AAR Japan[難民を助ける会]は、能登半島地震で被災した石川県内の障がい福祉施設への支援を続けています。発生直後に食料や水、簡易トイレなどの支援物資を届けただけでなく、4カ月経った現在は、施設利用者の皆さんが働く作業所が再開されるように、資機材の提供や施設修繕などの支援を行っています。現地から報告します。
「地震の後すぐにAARから支援が届くという連絡がありました。本当にうれしくて、やったぞ!と叫びそうになりましたよ」。そう話すのは、石川県七尾市の障がい福祉サービス事業所「ゆうの丘」の本田雄志理事長(80歳)。近隣地域で暮らす10代から70代の知的・精神障がい者約30人が働く作業所です。
「AARの皆さんが食料や飲料水、ウェットタオル、掃除道具などを届けてくれたのは、震災発生2日後の1月3日。その時点では行政からの支援はまだ何もありませんでした。翌4日から職員総出で利用者の安否確認を始めましたが、利用者のうち6人はひとり暮らし。水の出ないトイレを使い続けるものですから、大変なことになっていました。水や食料だけでなく、簡易トイレは本当に助かりましたね」。
断水が続き、施設の運営再開はすぐには難しいと考えていたものの、利用者の精神状態が日々悪化していたため急きょ10日に活動再開しました。「利用者を一軒一軒訪ねると、『早く仲間に会いたい』『仕事がしたい』と不安そうでした。ひとり暮らしの女性からは毎日のように『怖い怖い』と電話がかかっていました」。けれども、運営が再開され、仲間と一緒に仕事をするうちに、皆が笑顔を取り戻していったと言います。
こうした作業所では、仕事をした対価として「工賃」が支払われます。本田理事長は「この3年ほどはコロナ禍で仕事が減り、さらに今回の震災で主要な収入源のひとつだった観光地の公園清掃がなくなってしまいました。利用者の皆さんに支払う工賃も減額せざるを得ず、障がい者年金と合わせても、ひとり暮らしの利用者は生活が厳しいはずです」と話します。
ゆうの丘では、自動車部品や菓子箱の組み立て、アルミ缶のプレス作業、クッキーなどの菓子や乾燥シイタケの製造が大きな収入源でしたが、地震で作業場の建物や機材が壊れ、一部の作業ができなくなっています。AARは菓子の生地を練るミキサーを提供したほか、地面が浮き上がってしまったプレス作業場の補修、倒壊したシイタケ乾燥小屋の再建を進めています。いつも乾燥シイタケの作業を楽しみにしているという男性は、「しいたけ作りの再開が楽しみ」と笑顔を見せてくれました。
ゆうの丘が新たな収入源として期待するのは、公共施設のトイレ清掃の仕事です。石川県では、県が運営する施設の清掃を障がい者の雇用につなげる動きが始まっており、本田さん自身も県が主催する清掃技術の研修会に参加しています。「トイレ清掃は健常者と同じ賃金で仕事を請け負うことができます。障がいがあるからといって甘えるのではなく、しっかりとプロの仕事ができるように技術を身に付けてもらいます」と強調します。
「地震という大きな試練に直面して、私たちは本当に大変な思いをしています。生活は大きく変わってしまいましたが、悪いことばかりではありません。問題を一つひとつ解決していき、自分たちは乗り越えられるんだという『自信』につながっていくと考えています」。そして、施設再建を支えるAARに感謝の気持ちを伝えてくれました。
AARは今後も障がい福祉施設への支援を通じて、被災地で暮らす障がい者の皆さんを支えてまいります。引き続き、AARの能登半島地震支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。
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