タイ・カンボジア国境では、2025年12月初旬から両国軍の軍事衝突が激化し、両国合わせて60万人以上が避難生活を強いられる異常事態となっています。AAR Japan[難民を助ける会]は、長年活動を続けてきたカンボジア側で国内避難民への緊急支援の実施を決め、18日現地調査に入るとともに、支援物資の配付を開始しました。

避難所として設置されたテントで、所在なげに座る国内避難民の人々=コッコン州で2025年12月18日
「13日の午前2時半ごろ、ものすごい爆音が聞こえてきて、家族みんなで慌てて逃げました。タイとの戦闘はこれからどうなるのか、何もかも置いて出てきた家が今どうなっているのか、とても心配です」。国境近くの町に住み、コッコン州スラエ・アンベル(Srae Ambel)郡の避難所に逃げてきた53歳のピッチ・ティエンさんはそう言って、顔を曇らせました。

カンボジア・プノンペン事務所代表 大室和也(左)の聞き取り調査に応じる避難民のピッチ・ティエンさん=コッコン州で2025年12月18日
タイ・カンボジア国境では、一部地域の領有権をめぐって今年5月から緊張が高まり、7月には本格的な軍事衝突に発展。米国が停戦を呼び掛けるなどして、一時は避難民も居住地に戻ることができましたが、12月初旬には再び攻撃の応酬となりました。カンボジアの国家災害管理委員会(NCDM)によると、12月12日現在、国内避難民は33万1,158人に上り、うち約24万6,210人が234カ所の避難施設に、残る8万4,948人は親族宅に避難しています。
AARが18日に訪問したコッコン州では、タイと国境に近い2郡の教育機関をすべて閉鎖しています。教育局の職員は「こんなことは経験したことがない。子どもたちのことがとても心配だ。カンボジアは小さい国だから、平和を望むばかりだ」と話していました。

避難民のために食事の準備をする地元のボランティア=コッコン州で2025年12月18日
国境から約80キロのスラエ・アンベル(Srae Ambel)郡の避難所には、18日時点で292世帯1,629人が避難していました。スペースが足りないため、屋外にテントを張り、そこで寝たり、食事をとったりする家族もいます。床はシートを張っただけで座ると石があたって痛いほどで、服や日用品を詰め込んだ袋などがあちこちに置かれています。食事は地域のボランティアが作ってくれていますが、小学校は遠いため通うのが難しく、多くの子どもたちが一日中避難所にとどまっています。
冒頭で紹介したピッチ・ティエンさんは「今は蚊帳や毛布もなく、落ち着いて眠ることができません。毎日飲まないといけない高血圧の薬も手に入れられないので、困っています」と話していました。

コメ、食用油など支援物資を引き渡すAAR職員ら(左)=コッコン州スラエ・アンベル郡事務所で2025年12月18日
AARは、今回調達した水やコメ、食用油のほか、非常食用のビスケット・スナック類、ティッシュペーパーや衛生用品を避難所の管理者である郡事務所に届けました。今後隣接するバッタンバン州でも調査を行い、支援を本格化させます。AARのカンボジア国内避難民支援にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。



