1日にオープンします。2月8日のメディア向け公開に際して、AARは尾崎一家の写真を額にして寄贈しました。
地元で「水色の洋館」として親しまれてきた同邸は2020年夏、土地売却に伴って解体・撤去される予定でしたが、代表作『天才柳沢教授の生活』で知られる区内在住の漫画家・山下和美さん、『薔薇はシュラバで生まれる』の笹生那実さんらが中心となって、漫画家仲間や地域住民、行政を巻き込んだ保存運動を展開。クラウドファンディングなどで土地・建物の購入費や維持管理費を調達し、歴史ある建物の有効活用を目指して改修工事を進めてきました。
新たにオープンする旧尾崎テオドラ邸は、1階に「喫茶室」とオリジナルグッズを販売する「ショップ」、2階に漫画の作品などを展⽰する「ギャラリー」が設けられ、ギャラリーとショップを合わせて「テオドラハウス」と名付けられました。杉板の外壁、大きな窓、手すり付き階段など、明治の洋館のレトロな趣をそのまま生かしています。
8日のお披露目には山下さん、笹生さんをはじめ保存に協力した人気漫画家の皆さんが勢揃いし、地元の建築家・⽥野倉徹也さんが建物について解説。山下さんは会見で「このかわいらしい洋館を何とか保存したいと考え、多くの皆さんの協力でここまで来ることができた。地域に親しまれる館にしていきたい」とあいさつし、AARは雪香の幼少期(大正6年頃)に撮影された尾崎一家の額入り写真をお贈りしました。
旧尾崎邸は明治政府の高級官僚だった尾崎三良男爵が明治21年(1888年)頃、英国留学中に現地で結婚(後に離婚)して、ロンドンに残してきた娘のテオドラ英子(雪香の母)が単身来日したのを機に、麻布区(港区)六本木に建てたとされ、後に豪徳寺に移築されました。
日本の議会政治の黎明期から戦後まで活躍し、「憲政の父」と呼ばれる尾崎行雄(咢堂/1858~1954年)はテオドラと結婚。三女として生まれた雪香は日英同時通訳者の先駆けとなり、1979年にAARの前身である「インドシナ難民を助ける会」を創設しました。
相馬雪香、そしてAARゆかりの「旧尾崎テオドラ邸」にぜひお立ち寄りください。
出席した漫画家の皆さん
⼭下和美さん、笹⽣那実さん、新⽥たつおさん、三⽥紀房さん、⾼橋留美⼦さん、福本伸⾏さん、⾼橋のぼるさん、ちばてつやさん、秋本治さん、永井豪さん、大和和紀さん(順不同)