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数字で見る地雷問題の今【日本編】

2021年8月5日(2023年3月24日更新)

ここでは日本の地雷対策について、数字をキーワードに考えてみましょう。数字に着目すると意外な事実が見えてきます。

► 663

「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(オタワ条約)に関する数字です。ヒントは100万089→663。これでピンと来るのは、地雷問題に長年関心を持っている方でしょう。

答えは、日本が2021年末の時点で貯蔵している対人地雷の数です。「オタワ条約の締約国なのだから、1個も持っていないはずではないか」「小泉純一郎元首相が以前、日本が貯蔵する対人地雷の廃棄セレモニーやっていなかったかな?」「条約違反じゃないのか」。この数字を見ると、そんな疑問が頭に浮かぶかもしれません。

確かに、オタワ条約第4条には、所有または管理・管轄下の貯蔵する対人地雷について、それぞれの締約国は効力発生後4年以内に廃棄することが明記されています。しかしながら、第3条1項では「地雷の探知、除去又は廃棄の技術開発及び訓練のための若干数の対人地雷の保有又は移譲は認められる。その総数は、そのような開発及び訓練のために絶対に必要な最小限度の数を超えてはならない」としています。

ここで注目する必要があるのは「絶対に必要な最小限度の数」という部分です。何個持っているのが「絶対に必要な最小限度の数」なのかは、あくまで各国の判断に委ねられています。例えば、ウクライナは330万個も保有しており、ICBLも「それは貯蔵し過ぎではないか?削減するべきだ」と主張しています。

それぞれの締約国が貯蔵地雷をいくつ持っているかを含めた透明性に関する措置は、オタワ条約の第7条で定められ、国連事務総長に報告することが決められています。興味のある方は、国連ホームページで簡単に調べることができます。

日本の貯蔵する対人地雷の数は2020年末から2021年末の間で56個減少していますが、これらは除去機械による探知や除去の訓練のために使用されたものです。

► 4,165万8,303

細かい数字ですが、これは日本政府が2020年度に地雷対策として拠出した資金の合計額(米ドル換算)です。資金拠出の一覧を見ると、日本政府は21カ国での地雷対策活動(および国連地雷対策サービス部の本部費用)に拠出しています。その中でも最大の拠出先はイラクでの地雷除去活動で、681万8,181米ドルとなっています。日本のNGOで地雷対策の資金拠出を受けているのは、AAR Japanと特定非営利活動法人「日本地雷を処理する会」(JMAS)の2団体だけで、AARはアフガニスタンでの支援活動に40万8,165米ドルの資金をいただいています。

2021年度(2021年4月1日-2022年3月31日)の日本政府の地雷対策による拠出は4,165万8,303米ドルです。拠出した国数は18カ国です。意外なところではアフリカ西部のベナン共和国で国連開発計画(UNDP)が実施した人道的地雷センターでの除去トレーニングにも209,865米ドルの拠出を行っています。最大の拠出額はカンボジアの地雷対策・被害者支援庁(Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority:CMAA)へのもので、2件合わせて2,000万米ドル。つまり、拠出額の約48%はカンボジアの特定の機関に集中していることが分かります。
日本がウクライナの地雷対策支援の一環で、カンボジアにウクライナの関係者を派遣しているのも、その関係の深さがあるためです。但し、ウクライナとカンボジアでは埋設されている対人地雷や武器弾薬も大きく異なっています。

日本政府に期待すること

国際社会が取り組む地雷対策への資金拠出額の増額も望まれますが、何と言っても、地雷被害者に対する支援が重要だと考えます。世界の地雷問題は一朝一夕ですぐに解決するものではなく、仮に地雷を地球上からすべて取り除いても、被害に遭った人々は残されます。被害者支援は急に規模を大きくするのは難しい実情があり、また規模を大きくし過ぎると継続がするのが困難になります。従って、長期的な視野に立ち、被害者一人ひとりを取り残さない支援が求められていると思います。

地雷のパネルに見入る来場者たち

対人地雷廃絶を訴えるイベントで写真パネルに見入る来場者=2019年・東京都内

紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局

AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は東京事務局で地雷問題やアフガニスタン事業を担当。

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