活動レポート Report

ウクライナ人道危機4年:命と暮らしを守るために

2026年2月13日

ロシアによるウクライナ軍事侵攻から4年。ウクライナでは無人機攻撃などによる戦闘が続く中、今も多くの人々が厳しい生活環境で暮らしています。AAR Japan[難民を助ける会]は、現地協力団体と連携して、障がい者への支援や地雷対策などの活動を行っています。モルドバ・キシナウ事務所の竹居志織が報告します。

戦禍で苦しむガリーナさん

砲撃の影響でがれきが散らばっている

砲撃の影響を受けたガリーナさんの家

ミコライウ州に暮らすガリーナさん(64歳)は、自らも先天性股関節形成不全による障がいを抱えながら、介護を必要とする寝たきりの母親と、夫とともに暮らしていました。侵攻後、ガリーナさんたちが住む村は前線地域となり、自宅の周辺では連日のように砲撃が続きました。地下室で身を寄せ合い、外に出られない生活が何週間も続くこともありました。一時的に村が占領された際には、武装した兵士から脅迫を受けるなど、命の危険を感じるほどの体験をしたこともあります。

村の戦況が悪化した際、ガリーナさん家族は西部テルノーピリ州へ避難しました。しかし、慣れない環境と移動による負担から、母親は避難先で亡くなりました。その後、前線の緊張が落ち着いたタイミングで故郷へ戻りましたが、自宅は砲撃の影響で窓や扉が壊れ、屋根や庭も損壊していました。支援団体や近隣住民の助けを借りて最低限の修復を行い、生活を再開しましたが、ガリーナさん自身も長年にわたる障がいと慢性的なストレスの影響で、心臓の不調が現れ、頻脈発作や高血圧に悩まされるようになっていました。また、経済的な理由から歯科治療を受けられず、歯の状態も著しく悪化していました。

こうした状況を受け、AARと現地協力団体「The Tenth of April(TTA)」は、診察や投薬などの医療支援、噛むことすら辛かった歯の治療支援を行いました。投薬によって心臓や血圧の症状が改善され、歯の治療によって以前のように食事をとれるようになりました。また、健康状態を確認できる血圧計を提供し、自宅で体調を管理できる環境が整いました。支援を受けるまで、自分の体のことを後回しにしていたガリーナさんは、「この困難な時期を生き延びる機会を与えてくれて、心から感謝しています」と話します。

ガリーナさんの写真

支援物資を受け取ったガリーナさん

暮らしを脅かす現実の中で

ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻によって、多くの人々が住まいや生活の基盤を失っています。加えて、エネルギーや交通インフラへの攻撃が続き、寒さが厳しい中、毎日のように停電や電力、移動の制限が発生しています。停電は寒さをもたらすだけでなく、安全、医療、水、情報など、生きるために最低限必要なものを一度に奪います。移動の制限は、安全な避難や必要な支援へのアクセスを妨げています。

こうした状況で行われる支援活動は、危険と隣り合わせです。それでも現地での活動を続ける協力団体やAAR現地スタッフの姿に、私は何度も頭が下がる思いを抱いてきました。TTAのスタッフであるセルゲイさんは力強く語ります。「侵攻が始まってから、人々が必死に生きる姿と、困難に耐える苦しみを目の当たりにしてきました。特に、自分の力だけでは生活が難しい障がい者を支えることが、私の使命だと思っています」。

TTAメンバーの女性3名と男性1名の写真

TTA現地フィールドチームのメンバー

事故を防ぎ、日常を取り戻す力—地雷・爆発物回避教育

戦時下の生活では、障がいや病気への支援だけでなく、命の危険から身を守ることも欠かせません。そのひとつとしてAARが行っているのが、地雷や不発弾による事故を防ぐ取り組みです。ウクライナの住宅地や農地、学校の周辺には、戦闘の痕跡として地雷や不発弾が残され、人々は常に命の危険にさらされながら生活しています。農作業に出る時、子どもが外で遊ぶ時、避難先から戻って自宅の庭に足を踏み入れる時。「そこに爆発物があるかもしれない」という恐怖が、ウクライナの人々の生活を脅かしています。

AARは、地雷・不発弾除去を専門とする国際NGO・The HALO Trustと協力して、爆発物回避教育などの地雷・不発弾対策を行ってきました。危険地域で暮らす住民に向けて、爆発物の見分け方、安全な行動、発見時の通報方法など、命を守るための知識を届ける活動では、期間中に1,579回の教育セッションを実施し、6,456人(男性1,389人、女性3,359人、子ども1,708人)に直接情報を届けることができました。

地雷回避教育の様子

ミコライウ州で行った地雷回避教育

前線に近い地域では、住民が集まること自体が攻撃の標的になる恐れがあります。また、障がい者や高齢者など、参加のための移動が困難な人もいます。そのため、HALOのチームは一軒一軒の家庭を訪問して啓発活動を行うなど、柔軟に対応しながら活動を行いました。1,348回の戸別訪問を行い、人々に命を守る情報を届けました。また、子どもたちには、短く分かりやすい参加型の教材を使ったセッションを実施し、農業従事者には畑で遭遇する危険に特化した内容を伝えました。オンラインセッションやラジオ放送、大規模イベントなど、あらゆる手段を使って情報を届けています。

地雷回避教育の個別支援

戸別訪問で地雷の危険を伝える

ウクライナでは今もなお、多くの地域に地雷や不発弾が残され、人々の活動を妨げ、命の危険をもたらしています。正しい知識を伝えることは、事故を未然に防ぎ、命を守ることにつながります。さらに、こうした取り組みは、困難に直面しながらも日常を取り戻そうとする人々の力(レジリエンス)を育む役割も果たしています。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ウクライナでは人道支援を必要とする人の数は2022年の290万人から1,080万人に膨れ上がりました。家を失い、インフラなど日常に欠かせないものが次々と奪われ、避難を余儀なくされる人が数多くいます。医療や食料、生活支援を切実に必要とし、命の危険と隣り合わせで暮らす人々もいます。しかし、国際社会からの援助は不足しており、そうした人々に十分な支援が届いているわけではありません。

AARは今後も、脆弱な人々の健康と生活を支える活動や、地雷や不発弾、ドローン攻撃などによる危険から人々を守る活動を継続していきます。現地では、人々が必死に日常を取り戻そうとしており、私はその懸命な努力が希望につながるよう、少しでも後押ししたいと強く思います。しかし、資金不足などの理由で支援が十分に届かないもどかしさもあります。ウクライナの人々が希望を失わずに困難に立ち向かう力を取り戻せるよう、AARのウクライナ人道支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

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竹居 志織TAKEI Shioriキシナウ事務所

大学院で社会開発を専攻し、難民支援について研究。NPOで国際理解教育や障がい者支援等に従事した後、2024年にAAR入職。2025年5月よりキシナウ事務所駐在

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