AAR Japan[難民を助ける会]は、ウガンダ西部のチャングワリ難民居住地で、学校を中心とした子どもの保護環境づくりを進めています。虐待や性被害のリスクが特に高い女子生徒たちを守るため、居住地内の中等教育校に女子寮を建設しました。子どもの安全と、教育を受ける権利を守るための取り組みについて、ウガンダ・ホイマ事務所の秋山広輔が報告します。
子どもの保護が喫緊の課題
面積約91平方キロメートルのチャングワリ難民居住地では、隣国コンゴ民主共和国などから逃れてきた約14万人の難民が生活しています。このうち17歳以下が56%(約7万8,400人)を占め、2024年8月時点で少なくとも7,233人の子どもが暴力や虐待、児童労働、早期婚など、子どもの権利や安全を脅かす様々なリスクにさらされています(※1)。両親のいない子どもやトラウマを抱えている子どもも少なくありません。子どもの保護は、同居住地でもっとも喫緊の課題のひとつです。
AARは2020年から子どもの保護環境づくりを進め、これまでに難民居住地内の初等教育校4校・中等教育校1校と、難民を受け入れている周辺のホストコミュニティ内の初等教育校2校・中等教育校1校を対象に、心理社会的支援に関する人材育成や、貧困や家庭内暴力など困難な状況に置かれた子どもに対する個別支援などの活動を行ってきました。
また、子どもたちがお互いに助け合いながら困難を乗り越えられるよう、各学校に「ピア・サポートクラブ(Peer Support Club)」を設立し、スポーツや文化活動を通じた友だちづくりや心の回復を支援してきました。

女子学生寮の引き渡し式であいさつをする、女子生徒代表のエスタ・マクレインさん(2月12日、チャングワリ中等教育校で)
衛生と安全に配慮した、新学生寮
2025年2月、女子生徒たちが待ちわびた新しい学生寮がチャングワリ中等教育校に完成しました。チャングワリ難民居住地内で唯一の公立の中等教育校である同校は学費が安いため多くの入学希望者がいますが、家から遠く通えなかったり、通学中に性被害に遭ったり動物に襲われたりする危険があり、通学を断念する女子生徒も少なくありません。これまでの女子学生寮の定員は112人でしたが、希望者が殺到し、1つのベッドを2人で共有するような過密な環境が続いていました。
AARが新しく建設した女子学生寮は定員66人で、トイレ・浴室・井戸も新設しました。トイレ4基のうち1基はバリアフリーで、屋内の浴室には寮の屋根から収集した雨水を利用して蛇口から水が出るようにし、水汲みの負担を軽減しました。また、生理用品を廃棄するための焼却炉も併設し、女子生徒が安心して処分できるように、浴室の内側から焼却炉に直接捨てられる小窓を設置しました。施設の引き渡しにあたっては、教員や生徒を対象に日頃のメンテナンスや掃除の方法、設備に不具合が生じた場合の対処法などに関する研修も行いました。

AARが建設した女子学生寮(手前中央右:佐々山拓也・駐ウガンダ大使)
賑やかな引き渡し式
2月12日には女子寮の引き渡し式が行われ、佐々山拓也・駐ウガンダ大使をはじめ、現地政府関係者やパートナー団体などから120人以上の方々にご参加ただきました。ピア・サポートクラブによるダンス披露では参加者が一緒に踊るなど、アフリカらしい華やかな式典となりました。女子寮の生徒からは、「入寮するのが楽しみ」「井戸ができたおかげで水汲みのために授業に遅刻しなくてすむ」など、喜びの声が寄せられました。

引き渡し式でダンスを披露するピア・サポートクラブのメンバー
AARは、建設した施設が長く大切に使われるように、今後も学校や生徒と協力して定期的なモニタリングを実施します。チャングワリ難民居住地の子どもたちが夢に向かって安心して学び続けられるよう、子どもの保護環境づくりをこれからも進めてまいります。AARのウガンダでの支援活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

教員たちと設置した井戸を視察するAARの秋山広輔(中央)
※この活動は皆さまからのご寄付に加えて、外務省日本NGO連携無償資金協力およびTOTO水環境基金の助成を受けて実施しています。
(※1)https://data.unhcr.org/en/documents/download/111042

秋山広輔Kosuke AKIYAMA
土木工学を専攻した後、開発コンサルタント勤務を経てAARに入職。2024年8月よりウガンダ・ホイマ事務所駐在