AARは2月18日、13日深夜に東北地方で発生した地震(福島県沖地震/M7.3)の被害を受けた宮城、福島両県内の障がい福祉施設に飲料水や非常食、家電製品などの支援物資を届けました。東日本大震災(2011年3月11日)から間もなく10年を迎える被災地では、今回の最大震度6強の地震で負傷者185人、全半壊を含む建物の損壊 2,649件(19日現在)のほか、土砂崩れや断水など大きな被害が発生しました。被災された方々に改めてお見舞い申し上げます。
「東日本大震災を思い出した」
「激しい揺れに10年前のことが頭をよぎりました。また津波が来るんじゃないかと」。震度6弱を記録した宮城県山元町にある(特活)ポラリスの田口ひろみ代表理事は話します。ポラリスは知的・精神・発達障がいがある約20人が、地元産イチゴの出荷の手伝い、清掃作業、コーヒーの自家焙煎、イラスト制作などを通じて、働きながら地域で暮らす拠点になっています。13日の地震で事務所・作業場を兼ねた本棟の外壁・内壁に無数の亀裂が生じ、ドアが開かなくなったほか、デスクトップPCなどの備品が壊れました。翌14日の日曜日に職員が総出で滅茶苦茶になった室内を片付け、外壁にテープを貼って応急処置をしたうえで、週明けに活動を再開しました。
田口さんは「しばらく余震が続くと言われていて、利用者の安全のためにも建物全体を修繕する必要がありますが、本格的な工事には数百万円かかりそうです」と頭を抱えます。AARは18日、被害状況を確認するとともに、飲料水・非常食、給水タンク、防災リュックなどをお届けしました。
新築した事業所の壁にひび割れ
震度6強の揺れに見舞われた福島県相馬市では、常磐自動車道の道路脇の斜面が崩れて17日まで通行止めになったほか、市内各所の墓地で墓石が倒れるなどの被害が出ました。障がい者福祉作業所「工房もくもく」は、2019年10月の台風19号など2度の浸水被害を受けた後、施設が手狭になったことや新型コロナウイルスの影響もあって郊外への移転を決め、今月2日に新しい事業所に引っ越したばかりでしたが、今回の地震で新築した施設の壁にひび割れが生じてしまいました。
工房では知的・精神・身体障がいのある19人が紙漉き、機織り、布製品のシルク印刷などの仕事に取り組んでいます。佐藤定広所長は「翌朝すぐに全員の安否を確認し、職員が施設内を片付けて週明けに何とか再開しました。広々とした新しい工房に移って皆が喜んでいた矢先に大きな地震が起きて、ショックでお休みしている利用者もいます」と話します。「夜中に家が倒れるかと思うほどの揺れでした。10年前のトラウマからやっと解放されたのに、再び恐怖を感じている人もいて心配です」。佐藤所長の自宅も屋根瓦が崩れてビニールシートで応急処置をしたほか、10年前に倒壊した墓石がまた倒れるなど、大変な状況にあっても施設の運営を続けています。地震で工房の電子レンジが壊れたため、AARが新品を調達して届けました。
また、福島県南相馬市のNPO法人あさがおでは、地元の道の駅などで販売する「おこわ」、給食用の弁当を調理する厨房のオーブンや揚げ物用フライヤー、製氷機が破損しました。統括・管理者を務める荒幸弘さんは「障がいのある利用者さんたちの工賃(賃金)を確保するために、地震の翌朝も滅茶苦茶になった作業所を片付けながら、納品が決まっているおこわなどの調理をしました」と苦労を語ります。
今回の地震では幸い死者はなく、大きな建物の倒壊など目に見える被害は少なかったものの、地域で活動する障がい福祉施設の多くが困難に直面しています。AARは2011年の東日本大震災の被災地で、発生直後の緊急期から復旧・復興期まで中長期的視野に立って支援事業を続けてきたほか、2019年の台風19号で甚大な被害を受けた地域でも支援活動を実施しました。今回訪問したのは、いずれも過去の支援を通じてご縁があった福祉施設です。AARは引き続き被災地に寄り添い、復興を後押しする活動を続けてまいります。皆さまの温かいご支援をお願い申し上げます。