活動レポート Report

紛争発生から半年 避難続ける人々:スーダン緊急支援開始

2023年10月6日

アフリカ北部スーダンで政府軍と準軍事組織の武力衝突が発生して半年。AAR Japan[難民を助ける会]は首都ハルツームに隣接するジャジーラ州で、避難生活を送る住民への支援を開始します。苦難に直面する人々の現状をAAR現地職員のアマエム・モハメッド・モハナ・ガビール、ハナン・ファイサル・エルタイェブ・ハッサンが報告します。

国内避難民 約400万人にも

「突然始まった戦闘によって、それまでの生活はすべて変わってしまいました。ここではひとつの教室に3家族が暮らしています。床に布を敷いて寝なければならず、男性は外で寝ています。蚊が多くて不快だし、病気の心配もあります」。ジャジーラ州メダニ市の小学校に避難している女性は、そう語ると泣き出してしまいました。

レンガの床の教室に、薄い布をひいて男性が横たわっています。周囲には荷物が置かれています。

日中、避難所となった小学校の教室で体を休ませる男性=スーダン・ジャジーラ州で

今年4月15日にハルツームなどで発生した政府軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の武力衝突によって、住む場所を失って周辺国に逃れた難民は約100万人、国内各地で避難生活を送る避難民は約400万人に上ります。ジャジーラ州には21万人が避難しており、多くが親せき宅や学校、モスクなどに身を寄せています。政情不安の影響で物価が高騰したのに加え、停電や水の供給不足が常態化して多くの人々が苦しんでいます。

この小学校にいるのは、ハルツームから避難してきた障がい者とその家族の計176人。話を聞かせてくれた女性の夫は障がいで歩くことができず、娘も免疫の病気があるといいます。小学校といっても日本のようにしっかりとした建物ではなく、床はでこぼこのレンガ、窓も板を打ち付けただけです。校庭には飲み水を入れておく「ジール」という粘土製のかめと、男性たちのベッド代わりのベンチが並んでいました。避難所で提供される食事は1日1回。多くはケスラというパンと豆のスープだけです。

校庭の土の上に座った女性が、鉄板の上で丸くて薄いパンを焼いています。左側の皿の上には、焼きあがったパンが重ねられています。

校庭で食事用のケスラ(パン)を焼く女性=同州で

校庭に茶色かめが並べられています

校庭に置かれた飲み水が入った粘土製のかめ(ジール)

避難所のリーダー役の女性は「私たちは椅子やベッド、マットレス、蚊帳、乳児用の粉ミルク、食料が今すぐ必要です。蚊の繁殖を防ぐために雑草を除去したいのですが、そのための道具もありません。障がい者や子どもが多いのに、治療代や薬を買うおカネにも困っています」と窮状を訴えました。

少年の描いた絵 戦闘員と戦闘車両が…

小学校の校庭で、10歳ぐらいの少年が、自分の描いた絵を持ってカメラの方を向いています

自分で描いた絵を見せてくれた自閉症の男の子。兵士が人々を攻撃する様子が描かれている=ジャジーラ州で

ここには17歳以下の子どもたちが84人もいます。自閉症の子が2人おり、そのうちの1人の男の子は自分が描いた絵を見せてくれました。描かれていたのはスーダン政府軍と準軍事組織の戦闘員や車両、そして殺害された人々でした。母親は「この子は絵を描くのが好きで、最近見聞きしたことを表現したのでしょう」と説明しました。今回の危機は子どもたちの心にも傷を残しているようです。

AARハルツーム事務所の現地職員はこの間、自らの安全を確保しつつ、支援のための調査を続けてきました。ようやく準備が整い、現在は物資の調達を急いでいます。ソルガム(モロコシの一種)、塩、調理油、レンズ豆などの食料のほか、生理・衛生用品や蚊帳などの配付を近く開始する予定です。

スーダン紛争では、現地在留邦人の退去が大きなニュースとして報じられたことをご記憶の方も多いと思います。AARのスーダン紛争緊急支援へのご理解・ご協力をよろしく願い申し上げます。


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