AAR Japan[難民を助ける会]は、武力紛争や政情不安を逃れて来日した難民・避難民の方々を支援するため「生活相談プログラム」を実施しています。昨年1月のプログラム開始から1年間の相談実績を集計して見えてきた現状と課題を報告します。
相談者の出身国は22カ国
AARが姉妹団体の社会福祉法人さぽうと21とともに実施する生活相談プログラムは、難民・避難民から相談を受けて、内容に応じて専門機関につなぐなど、日本での安定した生活の実現をサポートするものです。2023年1月31日の開始から1年間で、外国籍の39人から相談が寄せられました。
国籍別ではウクライナとアフガニスタンが6人ずつで最も多く、中国が4人。このほかナイジェリア、アルジェリアなどアフリカ諸国、イラン、アゼルバイジャン、シリアなど相談者の国籍は計22カ国に及びます。不慣れな日本語や英語で当会に電話を掛けたり、サイト内の相談フォームで詳細な悩み事を送ったり、家族とともに事務所を訪問したりするなど、相談の端緒はさまざまでした。
相談者の半数近くは不安定な在留状態ですが、定住者5%、法務相が在留を認めた「特定活動」26%など、就労可能な在留資格を持つ人からの相談も3分の1を占めます。相談者のうち何らかの在留資格を得ている難民・避難民の方の割合は23%でした。
「生活費が足りない」が21%
相談内容で最も多かったのは「生活費が足りない」などお金に関する事案が21%、食料援助の依頼も5%ありました。「一時滞在施設(シェルター)を探している」などの相談が14%、住居に関するものが12%、家賃に関するものが2%と、「住まいに関する相談」も4分の1以上を占めます。医療費、日本語、在留資格に関するものはそれぞれ7%でした。
「在留期限が切れたので帰国したいが、航空券を買うお金がない。援助してくれるところはないか」「ウクライナの運転免許証を持っているが、日本で車を運転するにはどうすればいいか」など、「どこに聞けばいいのか分からない」という相談が多くありました。こうした相談に対し、AAR職員がリサーチのうえ、各地域の問い合わせ先などをお伝えしました。
不足する支援のリソース
一方、「日本に来て難民認定申請をしたばかり。これから住居はどうしたらいいだろうか」「家族が多く、生活費が足りなくて困っている」などの相談については、即応できる相談先はほとんどありません。相談担当者は「例えば一時滞在施設など外国人支援のリソースが社会全体で増えなければどうにもならない。相談者の困り切った表情を見ていると本当にやるせない」と話します。
1年を通して実感したのは、在留資格と住居の重要性です。ウクライナ避難民やアフガニスタン難民など、安定した在留資格を持つ人からの相談は就職・就学が中心だったのに対し、難民認定中や仮放免中など在留資格が不安定な人は、相談内容が住宅、生活費、医療費、就学など多岐にわたり、多くの困難を抱えていることが明らかでした。
AARは2024年度も「生活相談」を継続し、6月以降は職業紹介ができる資格を取得するなど就業支援ができる体制を整える予定です。より相談をしやすくするため、フードパントリー(食料の無料配布)と法律相談会の同時開催なども検討しています。
アフガニスタン女性支援を継続
また、AARは2023年度、アフガニスタン難民女性を講師にした「アフガニスタン手芸教室」を栃木県小山市と千葉市で各4回、計8回開催しました。
この手芸教室は、言葉の問題などから孤立しがちなアフガニスタン難民の女性と地域の方々の交流を深めてもらうのが目的で、手芸の後はアフガニスタンのお茶とドライフルーツを楽しみながら日本語で会話をしました。2024年度は新たに料理教室を開催し、より多くの方々に参加していただく計画です。
日本に滞在する難民・避難民など外国籍の方々は、生活上の多くの困難を抱えています。AARの支援活動へのご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。