昨年1月の能登半島地震から1年、9月には大雨という「二重被災」に見舞われた能登地方では、地域再生に向けた懸命の取り組みが続いています。AAR Japan[難民を助ける会]は災害発生直後の緊急支援に加え、存続さえ危ぶまれる集落で中長期的なコミュニティ支援を実施しています。石川県輪島市の現場から報告します。
地区存続の危機
「断水の最中、政府機関の職員に『何が要りますか』と聞かれ、『古井戸から水をくみ上げるポンプが30台ほしい』と答えたところ、その人は黙ってしまいました。でもAARは『30台は無理ですが…』とすぐ2台持ってきてくれた。みんなどれだけ助かったことか」
震災直後を振り返るのは、輪島市町野町金蔵地区の井池光信区長です。同地区は山あいの盆地にあり、棚田の美しい景観で「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に選ばれました。しかし11月に訪れると、多くの田んぼには雑草が生い茂り、見る影もありません。
能登半島地震で金蔵地区では民家二軒が全壊し、多数の世帯が半壊の被害を受けました。道路が不通になって孤立し、自衛隊機が1月4日に飲料水を届けたのに続いて、AARは17日に陸路で野菜や食品、下着などを運搬。その後も避難所になった地区集会所などに洗濯機2台、井戸にポンプ2台を設置するとともに、高齢の住民のためにトラックを改造した「入浴カー」を派遣しました。
損壊した水道管は人手不足で工事が進まず、ようやく夏に復旧したものの、直後に大雨被害に見舞われました。井池区長は「民家二棟が土砂に埋まり、11月初めまでまた断水しました。震災時にいただいた井戸のポンプで助けられました」と話します。周辺の道路では再び土砂崩れが起き、生活に不可欠な県道は別ルートでの再建が検討されています。
震災前は53世帯95人が暮していましたが、現在は25世帯45人に半減。地区外の仮設住宅に16世帯21人、県外など遠方に12世帯29人が避難しています。「金蔵に仮設住宅を建設してほしいと輪島市に要望しましたが、かないませんでした」と井池区長。
金蔵地区には河川がなく、11カ所ある溜池を地区全員で維持管理していました。2つの溜池は地震と大雨で壊れ、2つは土砂崩落で見に行くこともできません。溜池の損壊と住民の減少で、多くの水田がこの春に続いて2025年も耕作できない見込みです。1年休耕すれば雑草が生い茂り、元に戻すには3年かかると言われます。多くの住民が遠方に避難していることで、復興についての意見交換も難しくなっています。
東日本大震災を教訓に
井池区長たちは震災後、集会所で定期的に集まったり、季刊『金蔵新聞』を発行したりして、コミュニティの維持を図っています。AARは地域復興の専門家を派遣したほか、新聞の印刷費を提供しています。AAR支援チームの大原真一郎は、東日本大震災支援の経験を踏まえ、「津波と原発事故の影響で広域避難が行われた地域では、インフラが復興しても帰還率が低く、ゴーストタウンになる町や村を数多く見てきました。災害直後からコミュニティ、そして住民が互いに助け合う力を維持できるように、将来を見据えた支援こそ必要だと感じます」と話します。
金蔵地区では現在、集落内で災害公営住宅の建設を要望するかどうかなど、さまざまな検討を進めています。井池区長は「支援物資だけでなく、たくさんの専門家や知見を提供してくれるAARの支援に感謝しています。これからも力を借りていきたい」。AARは今後も地域復興を目指すコミュニティ支援を続けてまいります。ご協力くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
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