台湾東部地震(4月3日発生)の被災地・花蓮県では、大きな打撃を受けた観光業が再開する目途が立っておらず、仕事を失った被災者の生計支援が課題になっています。AAR Japan[難民を助ける会]が現地協力団体「基督教芥菜種會」(The Mustard Seed Mission:MSM/本部:台北市)と連携して取り組む支援活動の現状を報告します。
大理石の断崖が続く台湾随一の観光名所「太魯閣渓谷」は震災以来、客足が途絶えて宿泊施設の稼働率が数パーセントに落ち込み、多くのホテルや土産物店が休業を余儀なくされるなど、地域経済に深刻な影響を及ぼしています。被災者の避難所になっている花蓮市内のMSM活動センターでは、観光関連業に従事していた人たちに能力を生かした仕事をしてもらい、賃金を支払う「Cash for Work」方式の支援が実施されています。
具体的には、観光ホテルやレストランで働いていた料理人に避難所の食事を調理してもらったり、運転手だった人に支援物資の仕分けや輸送を担ってもらったりします。ホテルの清掃係だった女性たちはクッキー、月餅などのお菓子作りに取り組み、MSMが地元企業に販売して収益を上げています。この地域の先住民族タロコの人たちが含まれ、職業訓練プログラムとして伝統工芸の竹籠づくりも行われており、充分な現金収入にはならないまでも、生活再建への前向きな気持ちを途切れさせない意味合いもあります。
MSMの避難所に滞在する独り暮らしの女性(70歳)は、地震で損壊した自宅マンションが取り壊されることになり、「ここで親切にしてもらっていますが、ずっといる訳にはいかないので、行政が斡旋してくれるアパートに移る予定です。夫は亡くなっているので、2年くらい様子を見て、兄弟がいる故郷の屏東県に帰るかも知れません」と話します。1月の能登半島地震に際して台湾から多くの寄付が寄せられ、今回は日本から「恩返し」していることを伝えると、女性はしきりにうなずいていました。
教訓踏まえて「次」に備える
花蓮県の地形は険しい山並みが海岸近くまで迫っているのが特色で、アクセスしにくい山間部の集落への支援も重要です。MSMは発生直後から緊急支援物資(食料・衛生用品など)を届けていますが、現在は主に民家の貯水タンク、トイレといった水回り設備の修理を急いでいます。支援活動に入った同県壽豊郷水璉村では、山から水を引いて生活用水に使っていましたが、地震の影響で水が枯れてしまい、新しい水源を探す必要に迫られるなど、復興の過程で次々に問題が生じているのが実情です。
先住民族の人々はキリスト教徒が多く、台湾最大のキリスト教会派の小さな教会を司る長老は、「この辺りの建物はレンガを積み上げただけなので、地震で壁が崩れて天井のパネルも抜け落ち、とても恐ろしい思いをしました。今回のことを教訓にして、MSMの支援で修理する時には、鉄柱を入れるなど改善しないといけませんね」。生活再建の支援と併行して、次の事態に備える防災・減災の取り組みも強く意識されています。
台湾東部地震に際しては、AARに多くのご寄付が寄せられ、能登半島地震に続いて日本・台湾双方の市民レベルのきずなが改めて確認されました。皆さまのお気持ちは花蓮の被災者に確実に届いています。多大なるお力添えに重ねて御礼申し上げます。
ご支援のお願い
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