アフガニスタンでは、長年にわたる紛争の影響によって一般市民の不発弾や地雷被害が深刻化しています。また、経済危機によって慢性的な食料不足が続いており、AAR Japan[難民を助ける会]は2025年6月から、東部のガズニー県で爆発物から身を守る啓発活動と、困窮世帯を対象とした食料配付を行っています。

食料など支援物資の配付会場=ガズニー県で2025年8月
地雷・不発弾がすぐそばに
ガズニー県は過去の紛争で幾度も激しい戦闘地になり、地雷や不発弾の汚染面積は国内34県中6番目に大きいとされています。AARの現地スタッフが同県の支援現場へ向かう際にも、地雷が埋まっている危険区域があり、道路脇には危険を知らせるための赤と白の塗料で塗られた石標が置かれています。

赤白に塗られた道路脇の石標。赤側が危険、白側が安全であることを示している=2025年8月
同県では2023〜24年の2年間で、確認されているだけでも69人(死亡32人、負傷37人)が被害に遭いました。特に子どもの被害が深刻で、死者32人中27人、負傷者37人中28人が18歳以下の子どもです。屋外で遊んでいる際の事故が最も多く、命を落とす子どもも少なくありません。農業や家畜の世話、生活費を稼ぐための鉄くず拾いなどをしてる時に被害に遭うケースもあります。
爆発物をすべて取り除くことが一番の解決策ではあるものの、膨大な時間がかかるため、人々が自分や家族の命を守ることができるよう、爆発物の危険性や正しい対処法を伝えることが必要です。
437回の啓発セッションを実施
AARは、同県の38村で、437回の爆発物回避教育セッションを行い、大人1,364人、子ども7,530人が参加しました。セッションは、参加者を成人男性、男児、女児に分けて各村のモスクなどで行い、事前に研修を受けた講師が、AARが作成した紙芝居やポスターを使って危険物の見分け方や、近づかない・触れないこと、安全な道を選ぶことなどについて啓発を行います。暫定政権の方針で成人女性は参加することができませんが、配付する啓発パンフレットを用いて家庭内で啓発メッセージを共有するよう、参加者に伝えています。

回避教育授業に参加する子どもたち=2025年8月
また、村の住民や子どもが実際に爆発物らしきものを見つけた際に、その存在をいち早く関連当局に知らせ、対応してもらうことも重要です。そのため村長や宗教指導者など村のリーダーたちを38村から一人ずつ連絡役として任命し、村で爆発物を発見したり、事故が起きたりした際に当局に報告する方法の研修も行いました。さらに、継続して地域全体の安全意識を高めるため、爆発物の写真やリスク回避に関するメッセージを記載した看板を全38村に設置しました。
「脆弱世帯」を対象に食料など配付
爆発物回避教育と並行して、困窮世帯を対象にした食料配付も行いました。世帯主が女性、子ども、障がい者や高齢者であること、さらに世帯収入が少ないことなどから世帯の「脆弱さ」を総合的に評価し計836世帯を対象としました。1世帯当たり小麦粉50キロ、コメ24キロ、食料油10リットル、豆やお茶、砂糖、塩、砂糖を配付し、ここでも地雷・不発弾の被害に遭わないよう呼び掛けるパンフレットを配りました。
医療へのアクセスが制限されていることや、予防接種が受けられないこと、栄養失調などが原因とみられる障がい者が、対象郡の約半数の世帯にいます。支援物資を受け取ったラヒム・ジャンさん(49歳)も、約6年前に重病にかかり、両足を切断。現在、息子も足が弱り歩くことができないと言います。ジャンさんは、「家族みんなが、昼夜を問わず空腹に耐えながら、生き延びるためのわずかな食料や金銭を探しています。AARの支援にとても感謝しています。どうか継続的な支援をお願いします」と話していました。

支援物資を受け取ったラヒムさん=2025年8月
AARは20年以上にわたって、アフガニスタンで地雷除去事業、地雷・不発弾の被害を避ける回避教育、地雷被害者を含む障がい者支援に取り組んできました。今後も治安情勢に十分配慮し、現地スタッフの安全を確保しながら、脆弱な立場に置かれた人々の支援活動を続けてまいります。AARのアフガニスタンでの活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。
※この活動は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。



