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数字で見る地雷問題の今【世界編】

2021年8月2日

世界各地の紛争地に埋設され、紛争が終結した後も一般住民を死傷させる対人地雷。「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(オタワ条約)が1999年3月1日に発効して年以上が経過しましたが、その被害は今も世界各地で後を絶ちません。対人地雷あるいは不発弾だけでなく、近年は反政府武装勢力などが使う即席爆発装置(IED)の被害が急増しています。

地雷問題の現状について、世界編・日本編の2回にわたって数字をキーワードに見てみましょう。まず数字を見て、それが何を意味するのか考えてみてください。

► 164

オタワ条約の締約国は2021年4月1日時点で164カ国です。この164カ国を地理的にみると大きな特徴があります。例えば南北アメリカ地域では、米国とキューバを除くすべての国が締約国になっています。アフリカではエジプト、リビア、モロッコ以外は締約国です(西サハラを除く)。ところが、アジアに目を移すと締約国の数は大幅に減って、特に東アジアでは締約国が日本だけという非常に寂しい状況にあります。

► 5,554

地雷禁止国際キャンペーンの「Landmine Monitor 2020」に出てくる数字です。これは2019年に世界中から報告された地雷・不発弾などの被害者の数です。実は対人地雷だけの被害者は減っていると考えられています。というのも、地雷除去はその性格上、新しい地雷が埋設されない限り、活動を続ければ続けるほど兵器の数は減っていくからです。対人地雷という兵器による被害が減っているにも関わらず、顕著に被害者数の減少がみられない理由は、何といっても即席爆発装置(IED)が増えていることです。これによって被害に遭い、死傷する人の数が多いのです。

2019年に除去された対人地雷は12万3,000個以上、その前年は9万8,000個以上でした。従って、地雷除去活動そのものはそれなりに進んでいると言えます。

荒野で男性が地雷探知機を持ち膝をついて地雷を探している。

世界有数の地雷汚染国アフガニスタンで、地雷の除去活動を行う除去要員(©THE HALO TRUST)

► 5,000万

これは、世界中にあると考えられている貯蔵対人地雷の数です。約5,000万未満ではないかと考えられています。オタワ条約の締約国では、条約で認められている例外的な保有を除くと、164カ国のうち160カ国が貯蔵地雷を保有していません。ですが、締約国に入っていない33カ国のうち30カ国は貯蔵地雷を有していると考えられています。

ただし、貯蔵地雷の数字はかなりあいまいです。というのも、締結国ではない中国の貯蔵対人地雷の数によって、この数字は大きく左右されるからです。中国は過去に1億1,000万個保有していると考えられていましたが、中国が2014年に「Landmine Monitor」に報告したのは、「500万個以下だが、数え方にもよるので不確定」というものでした。

► 55

これは「回避教育」が行われた国・地域の数です。地雷の被害に遭わないように、どんな形状の地雷があるか、それを見つけた時はどう行動すればいいかを、子どもを含む地域住民に伝える啓発活動を意味します。以前は「地雷回避教育」と呼んでいましたが、先述した通り、対人地雷や不発弾だけでなく、近年はIEDが急増して被害の実態はずいぶん変わってきています。そのため、今日では「Mine Risk Education」ではなく、「Explosive Ordnance Risk Education」という表現が用いられるようになりました。「爆発物回避教育」と表記したほうが分かりやすいかもしれません。

オタワ条約締約国のうち28カ国で回避教育が実施されています。少し意外ですが、回避教育はタイでも行われています。同国では2019年には10人が地雷の被害に遭っています。この回避教育の重要性は、最近特に強調されいています。

► 4,310万

2019年度の地雷対策分野の中で、被害者支援に割り当てられた金額は4,310万ドルです。日本円にすると約47億4,100万円(1ドル=110円)。この額は同年の地雷対策総額5億6130万ドルのわずか8%に過ぎません。国連地雷対策サービス部(UNMAS)が主導する地雷対策では、除去活動や回避教育活動への各国ドナーからの資金拠出は比較的集まりやすいと言われています。他方、被害者支援にはなかなか手が届かないというのが実情です。

AAR Japanは地雷被害者を含む障がい者の支援を各地で継続しています。ウガンダで現地NGOと協力して、地雷・不発弾の被害者支援を実施しているほか、ミャンマーで約20年運営している障がい者のための職業訓練校では、地雷被害者の訓練生や教員を受け入れています。

 

イスに座り義足を装着している女性とその横で膝を着いているAARスタッフ

AARの支援により初めて義足を装着したジェットレス・ビーラさん(ウガンダ)

 

AAR Japanの地雷対策の取り組み

国連地雷対策サービス部(UNMAS)の地雷対策は、次の5本の柱で成り立っています。それは、地雷除去(Clearance)、回避教育(Risk Education)、貯蔵地雷の廃棄(Stockpile destruction)、被害者支援(Victim Assistance)、廃絶活動(Advocacy)です。このうち、AARは貯蔵地雷の廃棄を除く4つの活動に取り組んでいます。貯蔵地雷の廃棄は基本的にオタワ条約締約国の政府が行いますが、専門性を持つNGOが手助けするケースもあります。

地雷除去:当会の協力団体である英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」がアフガニスタンで実施する地雷除去を資金面で支援しています。

回避教育:アフガニスタンで2002年以降、子どもを中心に回避教育活動を続けているほか、ザンビア、アンゴラ、スーダン、シリア、コソボでも回避教育を実施しました。

被害者支援:ウガンダ、ミャンマーで地雷被害者をサポートしています。

廃絶活動:AARは対人地雷の製造・使用の廃止を目指す国際的なNGOの連合体「地雷禁止国際キャンペーン」(ICBL)の主要メンバーとして、ノーベル平和賞(1997年)を共同受賞しました。地雷廃絶キャンペーンの絵本『地雷ではなく花をください』シリーズを通じて、地雷問題についての理解を日本社会で広げるとともに、講演や出前授業などでも地雷廃絶を呼び掛けています。

 

 

 

紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局

AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。

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