解説コーナー Commentary

現地NGO(CBO)支援とは何か:トルコにおけるシリア難民支援

2023年12月28日

話しあう3人の男女

CBOメンバーと議論するAARスタッフ=トルコ国内

AAR Japan[難民を助ける会]はトルコのシリア難民支援で、「コミュニティに基づいた団体(Community Based Organization:CBO)」と呼ばれる現地の小規模NGOの活動や運営を支援しています。「CBO支援」の目的と意義について解説します。

なぜ間接的な支援をするのか

「CBOを支援するより、AARが直接難民を支援したほうが、効果が高いのではないか」。
AARのCBO支援について話をするとよく聞かれます。確かに紛争、災害などの人道危機の発生直後は、食料や衣料品などの配付、衛生設備の建設などが最優先です。実際にAARは自ら現場に入り、必要とされている支援を把握して、世界各地で直接支援をしています。

トルコ国内でも、2011年のシリア人道危機以降、難民や難民を受け入れている地域(ホストコミュニティ)の住民への直接支援を10年以上続けてきました。一時はトルコ国内のスタッフが200人を超えたこともあります。しかし、長引く避難生活や、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナなどで次々と発生する人道危機に報道や関心が集中することで、シリア難民支援は、ニーズがあるにもかかわらず、国際社会からの支援が縮小しています。

そのような状況下で、難民のニーズに継続的に応えていくにはどうしたらいいのか。AARはひとつの方法として、これまでの支援の経験や知見を生かして、CBOの能力強化に取り組むことにしました。

CBOはコミュニティ住民によって運営されているため、国際支援が減る中でも、持続的に地域の難民を支援したり、ホストコミュニティと難民の結束を促したりする潜在能力を持っているためです。これは国際支援で近年重視されている「現地化(ローカライゼーション)」に合致するものです。

明るい会議室で会議をする10名ほどの人々

トルコのCBOとの会議

CBO支援の2つの側面

CBO支援はCBOが持続的に活動し、発展していくことを目指し、二つの側面からアプローチします。ひとつは、活動計画の策定、実施、進捗確認、報告書作成など「プログラム」面、もうひとつは団体の行動基準や経理、調達などの制度整備の「マネジメント」面です。これらが強化されると、活動がより明確で自律的になるとともに、組織基盤が安定し、国連や国際NGOなどの外部資金の調達もしやすくなります。AARの経理、人事などの各分野の専門スタッフが直接、CBOのスタッフに研修し、その後も都度電話相談を受けるなど、助言をしています。

CBOはトルコ人が設立する場合と、シリア人やアフガニスタン人など、トルコで暮らす難民が設立する場合があります。トルコ人中心のCBOが地域行政との連携がとりやすい、難民中心のCBOは難民のニーズに細かく応えやすいなど、それぞれ長所があります。CBO支援の先に、難民やホストコミュニティのニーズがあることを念頭に置き、より良い形でのCBO支援を模索し続けています。

宮地 佳那子MIYACHI Kanakoイスタンブール事務所(トルコ)

女性の健康と権利の推進に取り組むNGOでの勤務を経て、2019年AAR入職。バングラデシュのロヒンギャ難民支援に3年半従事した後、現職

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