活動レポート Report

被災経験教訓に 高校生と住民の防災訓練を支援:東日本大震災被災者支援

2025年11月18日

福島県伊達郡川俣町の小島(おじま)地区で、同地区自主防災会と県立川俣高校の全校生徒が参加する合同防災訓練が実施されました。2019年の台風19号による被害を踏まえたもので、AAR Japan[難民を助ける会]は、福島第一原発事故などの影響で高齢化・過疎化が進む地域での防災力向上を目的とした活動を行っています。

図上訓練の様子

大型の地図を広げて図上訓練を行う川俣高校生と地域住民ら=福島県川俣町のおじまふるさと交流館で、2025年10月28日

合同訓練は10月28日、小島公民館と、隣接するおじまふるさと交流館で行われ、自治会役員やボランティアら約30人に加え、川俣高校の全校生徒53人が参加しました。訓練は災害図上訓練と炊き出し体験の二部構成で、図上訓練は住民と高校生がチームを組み、8班に分かれて行われました。まずはAARが提供した大判の地図に、浸水しそうな場所、土砂災害の危険がある場所、避難所の位置などを色分けして記入。続いて県危機管理部災害対策課の職員が「台風が近づき警戒レベル2が発令されています。どのような準備、対応をいつ、誰がするか考えて」「震度6強の地震発生。○○地区で火災が起きています」などと次々課題を出していきます。

「この辺りの道は2019年の台風の時にはぐちゃぐちゃだった。とても通れないよ」「あれ、この避難所は浸水危険地域にあるのでは?」「警戒レベル3の雨ではお年寄りの移動は無理。もっと早く避難しないと」「障がいのある人を移動させるには車がいるよね」など、地図を囲んで地元住民と高校生が活発に意見を交わしました。

小島地区は東日本大震災の際、自らも被災し、停電する中、福島第一原子力発電所に近い双葉町や浪江町からの避難者を受け入れた経験を持ちます。また2019年10月の台風19号の際には、従来の防災マップに浸水想定危険区域の記載がなく、家屋などに大きな被害が出ました。このため、地域住民と川俣高校生が協力して被害状況を調査。AARも支援して2022年に写真データも盛り込んだ新たな防災マップ(紙版とデジタル版)を作成しました。これらは実用的な防災マップとして高い評価を受け、今回の訓練でも活用されました。

図上訓練の後の炊き出し体験では、薪から火をおこし、ご飯を炊いたり、豚汁を作ったりしました。中には「リンゴの皮をむいて」と頼まれて、「やったことがない」ととまどう高校生もいました。

炊き出し訓練の様子

炊き出し訓練で、薪で食事をつくる川俣高校生ら=福島県川俣町の小島公民館前で、2025年10月28日

小島自治会の新関厚会長は「東日本大震災でも2019年の台風でも、役所は大きな避難所の運営で手いっぱい。小さい避難所や住民の暮らしは自助、共助でなんとかしなければならないと痛感した。川俣高校との合同防災訓練は今年で4回目だが、毎年新しいことに挑戦し、災害時に機能するものにしたい」と語ります。

また、川俣高校に防災マップ作りへの参加を呼び掛け、合同防災訓練のきっかけを作った川俣町生活支援コーディネーターの菅野美佐江さんは「普段の生活では、地区のリーダーと高校生がゆっくり話をしたり議論したりする機会はめったにない。合同防災訓練はその貴重な機会。災害時だけでなく、人はつながらないと生きていけないということを、若い人に伝えたい」と話します。

訓練後の懇親会

炊き出し訓練後、出来上がった豚汁やカレーをみんなで楽しみました=福島県川俣町の小島公民館前で、2025年10月28日

川俣高校3年生の安部雅希さんは「図上訓練では、例えば地震後の火災なら、消防への連絡と避難誘導など同時にやるべきことが多く、驚いた。訓練を重ねないと実際にはできないと思う。炊き出しも、地域の方にやさしく教えていただいた。自分も災害時に周囲の人を助けられるようになりたい」とはっきりした口調で話してくれました。

AARは今後も、東日本大震災の被災地などで、防災に強い地域づくりのための支援を続けてまいります。どうぞご支援をよろしくお願いいたします。

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