「戦争は過去のことじゃない」「自分たちが今できることを考えたい」――。
AAR Japan[難民を助ける会]は今夏、長崎県平戸市立中野中学校が取り組む「平和学習」の一環としてオンライン授業を行い、生徒たちが平和への学びを深めるお手伝いをしました。授業を担当した東京事務局の紺野誠二が報告します。
原爆被爆地である長崎は平和学習が盛んな土地柄です。平戸市立中野中学校では毎年8月に全校で平和集会を開催し、平和についてより深く理解する学びの場を設けています。今年の3年生は平和学習の題材として「地雷」を取り上げ、アフガニスタンなどで地雷除去や回避教育支援に取り組むAARに出前授業の依頼がありました。学びの目標は「地雷について知ることで、戦争が終わった地域でも平和が取り戻されていないことを理解し、平和について考える」でした。
3年生10人が事前の「調べ学習」で予習した後、地雷問題を専門とする紺野が7月8日、AAR東京事務局と教室をオンライン形式でつないで約1時間の授業を行いました。生徒からは「地雷除去の時に失敗して手足をなくされたり、亡くなったりした方はいらっしゃいますか」「除去をする人は『地雷除去資格』のような資格や免許が必要ですか」「被害に遭った人のリハビリにかかる期間は平均どれくらいですか」といった具体的な質問が相次ぎ、事前学習に一生懸命取り組んだ様子がうかがわれました。
紺野からは本を読んで調べれば分かるような情報ではなく、自身が旧ユーゴスラビアのコソボ自治州(2000年当時/現在のコソボ共和国)で実際に地雷除去活動に従事した経験を踏まえてお話ししました。地雷除去の現場に加え、地雷で脚を切断した後、すでに失った脚部に痛みを感じる「幻肢痛」のようなリアルな被害についても説明し、地雷が非人道な武器であり、世界から地雷被害をなくしていかなければならないことを伝えました。
長崎原爆忌の8月9日に開かれた全校集会では、授業を受けた3年生たちが地雷について学んだこと、考えたことを発表しました。生徒たちからは「世界でたくさんの子どもが被害に遭っていることを知って悲しくなった」「自分たちにできることを考えて、少しずつでも取り組んでいきたい」などの感想文が寄せられ、同校の出口康子教諭からは「生徒の発表はとても充実した内容で行うことができました」とのコメントをいただきました。
AARは世界14カ国で実施している「難民支援」「地雷・不発弾対策」「障がい者支援」「災害支援」「感染症対策/水・衛生」などの活動についての理解を促進するために、イベントや講演などの啓発活動に積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルスの影響で昨年来、従来のような対面形式の報告会や出前授業が難しくなる中、オンライン形式でのイベントや授業を実施してご好評をいただいています。AAR Japanの国際理解教育・啓発プログラムをぜひご利用ください。
AARの「国際理解教育」について、詳しくはこちらをご覧ください。
※このオンライン授業は外務省「NGO相談員」として実施しました。
紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局
AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。