活動レポート Report

「収入が3倍に」 障がい者の生計向上支援:ウガンダ

2025年9月16日

AAR Japan[難民を助ける会]は、ウガンダで地雷被害者を含む障がい者支援に取り組んでいます。同国西部のホイマ県で協力団体と連携して実施した生計向上支援について、ホイマ事務所の秋山広輔が報告します。

受益者インタビューの様子

AARの支援を受けたムハマドさん(右)と、AARのニャカケ職員=2025年4月

今も残る内戦と地雷の傷跡

AARは2009年から、ULSA(Uganda Landmine Survivor‘s Association、ウガンダ地雷被害者協会)と協働でウガンダの地雷被害者支援を行っており、現在は地雷以外の理由で障がいを負った人も支援しています。ULSAの代表を務めるのは、自身も地雷被害者で、世界各地で地雷廃絶と被害者救済を呼びかけているマーガレット・アレチ・オレチ氏です(マーガレットさんについては、こちらの記事をご覧ください)。

1962年に英国から独立して以降、ウガンダではクーデターや内戦など混乱が続きました。1986年に現大統領が政権に就いた後も、北部では2006年ごろまで約20年にわたって内戦が続き、多くの一般市民が地雷や不発弾による被害を受けました。2012年12月には「ウガンダ国内からすべての地雷が撤去された」と発表されたものの、今なお地雷被害者は様々なハンデを負いながらの生活を余儀なくされています。

ホイマ市長との記念撮影

ホイマ市長との面会(右側2人目から、AAR秋山広輔駐在員、ホイマ市長、ULSA代表マーガレット氏)=2025年3月

15人の障がい者に生計向上支援

AARの事務所があるホイマ県は、首都カンパラから車で約4時間のウガンダ西部にあります。住民の多くは農業や畜産で生計を立てていますが、最近では近くで石油が発掘されたり、国際空港や国立スタジアムの建設が進んでいたりするなど、国内でも発展が著しい地域のひとつです。一方で、障がい者など脆弱な境遇に置かれた人たちは、労働機会に恵まれないまま発展の恩恵を受けられていない人も多く、経済的格差の拡大が懸念されています。

2025年2月〜7月まで実施した本事業では、ホイマ県の障がい者15人を対象に生計支援を行いました。実施にあたり、ホイマ市や障がい者団体などから情報収集を行い、障がい者を訪問して脆弱性やビジネスの遂行能力を基準に受益者を選定しました。その後、受益者一人ひとりと面談しながら支援するビジネス内容を決めました。ビジネスは、小売店、理髪店、古着屋、養豚、文房具店など多岐にわたります。

資金調達や会計管理の方法など、2日間の研修を実施し、必要な資機材を提供しました。その後は、ビジネスが軌道に乗るように定期的に面談し、収支表の記録方法などのアドバイスを行いました。また、受益者同士が相談し合えるよう、ピアサポートグループを設立し、小口融資機関などとの関係構築も支援しました。支援を受けた障がい者の声をご紹介します。

古着を受け取ったアリンダさん

支援物資として古着を受け取ったアリンダさん=2025年3月撮影

収入が3倍に増えましたブライアンさん(27歳)

私は学生だった2012年に友だちと一緒にサッカーをしていて、遠くに飛んで行ったボールを取りに行ったところ、地雷を踏んでしまい右足を失いました。理髪店を営みながら、ひとりで娘と母親と祖母の暮らしを支えていましたが、生活は困窮していました。

今回の支援で剃刀機や滅菌器などを提供してもらい、店の設備を整えることができ、お店の回転率が上がりました。研修で得た知識も活用し、月の収益が15万ウガンダシリング(約6,300円)から50万ウガンダシリング(約2万1,000円)へと約3倍に増加しました。安心して家族を養えるようになり、携帯電話の充電サービスや音楽・映像の販売など、新たなビジネスにもチャレンジしています。

ブライアンさんのインタビューの様子

AAR職員に、理髪店の経営について話すブライアンさん(左)=2025年4月撮影

「収入が安定し、家族を支えられるようになりました」リディアさん(39歳)

私は元々、地元で収穫された農作物を購入し、乗合トラックでケニアとの国境の町へ運搬する仕事をしていました。2013年5月24日、仕事中に交通事故に遭い右足の膝下を失いました。家族に支えられ、なんとか普段の生活を送れるくらいまで回復しましたが、その後は収入が少なく苦しい生活が続きました。

今回の支援によって小売店を開業することができました。開業から数カ月が経ち、小売店で得た収益で以前と同じように農作物を仕入れて運搬する仕事もできるようになりました。今では週に2日、農作物を国境まで運んでいます。これまでは収入が少なく医療費を十分に払えませんでしたが、今では適切な治療を受けられるようにもなりました。収入が安定し、家族の生活も支えることができています。

リディアさんインタビューの様子

リディアさん(左)が開業した商店の前で相談に乗る秋山駐在員=2025年4月撮影

ウガンダでは、依然として障がい者が社会で活躍できる機会が限られています。AARは、地雷被害者を含む障がい者への支援を通じ、誰もが社会で活躍し、希望の持てる地域づくりを目指します。皆さまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

ご支援のお願い

ウガンダ難民居住地支援への
ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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※AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
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※この活動は皆さまからのご寄付に加えて、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

秋山 広輔AKIYAMA Kosuke ホイマ事務所

土木工学を専攻した後、開発コンサルタント勤務を経てAARに入職。2024年8月よりウガンダ・ホイマ事務所駐在

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