台湾東部地震(4月3日)の発生から半年が経ちます。AAR Japan[難民を助ける会]は現地協力団体「基督教芥菜種會」(The Mustard Seed Mission:MSM/本部:台北市)と連携し、緊急物資配付や山間部の被災家屋修理、収入が途絶えた観光関連業従事者への生計支援に取り組んできました。AAR東京事務局の桐生栞が被災地の現状を報告します。
台湾随一の観光名所「太魯閣国立公園」の玄関口である花蓮駅周辺では、国内の旅行客の姿が散見され、多少賑わいを取り戻したようにも見えますが、市内は未だに損壊したままの建物があり、休業中の土産物店や飲食店が少なくありません。市街中心部で倒壊した9階建ての「天王星ビル」は、震災直後から解体作業が進められ、現在は更地になっています。
市街地のがれき撤去や復興作業は政府の支援で行われますが、山間部で暮らす少数民族の家屋にはこの間、支援がなかなか届きませんでした。花蓮県壽豊郷水璉村で妻と暮らすアミ(阿美)の男性(82歳)の家はあちこちが損壊し、家屋の傍らでがけ崩れも起きましたが、被害の程度が行政の基準を満たさず、公的助成を受けられませんでした。
そこでMSMが行政に代わって、給水タンクの設置、ひび割れた壁面、崩落した2階ベランダの手すりの修繕などを行いました。男性は「自分ではどうすることもできないほど、家のあちこちが壊れて途方に暮れました。修繕を手伝ってもらって本当に助かりましたが、また同じような地震が起きたらと思うと不安も残ります」と話しました。
台湾では1999年と今年、2度の大地震を経験し、台北など大都市での地震への備えが緊急課題になっています。MSMのCEO李肇家さんは「今回のような緊急支援に留まらず、次なる災害に備える必要があります。国際的な活動の幅を広げるためにも、日本で災害対応の知見を持つAARと引き続き協力していきたいと考えます」と話します。
MSMはAARを通した日本からの資金提供を受けて、これまでに111世帯へ現金・物資配付を行うとともに、同団体の宿泊施設を避難所として77人を受け入れました。また、被災家屋56戸の修繕を完了し、地震の影響で仕事を失った38人へ就業の機会を提供しました。引き続き、山間部にある孤立集落の被災家屋の修繕を進める予定です。
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桐生 栞KIRYU Shiori東京事務局
民間企業に勤務した後、2024年にAAR入職。広報コミュニケーション部で制作業務を担当。