アフリカ東部の内陸国ウガンダで、AAR Japan[難民を助ける会]は2016年以降、周辺国から流入した難民の子どもたち、および地元の子どもたちの教育支援に取り組んでいます。当初は南スーダン難民が多い北西部の西ナイル地域で活動していましたが、2020からは西隣のコンゴ民主共和国から逃れてきたコンゴ難民が暮らすチャングワリ難民居住地で事業を実施しています。 AARウガンダ駐在員の家高真衣が、難民の子どもたちへの支援活動をご報告します。
子どもたちが直面する言語の問題
1990年代からコンゴ東部で続く紛争を逃れて、レイチェルさん(13歳)が家族とウガンダに来たのは4年前のこと。日常生活でも学校でもさまざまな困難がある中、初等教育校(小学校)5年に在籍するレイチェルさんが話してくれたのは「言葉の問題」です。私もこの居住地に来て気づいたのは、南スーダンとウガンダの公用語は同じ英語ですが、ベルギー植民地だったコンゴは仏語なので、コンゴ難民の子どもたちはより不自由な思いをしているということでした。
例えば、レイチェルさんの体調が悪くなって近隣の病院に行ったとき、ウガンダ人の医師に病状を詳しく説明することができず、身振りを交えて「痛い」と伝えるのがやっとでした。近所にあるウガンダ人の店で日頃ちょっとした買い物をするときでさえ、コミュニケーションに苦労するといいます。
学校生活でも大きな悩みがあります。ウガンダでは次の学年に進級する際、試験で一定の成績をとる必要がありますが、レイチェルさんは「試験は英語で行われるので、そもそも問題がよく理解できてなくて困ります」と話します。進級できずに留年を繰り返していると、子どもたち自身が学習意欲を失ったり、家族が経済的に通学を支えきれなくなったりして、退学する事態に陥ってしまいます。
学びをあきらめない環境を
そうした課題を解決するため に、私たちAARは現在、難民居住地内の9校を対象に、英語の補講プログラムを実施しています。レイチェルさんも友だちと一緒に放課後の補講に参加しており、「ここで勉強することで英語の読み書きが少し ずつできるようになってきました」 と、自分の名前を書いたノートを少し照れながら見せてくれました。
難民居住地の教育現場では、教室や教科書・学用品が不足し、教員の数も足りていないなど非常に多くの課題があります。加えて、同じウガンダ国内でも、南スーダン難民とコンゴ難民では異なる問題に直面していることが分かります。英語に一生懸命取り組むレイチェルさんの姿を見ながら、異国で暮らす難民の子どもたちがほかの子どもたちと同じように、学びをあきらめなくてよい環境づくりを続けていきたいと改めて感じています。
家高真衣IETAKA Maiウガンダ事務所
途上国支援に携わる開発コンサルタント会社に就職後、支援活動に直接携わりたいとAARに入職。和歌山県出身