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地雷対策に希望は見出せるのか:クロアチア・レバノンの事例から

2026年7月10日

対人地雷の使用や生産、貯蔵などを禁止する「対人地雷禁止条約(オタワ条約)」は2025年、バルト三国やポーランド、フィンランドがロシアの脅威を理由に離脱したことで大きな転機を迎えました。米国やドイツなど欧州諸国が援助予算を縮小していることも、地雷対策分野に大きな影響を及ぼしています。オタワ条約や地雷対策に希望は見出だせるのでしょうか。地雷対策の成功例といえるクロアチアと、紛争下で新たに条約加入を決断したレバノンの事例から考えます。

地雷の分布地図

2005年3月に作成された、地雷汚染の危険がある地域を示すクロアチアの地図。赤い線で示された地域が地雷・不発弾による汚染リスクが最も高いエリア、青い線は県境を示している

出典:Wayback Machine

諦めなければいつかなくなる

九州の約1.5倍の面積に約385万人が暮らすクロアチア。1991年のユーゴスラビアからの独立後、4年間にわたり深刻な内戦を経験しました。激戦地だった南部ダルマチア地方など、国土面積の約23%に当たる13,000㎢が地雷や不発弾によって汚染されました。

オタワ条約には、「自国の管轄又は管理の下にある地雷敷設地域におけるすべての対人地雷につき、(中略)遅くとも十年以内に、廃棄し又はその廃棄を確保することを約束する」(第5条第1項)という締約国の義務があります(10年で除去を完了させることが難しい場合には期間の延長も可能)。また、支援などが可能な立場にある締約国が地雷除去や関連活動への援助を提供する国際協力の仕組みも設けられています(第6条)。クロアチアの場合は、近年はEUやスイスからの支援を受けながらも、自国の予算を主な財源として除去活動を行ってきました[1]

クロアチアは内戦終結後の1997年、同条約に正式加盟し、この義務と支援の枠組みを活用しながら、30年以上にわたる地雷除去活動を経て、2026年2月末に「地雷がない状態(Mine-Free)」を宣言しました。推定12億ユーロの費用をかけて、約10万7,000個の地雷と40万7,000個の不発弾を除去したとされています。また、その間、41人の除去作業員が命を落としました。

クロアチアの事例から得られる教訓は、とにかく諦めないこと。コツコツと除去活動を続け、地雷が再び使用されなければ、数十年の月日がかかったとしても、地雷はいずれ無くなるのです。ある地雷対策専門家の言葉を思い出します。「地雷は細胞分裂しない。勝手に増えることはない」。

紛争影響下で条約に参加

一方、レバノンは約半世紀にわたり、内戦や紛争の影響を受け、地雷や不発弾の脅威にさらされてきました。特に2006年のイスラエル軍との大規模な衝突では、レバノン南部に推定400万個のクラスター弾が投下され、戦闘終結後も多くの不発弾が住民の生活を脅かしています。AAR Japan[難民を助ける会]も2007年にレバノンの大学と協力し、爆発物回避教育を実施しています。

同国では2024年末時点で15.79㎢が対人地雷により、4.67㎢がクラスター弾により汚染されています[2]。軍や国際NGOなどにより、継続して除去活動が進められてきましたが、近年のイスラエル軍と軍事組織ヒズボラの軍事衝突により、新たな汚染が懸念されています。

そのような状況の中で、レバノン政府は2026年5月1日、オタワ条約への加入書を国連に提出しました。11月にはオタワ条約の162番目の締約国となります。元々、レバノン政府は対人地雷の禁止に対しては前向きの姿勢を示していましたが、条約に加盟することで、地雷除去をより前に進め、自国民の安全確保につなげることができます。また、オタワ条約に参加していない国が多数ある中東地域において、紛争の影響を受け続けるレバノンが参加したことは、地雷による被害を減らし、安全な社会を築く意思を国際社会に示す上で大変重要な出来事です。

レバノンは今後、国内外の武装勢力が関わる複雑な安全保障環境の中で、地雷除去や再汚染の防止、被害に遭った人々への支援を進めていかなければなりません。そのためには、日本を含む国際社会による継続的な支援が欠かせません。

オタワ条約や地雷対策に希望は見いだせるのか? 答えは、イエスであると言えます。地雷問題は解決に長い年月がかかりますが、意志を持って取り組めば成し遂げられるし、同条約はその後押しになります。2カ国の事例はそのことを教えてくれます。

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[1] The Monitor.org:Funding for Mine Action
[2] The Monitor.org:Casualties & Victim Assistance

紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局

AAR から英国の地雷除去 NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。 現在は東京事務局で地雷対策やパキスタン事業を担当

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